応用音響学 後半第4回

応用音響学 後半第4回
http://www.hapis.k.utokyo.ac.jp/public/makino/lecture/
2015/6/30
応用音響学
1
3) 空間中に音響的な壁を作りたい.
どのように考えて,どんな物理量を制御
すべきか,自由に記述せよ
• 音響インピーダンス=ρcが異なる境界で反射する
→ρかcを変化させれば良い
–
–
–
–
2015/6/30
温度を変化させる
水滴の壁を作る
スピーカアレイで音響的な壁があるのと同じ場を作る
(異なる密度の気体で壁を作る)
応用音響学
2
温度を上げると…
• 音速cは c=331.5 + 0.61t
(Wikipediaより.ただし,摂氏0度付近での近似曲線)
なので,温度を上げると比例で上がる
• 密度ρは 温度を上げると下がる
→温度を上げると音響インピーダンスは
上がる?下がる?
2015/6/30
応用音響学
3
• 𝑐=
𝜅𝑝
𝜌
(𝜅は比熱比, 𝑝は圧力)
• 𝜌𝑐= 𝜅𝑝𝜌 なので,圧力一定の条件では 𝜌に比例
• 温度が上がると,音響インピーダンスは下がる
https://ja.wikipedia.org/wiki/音速#.E7.89.A9.E6.80.A7.E5.80.A4
2015/6/30
応用音響学
4
音響インピーダンス
430
425
y = -0.7131x + 427.74
420
415
410
405
400
0
10
• 反射係数は 𝑅 =
20
𝑍1 −𝑍2
𝑍2 +𝑍2
30
40
温度(℃)
より,
• 仮に上記線形近似が100度まで適用されたとすると,
音響インピーダンスは356
• このとき𝑅 = 0.07 :振幅比で7%反射する
• 200度のとき音響インピーダンス285
反射係数𝑅 = 0.18 :振幅比で18%反射する
2015/6/30
応用音響学
5
異なる気体の壁を作ると…
• He: 密度ρ 0.1785 kg/m3
音速c 970 m/s (0℃ 1atm) なので,
ρc = 172.7
• 空気の音響インピーダンスは428なので
𝑍1 −𝑍2
𝑅=
より 𝑅 = 0.424
𝑍2 +𝑍2
振幅で42%くらい反射する
2015/6/30
応用音響学
6
前回までのおさらい
球面波の波動方程式は,
𝜕 2 (𝑟𝜙)
1 𝜕 2 (𝑟𝜙)
= 2
2
𝜕𝑟
𝑐 𝜕𝑡 2
この解は,
1 −j𝑘𝑟
1 j𝑘𝑟
𝛷=𝐴 e
+𝐵 e
𝑟
𝑟
これは例のごとく,第1項が発散する波,
第2項が収束する波を表す.
2015/6/30
応用音響学
7
速度ポテンシャルと音圧,粒子速度の関係は,
𝑃=
𝜕𝜙
𝜌
𝜕𝑡
,𝑣=
𝜕𝜙
−
𝜕𝑟
だったので,
1 −j𝑘𝑟
𝐴 e
𝑟
j𝜔𝑡
𝜙 = 2𝛷e
, 𝛷=
j𝜔𝜌 −j𝑘𝑟
𝑃=𝐴
e
𝑟
1 + j𝑘𝑟 −j𝑘𝑟
𝑉=𝐴
e
2
𝑟
2015/6/30
応用音響学
から
8
呼吸音源の半径と
放射インピーダンスの実部虚部の関係
𝑘 2 𝑎2
𝑟𝑎 /𝜌𝑐 =
1 + 𝑘 2 𝑎2
𝑘𝑎
𝑥𝑎 /𝜌𝑐 =
1 + 𝑘 2 𝑎2
三井田惇郎「音響工学」
(昭晃堂) p.53より
2𝜋𝑎
𝑘𝑎 =
なので,呼吸音源の円周と波長との比率が横軸
𝜆
(円板の円周を波長で規格化した大きさ)
𝜌𝑐で割っているので,
この値が1に近づくほど,固有音響インピーダンスに一致する
2015/6/30
応用音響学
9
点音源
𝑈 −j𝑘𝑟
𝛷=
e
4𝜋𝑟
𝑈 −j𝑘𝑟
1 + j𝑘𝑟 −j𝑘𝑟
𝑃 = j𝜔𝜌
e
, 𝑉=
𝑈e
2
4𝜋𝑟
4𝜋𝑟
これは,音の強さを𝑈として一定に保ったまま半
径を小さくした極限
2015/6/30
応用音響学
10
手始めに正負二重音源
受音点(𝑟, 𝜃)
𝑟1
𝜃
𝑈
𝑟
2𝑑
−𝑈
𝑟2
𝑈 −j𝑘𝑟
𝑈 −j𝑘𝑟
1
2
𝑃 = j𝜔𝜌
e
− j𝜔𝜌
e
4𝜋𝑟1
4𝜋𝑟2
距離2𝑑離れて,逆相で駆動される2つの点音源
2015/6/30
応用音響学
11
点音源だった時の式は
𝑈 −j𝑘𝑟
𝑃 = j𝜔𝜌
e
4𝜋𝑟
正負二重音源になると
𝑑 cos 𝜃 −j𝑘𝑟
𝑃 = j𝜔𝜌
𝑈e
2
4𝜋𝑟
𝑑 cos 𝜃
なので,体積速度が
倍されたようになっている.
