術前未確診肺腫瘤に対する術中迅速細胞診の評価

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術前未確診肺腫瘤に対する術中迅速細胞診の評価
◎上垣外 明子 1)、丸山 聡 1)、柴草 あかね 1)、中村 梨沙 1)、櫻井 博文 1)
公益財団法人 長野市保健医療公社長野市民病院 1)
【はじめに】画像診断の進歩により小型肺腫瘤などの発見
久組織診断とを比較した結果、感度 89.7%・特異度
率が上昇しているが、術前確定診断が困難で未確診のまま
100%・正診率 90.4%であった。
手術となる症例も増えている。また画像上、肺癌と炎症性
陽性・疑陽性例は組織標本で全て悪性腫瘍の診断であっ
病変との鑑別に苦慮する症例もある。当院では術前未確診
たが、陰性例は 29 例中 17 例(58.6%)は悪性腫瘍であり、
肺腫瘤に対して、術中迅速組織診断や腫瘍穿刺吸引細胞診
12 例(41.4%)が良性病変であった。悪性腫瘍の内訳は、
(FNAC)を行い確定診断を行っている。今回我々は、未
原発性肺癌 13 例、転移性肺癌 3 例、MALT 1 例であった。
確診肺腫瘤に対し術中 FNAC と組織捺印細胞診(捺印細胞
良性病変は全て炎症・肉芽腫性病変であった。そのうち細
診)を行った症例の細胞診の成績を検討したので報告する。
菌検査で抗酸菌が確認された症例が 2 例あった。
【対象】2005 年 2 月から 2015 年 5 月までに、術中
【考察】今後も術前未確診肺腫瘤に対する術中の確定診断
FNAC および捺印細胞診を行った計 177 例を対象とした。
は増加すると考えられる。これらの中には、画像上肺癌を
【方法】FNAC は外科医によって採取された 2 回の穿刺吸
否定できない抗酸菌などによる炎症性病変も含まれると考
引材料を、手術室で細胞検査士が処理・固定し、検査室に
えられるため、確定診断の際には感染の危険性を考慮し診
て染色・鏡検した。また、捺印細胞診は術中迅速組織提出
断する必要がある。また、今回の検討では偽陰性例が多数
の際、病理医が肉眼的に炎症性を疑った肺病変に対して行
存在することが明らかとなった。原因として、検体採取時
った。いずれも迅速パパニコロウ染色を基本として行い、
の要因、固定・染色に伴う細胞剥離の可能性、迅速標本で
必要に応じ迅速ギムザ染色を併用した。
の判定の難しさや能力不足が考えられる。今後更に、安全
【結果】FNAC ・捺印細胞診の判定は、陽性 136 例、疑陽
かつ正確な判定ができるような対策を講じる必要性がある
性 12 例、陰性 29 例であった。これらの結果と固定後の永
と考える。 連絡先 026-295-1199(内線 2205)