安田美予子さん

プロジェクト
2015.1.28 渚の風 3号 23
大阪大学のアカペラサークル「pipipamba」。土曜日の昼下がり、三恵園で熱唱した。三恵園は、「地域になくてはならない施設」を旗印に、各方面の人々を招聘している
(1 月 24 日、大阪府池田市)
連載
組織と人づくり②第2章
Profile
関西学院大学 人間福祉学部教授
安田美予子さん
やすだみよこ 大阪府出身。これまで、病院のソー
シャルワーカーによる退院援助、ソーシャルワーク
における質的研究、障害者の自立生活支援などの
テーマで研究してきた。大学では、社会福祉学原論、
組織開発とはなにか
社会福祉質的調査法、ソーシャルワーク演習、障害
者領域のソーシャルワーク実習を、大学院では質的
調査法を教えている。
その1 働きかけの対象は?
『渚の風』第 2 号で、障害者支援施設・
三恵園を舞台に、三恵園職員との協働に
の企業活動に取り入れられ、経営学にも
影響を与えてきました。
いろな齟齬やズレや違和感が生じやす
今回、明確にしたいことは、組織開発
い。それら人間関係にかかわる諸問題が、
が働きかけ、変化を起こそうとしている
働きかけの対象です。
対象は何か、ということです。
よる、「三恵園の未来に向けての組織と
日本には 1970 年代に紹介されまし
人づくりプロジェクト」が稼働したこと
た。1980 年代には関心が失われました
をお伝えしました。このプロジェクトは、
が、OD ブームの再来といわれるほど、
け変化を起こそうとする対象は、個人や
近年関心を集めています。
家族や集団の生活問題や生活上の困りご
「次代のリーダーが育っていない」
とであったり、人々が地域で生活してい
「職場の風通しが悪い」
「どんな三恵園にしたいのか/ありたい
社会福祉やソーシャルワークが働きか
のか」「どのような三恵園職員になりた
日本では、組織行動論や組織論の研究
いのか/ありたいのか」といったことを
者によって主に研究が、企業や自治体や
くうえでの地域の問題であったりしま
全職員で考え、組織と働く人双方に変化
NPO 法人をフィールドに企業・自治体
す。つまり「生活」がポイントです。
を起こすことを目指しています。
の関係部門やコンサルタント会社が実践
その方法として用いるのが「組織開発」
を行っています。企業のなかには、「組
という手法です。組織開発という言葉を
織開発」を推進する専門部署を立ち上げ
はじめて聞いた、という読者がほとんど
るところもあるようです。
「一人ひとりは頑張っているが、チー
ムや職場がばらばらで、まとまりがない」
こうした言葉が組織で多く囁かれるよ
うになったら、それは組織プロセスの問
題が組織で発生している可能性を示唆し
これに対し組織開発は、「組織のプロ
ています。
セス」が働きかけの対象です。
では組織のプロセスとは何でしょう
か。それは、組織の人々の間で起こって
でしょう。そして組織開発は、社会福祉
では組織開発とは、一体何なのでしょ
実践現場や社会福祉研究の世界でほぼ知
うか? 組織開発の代表的な研究者で実
られていない、といってよいでしょう。
践者でもある南山大学の中村和彦氏によ
具体的には、コミュニケーション、メ
今後数回にわたって、組織開発について、
れば、組織開発は「組織の中の人間関係
ンバーの役割と機能、問題解決と意思決
紹介していきます。
やコミュニケーションや組織の文化・風
定、グループの規範、リーダーシップ、
土など組織のプロセスを取り扱い、組織
グループ間の協働と競争、組織の文化や
は、通称 OD と呼ばれています。この
の人々がそれに気づき、働きかけ、組織
風土などです。
ことから推測されるように、その主な起
の効果性や健全性を高めることを目的に
組織では職位や価値観や性別や年齢な
源はアメリカです。1950 年代終盤頃か
実践する理論と手法の集合体」を意味し
ど様々な点で違いのある人がかかわり影
ら心理学をベースに形成され、アメリカ
ます。
響を与えながら仕事をしますので、いろ
組織開発(Organizational Development)
いることであり、“how”「どのような」
にかかわることを指します。
就労支援事業所パン工房に新しい風が吹き込んだ
顧問先の社会福祉法人に就労支援事業
所パン工房がある。焼きたてパンなどを
風が吹き込んだ。
職人はパン作りのある工程を見て「な
直売し、地域の方々には好評を得ている。
ぜ(障害者の)彼ら彼女らは作業に加わ
参考文献
中村 和彦(2012)「ゲシュタル
ト組織開発とは何か」『人間関係研
究 』11, p.96-115。
中村和彦 (2013)「組織開発の特
長とその必要性」『経営に資する強
い組織を作る-日本流“組織開発”
の推進のため、私たちは何をなすべ
きか?-』公益財団法人 関西生産
性本部 p.1-27。
Text by Toshiaki TAKATORI
設長も驚いた。
「これが本来の支援の姿だ
て、この値段なの?」
と」
。
と驚いた。施設長の
以前から支援にあたっていた法人職員
新しい夢は新店舗を
働いているのは、知的障害等のハンディー
らないのか」と疑問を呈した。
「私はパン
は決して怠けていたわけではない。反対
作って、もっと地域
故に地域で就労することの困難な方々で、
作りのノウハウを伝承することが役割だ。
に作業する障害者に不安を与えないよう
の方を呼び込みたい。
法人職員がその支援にあたっている。
障害があろうとなかろうと出来る人にはそ
にとサポートを厚くしていた。だが、それ
障害者に働く喜びを
パン製造の技能は法人職員がノウハウ
のノウハウを身につけてもらう。彼ら彼女
が結果的に携わる作業を少なくしていた
さらに感じてもらい
を身につけ障害者のサポートにあたって
らにも頑張ってもらう」と言って、パンの
のだ。
たい。
「これ以上は無理だろう」と限界を
いたが、その事業所にパン職人を雇うこ
成形など積極的に作業させた。そうした
パン職人が入ったことによって、パン
とになった。ベテランの職人だが、福祉
ところ見事なパンを作りはじめた。笑顔
の種類が増え、新作パンなどが店頭に並
の職場は初めてだ。施設長としては不安
が溢れ、イキイキとし出した。新しいこと
ぶようになり、さらに好評を博している。
もあったらしいが、実はその人が新しい
ができる楽しさを感じたのだ。これには施
私も買って食べたが「こんなにおいしく
鷹取敏昭さん
勝手に決めつけるのではなく、挑戦し続
けたいと。
人事マネジメント研究所 進創アシスト代表 鷹取敏昭