𝑟
1
1
から 2へと変わっている
𝑟
𝑟
音圧の減り方の距離依存性が
→ 急激に減衰
これは2つの波が干渉し,互いに打ち消しあうため
また,音圧の減り方が角度𝜃に依存
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応用音響学
12
正負二重音源の指向性
𝑑 cos 𝜃 −j𝑘𝑟
𝑃 = j𝜔𝜌
𝑈e
2
4𝜋𝑟
𝜃
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応用音響学
13
円板の放射
スピーカのような円板振動体が,
どのような放射特性を持つのかを導出したい
考え方
円板上の微小エリア𝑑𝑠に,点音源がある
と仮定する
それが円板上で密に並んでいると考える
離れた点における音圧,粒子速度を,
多数の点音源の足し合わせとして算出
ただ,振動する円板が,宙に浮いているとすると,
反対側に逆相の点音源を仮定しなければならない.ので…
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応用音響学
14
バッフル板
背面からの逆位相の音波の回りこみを防ぐために,
無限大の剛体壁に振動板を取り付ける
→この剛体壁のことをバッフル板と呼ぶ
この場合,点音源の速度ポテンシャルは2倍
(光源の背後に鏡を置いたのと同じように,
背面に放射される分が表側にくるので)
2015/6/30
応用音響学
15
点音源の音圧は𝑃 =
𝑈 −j𝑘𝑟
j𝜔𝜌
e
4𝜋𝑟
微小面積d𝑠による体積速度
(=音源の強さ)は,𝑈 = 𝑉0 d𝑠 なので,
三井田惇郎「音響工学」
(昭晃堂) p.57より
微小面積d𝑠が距離𝑟1 離れた受音点に発生させる音圧は
d𝑃 =
𝑉0 d𝑠 −j𝑘𝑟
1
j𝜔𝜌
e
2𝜋𝑟1
これを全面積で積分すれば,円板全体が𝑟1 離れた受音点に
発生させる音圧が算出できる.
d𝑃 =
𝑉0 d𝑠 −j𝑘𝑟
1
j𝜔𝜌
e
2𝜋𝑟1
=
𝑉0
j𝜔𝜌
e−j𝑘𝑟1 𝑧d𝑧d𝜃
2𝜋𝑟1
𝑉0
𝑃 = j𝜔𝜌
2𝜋
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2𝜋
0
𝑎 −j𝑘𝑟1
e
0
応用音響学
𝑟1
なので,
𝑧d𝑧d𝜃
16
計算しやすい特殊なケース
正面軸上のとき
𝛼 = 0 なので,𝑟12 = 𝑟 2 + 𝑧 2
両辺微分して𝑟1 d𝑟1 = 𝑧d𝑧 これを代入すると
𝑉0
𝑃 = j𝜔𝜌
2𝜋
𝑟 2 +𝑎2
2𝜋
d𝜃
0
= −𝜌𝑐𝑉0 (e
𝑎
−j𝑘 𝑟 2 +𝑎2
e−j𝑘𝑟1 d𝑟1
− e−j𝑘𝑟 )
複素数の減算が
e−j𝑥 − e−j𝑦 = cos 𝑥 − cos 𝑦 − j sin 𝑥 − sin 𝑦
𝑥 − 𝑦 −j𝑥+𝑦
= −j2 sin
e 2
2
であることから, 𝑥 = 𝑘 𝑟 2 + 𝑎2 , 𝑦 = 𝑘𝑟として,
𝑘
𝑘
−j 2 𝑟 2 +𝑎2 +𝑟
2
2
𝑃 = j2𝜌𝑐𝑉0 sin ( 𝑟 + 𝑎 − 𝑟) e
