0.4

酒 々 井町伊篠 白幡遺跡 出土の土 製 品 につ いて
宮
城
孝
之
小破 片 で全形 を知 り得 る もの はな い。 3は 太 い半
は じめ に
以前、千葉 県印格郡酒 々井町伊篠 白幡遺跡 の報
裁竹管状 工 具 に よって平行 沈線 が施 され る。厚 み
この遺跡
は一定 しな い。高 さは6.8cln。 4は 1/3分 割 に近 い
か ら出土 した遺物 の中 に特異 な形態 の土製 品 が 11
半裁竹管状 工 具 に よる浅 い沈線 である。明瞭 な二
「特殊土製品」として報告 した。
個体 出土 してお り、
本 の沈線 まで にはいた っていない。高 さは4.6cm。
報告書刊行以後折 りに触 れ類例 を探 してみたが管
5は 隆帯 に斜 めの刻 目が施 され て い る。横走 す る
告書作成 に携 わ つた ことが あ る (註
1)。
見 にふれ る もの は少 な く、 この土製 品の時期・ 分
沈線 は太 い。施 文 工 具 は棒状 工 具 であ る。高 さは
布等 は よ くわか らな い ままであ る。数少 な い出土
4.2cm。
例 を紹介 し、 その特徴 について考 えてみた い。
線 が施 されて い る。横走 す る沈線 は竹 管状 工具 に
6は 長軸端 が隆帯 でな く、浅 い垂下 す る沈
よる。高 さは5.9cm。 7は 棒状 工 具 に よる沈線 であ
る。 8は 長軸端 を隆帯状 につ まみ上 げて い る。沈
伊篠 自幡遺跡 出上 の土 製品
第 1図 が伊篠 自幡遺跡 か ら出土 した土製 品 であ
線 は先端 のやや尖 った棒状 工具 で施文 して い る。
る。全部 で 11個 体 分 あるが、完形品 は 1点 もな く、
9は やや遺存 が よい。 LR単 節縄文 が施 され て い
1・ 2が 最 も遺存 の よい ものであ る。 図の ように
るようだが、 はっ き りしな い。沈線 は半載竹 管状
置 い た場合 が最 も安定 してお り、 2個 体 とも図の
工 具 によって施 され てい る。 10は 長軸端 の破 片 と
下 の面 が平 らにな ってい る。製作 な い し乾燥 が図
思 われ るが、隆帯 な どは施 され ていな い。横走 す
の ような状態 で行 われたため と思われ るが、 これ
る沈線 は半載竹管状 工 具 に よる。 nは 竹管状 工 具
が用途 を直接 反映 した ものか否 かはわか らな い。
2個 体 とも胎土・ 焼成 。色調が極 めて よ く似通 つ
によって太 い横走沈線 が施 され る。
以上が伊篠 白幡遺跡 か ら出土 した土製 品 である。
てお り、出土地点 もほぼ同一地点 といって よい。
その特徴 をみ る と、形態 は楕 円形 の筒状 を呈 す る。
2個 一 対 であ る ことも考 え られ る。1は 約 2分 の
外面 に施 され る文 様 は横走 す る沈線 を主体 として
1が 残存 して い る。全体 の形 態 は、楕 円状 の筒形
お り、装飾性 の高 い文様 で はな く、単純 な もので
を呈 し、楕 円の長軸端 に刻 目を伴 う隆帯 が貼 り付
あ る。文様構成 に強 い規制 が はた らい て い るのか
け られ て い る。長軸端 以外 の外面 には横走 す る沈
もしれな い。施文 工 具 は半載竹 管状 工 具 または棒
線 が ほぼ等間隔 に施 されてい る。沈線 の施 文工具
状 工具 を使用 してい る。長軸両端 に垂 下 す る隆帯
は太 い半裁竹管状 の工具 を使用 し、同時 に二 本 の
を伴 うものが多 く、沈線 の もの もある。時期 は、
沈線が施文 されてい る。残存 す る部分の高 さは10.6
報文 中 では縄文時代後期 として い る。胎± 0施 文
あ る。胎土 は少量 の砂粒 を混入 す る。焼成 は
工 具・ 焼成 の状態 お よび伊篠 白幡遺跡 か ら出土 し
悪 くはな いが暗茶褐色 を呈 す る。 2は 1に 比 べ遺
た縄文土器 の主体 が堀之 内式上器 に限 られ る こ と
存 は よ くな いが 、長軸両端 の破 片 が あ りおお よそ
か ら、 出上 した土製品 を堀 之内式期 と考 えて もよ
clllで
の形 態 を推定 し得 る。長軸 の長 さは約 1lcm、 短軸
い と思われ る。 また、文様 や その施文 方法 な どの
約 6.7cmを 計 る。1と 同様 に長軸端 に刻 目を伴 う隆
点 か らも、堀之 内式期が妥 当でないか と思 われ る。
帯 が施 され、外面 には横走 す る沈線 が ほぼ等間隔
に施 され てお り、施 文 工 具 も同様 の太 い半裁竹管
状 の工具 を使 用 して い る。1・ 2の 異 な る点 は 2
他遺跡 出土 の土 製品
