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左官施工
特別企画:現場に見る左官仕上げの追求
レポート
茨城県・真壁町の
川嶋家土蔵復元工事
[ 後編 ]
左官𠮷田 𠮷田一正
東日本大震災では各地で数多くの貴重な建物が半壊また
は全壊してしまいました。多くの建物が手つかずのまま放
置される中、伝統的町並みの保存に向け動き出した地域が
あります。
今回は昨年の本誌4月号にレポートした茨城県桜川市真
壁町の川嶋家土蔵の復元工事の続報を左官d田のd田一正
さんよりレポートいただきました。 (編集部)
真壁町の土蔵
東日本大震災によって甚大な被害を被った茨城県桜川市
真壁町の川嶋家土蔵は、昨年九月に漆喰塗り、十月には下
見板の取り付けを終え、無事お引き渡しすることができま
した。震災から三年を数え、新築当初の姿を取り戻した土
蔵に、これで先祖に顔向けできるとおっしゃられたご主人
写真 1 完成した大阪戸
のお言葉は、職人にとって何よりのご褒美と、ありがたく
頂戴致しました。私自身、真壁町の歴史ある景観に、たと
え一棟でも寄与できたことは、震災によって壊れてしまい
そうであった時間や文化を何とか紡ぐことができたという
安堵感の中にあります。しかし、今も復興の進まない現状
を鑑みれば、個人的な感傷など少しも意味を成し得ません。
この事業が、震災後の混沌と悪い興奮の中で急いで進めな
くてはならなかったものであること、また、伝統的な土蔵
造りという途切れかかった技術を必要とされることや、そ
れらに対する不問や無知が、工程や工法に関する役所の方
針を整備できず、残念な結果を生み出してしまっているの
も事実です。私たち左官職は、技術のさらなる研鑚に努め、
知識や経験をより豊かにし、正しい啓蒙を続けなければな
りません。レポートの前篇でも申し上げましたように、世
代を超えて紡がれてきたものは、何より紡がれてきこと自
体美しく、尊いのです。それをひとつの怠慢が寸断するこ
とは、決して許されることではありません。私は、心から
そう思います。
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No.462 2015 年 2 月号
写真 2 雨押えの漆喰ノロ収め