2
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応用音響学
17
𝑘
𝑘
−j
𝑃 = j2𝜌𝑐𝑉0 sin ( 𝑟 2 + 𝑎2 − 𝑟) e 2
2
𝑘
sin ( 𝑟 2 + 𝑎2 − 𝑟)の項に着目すると,
𝑟 2 +𝑎2 +𝑟
2
正面の軸上で値が周期的に0になることを示している
その条件は
𝑘
𝑟 2 + 𝑎2 − 𝑟 = 𝑛𝜋
2
𝑘
1 2𝜋
𝜋
→ =
= なので, 𝑟 2 + 𝑎2 − 𝑟 = 𝑛𝜆のとき
2
2 𝜆
𝜆
つまり,中心軸上で,円板中心からの距離𝑟と
円周上の点からの距離 𝑟 2 + 𝑎2 が波長の整数倍になるときに
音圧が0になる
また,どれだけ円板に近づいても,音圧𝑃の絶対値は,
2𝜌𝑐𝑉0 以上にはならない
2015/6/30
応用音響学
18
遠方 𝑟 ≫ 𝑎 のとき
𝑘
sin (
2
𝑟2
+ 𝑎2
− 𝑟)の
𝑟2
+ 𝑎2
=𝑟 1+
1
2
𝑎 2
𝑟2
𝑘𝑎2
~𝑟 1
2
𝑘
𝑘𝑎
sin ( 𝑟 2 + 𝑎2 − 𝑟) ~ sin
~
2
4𝑟
4𝑟
𝑎2
+ 2
2𝑟
より
よって,
𝑘
𝑘
−j
𝑃 = j2𝜌𝑐𝑉0 sin ( 𝑟 2 + 𝑎2 − 𝑟) e 2
2
𝑘𝑎2 −j𝑘2
= j2𝜌𝑐𝑉0
e
4𝑟
𝑎2
2𝑟+ 2
2𝑟
𝑟 2 +𝑎2 +𝑟
𝑎2
= jω𝜌 𝑉0 e−j𝑘𝑟
2𝑟
振動円板から遠くはなれたところでは,音圧は周波数に比例
2015/6/30
応用音響学
19
観測点が軸上にないとき
𝑟1 =
(𝑟 sin 𝛼 − 𝑧 sin 𝜃)2 +(𝑟 cos 𝛼)2 +(𝑧 cos 𝜃)2
= 𝑟 2 + 𝑧 2 − 2𝑟𝑧 sin 𝛼 sin 𝜃
= 𝑟 1+
𝑧
𝑟
𝑧 2
𝑟
𝑧
− 2 𝑟 sin 𝛼 sin 𝜃
≪ 1 のとき,つまり,観測地点が十分遠方のとき
𝑟1 = 𝑟 +
𝑧2
2𝑟
− 𝑧 sin 𝛼 sin 𝜃 と近似できる.
もとの式は
𝑉0
𝑃 = j𝜔𝜌
2𝜋
2𝜋
𝑎 −j𝑘𝑟1
e
𝑧d𝑧d𝜃
𝑟
1
0
0
この𝑟1 は,分母と位相項に入っているが,分母は振幅を決めるだけなので,
粗く𝑟1 ~𝑟と近似する.
位相項は𝑘が大きいと𝑘𝑟1も大きく変わってしまうので,上式の近似を用いて,
𝜌𝑐𝑉0 −j𝑘𝑟
𝑃=
e
2𝜋
2015/6/30
𝑎
0
j𝑘𝑧 −j 𝑘𝑧 2
e 2𝑟
𝑟
応用音響学
2𝜋
e−j𝑘𝑧 sin 𝛼 sin 𝜃 d𝜃d𝑧
0
20
𝜌𝑐𝑉0 −j𝑘𝑟
𝑃=
e
2𝜋
𝑎
0
j𝑘𝑧 −j 𝑘𝑧 2
e 2𝑟
𝑟
2𝜋
ej𝑘𝑧 sin 𝛼 sin 𝜃 d𝜃d𝑧
0
これはベッセル関数を用いて次のように展開できる
∞
2 𝑛
𝑘𝑎
𝑃 = 𝜌𝑐𝑉0 e−j𝑘𝑟
j
𝑘𝑎 sin 𝛼 −𝑛 J𝑛 (𝑘𝑎 sin 𝛼)
𝑟
𝑛=1
ここでJ𝑛 (𝑥)は第一種ベッセル関数と呼ばれ,
∞
(−1)𝑠 𝑥 𝑛+2𝑠
J𝑛 𝑥 =
2𝑛+2𝑠 𝑠! 𝑛 + 𝑠 !
