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現 場
レポート
珪藻土の壁で差別化を図る賃貸住宅の新たな戦略
国内人口が減少に転じ、少子高齢化が大きな課題とな
る中で、首都圏における賃貸物件市場も大きく変わりつ
つある。賃料は3年連続上昇を続ける一方で、成約数は
2014年に中古物件を中心に大きく減少している。成約の
45%を占める東京23区の回復の鈍さと新築マンションの
賃料上昇が足枷となり、2015年も前年比0.3%の微増とな
る予定だ。
そうした中、珪藻土建材の内外装仕上げにより他の賃
貸物件との差別化を図り、入居者を確保するという取り
組みが注目されている。湿式仕上げの賃貸住宅ならでは
▲珪藻土の外装は白を基調とした南欧風をイメージ
の工夫と戦略をレポートする。
(編集部)
地方都市が抱える賃貸物件の問題
千葉県市原市五井を中心に複数の賃貸物件を抱える有限
会社中商の中島淳一さんは、珪藻土による内外装仕上げで
他の賃貸物件との差別化を図ることにより、居住者の満足
度と入居者募集へのアプローチを高めている。こうした背
景としては地方都市ならではの問題があるという。
都心から電車で約1時間の千葉県市原市は、千葉県内だ
けでなく都心で働くサラリーマンのベッドタウンとして開
発されている。田圃や畑が広がっていた同地域も農家の後
継者不足により耕作放棄地が増え、市街化調整区域の枠組
みが見直されたことにより宅地開発が進んできた。しかし
近年では、施工技術者の不足による建設コストの高騰によ
り、より都心に近い賃貸マンションやアパートの物件に比
べて、土地価格の下落を加味しても市原市内の割安感が出
せない状況にあるという。また、入居希望者に比べて飽和
しつつある賃貸市場も状況に拍車をかける一因になってい
る。こうした競争の中では賃貸価格を安易に上げることが
できない。そこで、中島さんは付加価値の高い戸建賃貸住
宅により差別化を図り、こうした状況を打開したいと内装
に珪藻土の塗り壁を採用することに踏み切った。
今回の物件で施工を担当したのは日本住宅㈱(本社:岩
手県盛岡市津志田中央1-3-28、丸山稔社長)千葉支店。同社
は地域に新しい居住価値と賃貸住宅需要を作り、新しい経
済の流れを賃貸オーナーと共につくる『ビズハウジング』を
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No.475 2016 年 3 月号
▲玄関には鍵や小物が掛けられるスペースを確保
提唱し、賃貸住宅を企画・建設し、商品化して市場導入の
手伝いをするトータルサポート事業を展開している。今回
の物件では、オーナーである中島さんのコンセプトである
内外装を珪藻土仕上げにすることを実現しながら、同社が
持つ2×4工法と断熱性・気密性に優れた設計を融合させて
いる。また、今回の物件において使用された珪藻土は日本
ダイヤコム工業㈱の製品だ。