第 2図 12∼ 14が 伊篠 白幡遺跡 出土例 に類似 した
には太 い沈線 の間 に細 い半裁竹 管状 工 具 に よる二
土製品で ある。 12は 千葉 県佐倉 市吉見台遺跡例 で
本 の沈線 が施 され てい る点 であ る。 3∼ 11は みな
あ る (註 2)。 報文 には「土 管状 の上製品 であ る。
(840)
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第 1図
伊篠 白幡遺跡 出土 の土製 品 (1/3)
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第 2図 その他 遺 跡 出 上 の 土製 品 (1/3)
(12,千 葉 県 吉 見 台遺 跡 13,福 島 県 南 澤 遺 跡 14,福 島 県 越 巻 遺 跡
)
沈線 が 12∼ 14本 め ぐり、 一 部 では沈線 に直交 す る
ず最初 に、形態 は楕 円形 の筒形 を呈 す る ものが多
かた ちでナデ消 しが み られ る。」とあ る。報文 には
く、 円筒形 の場合 もあ る らしい。厚 み は個体 に よ
完形品 なのか欠損品 なのか は記 され て い な い。沈
って若千異 な る。大 きさは今 の ところ伊篠 白幡遺
線 に直交 す るナデ消 しが あ り、伊篠 白幡遺跡 出土
例 の 6に 類似 して い る と思われ る。実測図 で は円
跡 の 2例 か ら高 さ10.6cm、 長軸長約 1lcln、 短軸長
上下左右 とい つた ものはな い
6 7clnを 上 限 とす る。
筒形 を呈 して い るが、 あ るい は楕 円状 を呈 して い
が製作段 階 また は乾燥 の段 階 で第 1図 1・ 2の よ
る可能性 もあ る。胎土 には砂粒 を含 み、色調 は灰
うに置 かれた もの と思 われ る。文様 は外面 のみ に
褐色 を呈 す る。沈線 の施 文 工 具 は棒状 工 具 と思 わ
施 され、 もつぱ ら横走 す る沈線 に限 られ、 その他
れ る。 12が 出土 した地点 は堀之 内式∼加 曽利 B式
の文 様 は施 され な い。長軸 の両端 に垂下 す る隆帯
土器 を主体 としてお り、 12も この時期 に属 す る と
な い しは沈線が施 され、隆帯上 には刻 みや刺突が
考 え られ る。 13・ 14は 、福 島県双葉郡大熊 町内 の
施 され る。胎土 は伊篠 白幡遺跡例 では、特 に よい
2遺 跡 か ら出土 して い る (註 3)。 い わ き市在住の
わ けではな く同時期の上器 の胎土 とかわ りはない。
馬 目順 一氏 か ら教 えて い ただ い た出土例 であ る。
時期 は縄文時代後期の堀之 内式期 か ら加 曽利 B式
13は 大熊町南澤遺跡 出土例 であ る。 分類 で は綱取
期 に属 す る と思 われ る。
H式 に含 まれ てい る。説明が な い た め、胎土・ 焼
縄文時代後期 にな る と各地 で 多様 な土製品が現
成 等 は不明 である。 実測 図 お よび写真 か ら円筒形
れ る。本稿 で扱 った土製品 もその一 つで ある と思
または楕 円形 の筒形 を呈 す る と思 われ、 5本 の横
われ るが、 その形態、文様、分布、時期等 は類例
走 す るやや太 めの沈線 が施 され てい る。隆帯 な ど
の少 な さか ら実体 を把握 で きる段 階 には まだない。
はな い ものの、 それ に相 当す る円形 の刺突文が垂
類例 の増加 を まって、再度 その特徴 について検討
下 して い る。表面 には砂粒 が 目立 つ。 14は 大熊町
してみた い。 また、 この上 製品 の名称 について も
越巻遺跡 出土例 であ る。 や は り欠損 品 であ るが、
類例 の増加 を まってその特徴 か ら付 され るべ きで
13に よ く似 た文様構成 であ る。横走 す る沈線 が施
はな いか と思われ る。研究者諸氏 の御教示 をお願
され、 円形 の刺突文 が垂下 す る。実測 図 か らは刺
い した い。
突文 の部分 が隆帯状 にな っている。 円筒形 に復元
実測 され て い るが、楕 円形の筒形 を呈 す る可能性
註
もある。分類 では綱取 H式 に含 まれ て い る。 13・
1
「酒 々井町伊篠 白幡遺跡』
働 千葉 県文化財 セ ンター 1986年
14と も、文様・ 形態 の点 で よ く似通 ってい る。
2
まとめ
近森正他
II』
以上 の諸例 か らその特徴 を抽 出 してみた い。 ま
(842)
宮城孝之他
-10-
『佐倉市吉見台遺跡発掘 調査概 要
佐倉市遺跡調査会 1983年
3『 大熊町史』第 2巻
1984年