𝑠=0
http://ja.wikipedia.org/wiki/ベッセル関数 より
2015/6/30
応用音響学
21
ちょっと寄り道
ベッセル関数?
数学的にいろいろとあるかも知れないけれど,
音響的に知っておくべきは,
「ベッセル関数は2次元の波動方程式の
等方的な解の基底」
1次元の波動方程式
𝜙=
𝜕2 𝜙
1 𝜕2 𝜙
= 2 2 の解は
𝜕𝑥 2
𝑐 𝜕𝑡
j(𝜔𝑡−𝑘𝑥)
𝐴e
+ 𝐵ej(𝜔𝑡+𝑘𝑥)
3次元の波動方程式
𝜕2 (𝑟𝜙)
𝜕𝑟 2
=
1 𝜕2 (𝑟𝜙)
𝑐 2 𝜕𝑡 2
の解は
1 j(𝜔𝑡−𝑘𝑥)
1 j(𝜔𝑡+𝑘𝑥)
𝜙=𝐴 e
+𝐵 e
𝑟
𝑟
どちらも基底は正弦波.→では2次元は?
2015/6/30
応用音響学
22
𝜕2 𝜙
𝜕𝑥 2
+
𝜕2 𝜙
𝜕𝑦 2
=
1 𝜕2 𝜙
𝑐 2 𝜕𝑡 2
を
3次元のとき同様,極座標に変換すると…
𝜕 2 𝜙 1 𝜕𝜙 1 𝜕𝜙
1 𝜕2𝜙
+
+
=
𝜕𝑟 2 𝑟 𝜕𝑟 𝑟 2 𝜕𝜃 2 𝑐 2 𝜕𝑡 2
𝜙 = 𝑅(𝑟)Θ(𝜃)ej𝜔𝑡 と仮定すると,
𝑟 2 d2 𝑅 𝑟 d𝑅 𝜔2
1 d2 Θ
+
+ 2𝑟=−
2
𝑅 d𝑟
𝑅 d𝑟 𝑐
Θ d𝜃 2
これは, 𝑅, Θが個別に変化しても成立するはずなので,
定数となっているはずであり,それを𝑛2 とおくと,
d2 Θ
2Θ = 0
+
𝑛
d𝜃 2
d2 𝑅 1 d𝑅
𝜔 2 𝑛2
+
+ 2 − 2 𝑅=0
2
d𝑟
𝑟 d𝑟
𝑐
𝑟
等方的に拡がる解は2つめの微分方程式の解である.
2015/6/30
応用音響学
23
d2 𝑅 1 d𝑅
𝜔2 𝑛2
+
+ 2 − 2 𝑅=0
2
d𝑟
𝑟 d𝑟
𝑐
𝑟
この解がベッセル関数であり,
∞
J𝑛 𝑘𝑟 =
𝑠=0
(−1)𝑠 (𝑘𝑟)𝑛+2𝑠
2𝑛+2𝑠 𝑠! 𝑛 + 𝑠 !
二次元的に波動が伝搬するときの形を表している.
2015/6/30
応用音響学
24
エネルギーで考えると,3次元に伝搬するときは,振幅
の2乗(エネルギー)×表面積=一定 になるはず.
表面積∝𝑟 2 なので,
→ 振幅∝𝑟 −1
じゃあ2次元の時は…
振幅の2乗×円周=一定のはず. → 振幅∝𝑟
2015/6/30
応用音響学
−
1
2
25
∞
𝑃 = 𝜌𝑐𝑉0 e−j𝑘𝑟
j
𝑛=1
𝑛
2
𝑘𝑎
𝑟
𝑘𝑎 sin 𝛼
−𝑛
J𝑛 (𝑘𝑎 sin 𝛼)
半径や波長に比べて,観測点が十分に遠方のとき
𝑘𝑎2
≪ 1なので,𝑛の1乗の項だけで近似できて,
𝑟
𝑎2 −j𝑘𝑟 J1 𝑘𝑎 sin 𝛼
𝑃 = jω𝜌𝑉0 e
2
2𝑟
𝑘𝑎 sin 𝛼
正面軸上のときは𝑃 =
𝑎2
jω𝜌 𝑉0 e−j𝑘𝑟 だったので,
2𝑟
方向角𝛼の分だけ角度補正がかかっていて,
J1 𝑘𝑎 sin 𝛼
それが2
𝑘𝑎 sin 𝛼
2015/6/30
になっている
応用音響学
26
三井田惇郎「音響工学」(昭晃堂) p.61より
2015/6/30
応用音響学
27
放射インピーダンス
d𝑆
𝑟
(考え方の手順)
d𝑆’
円板上の微小面積d𝑆が振動することによって,
同じく円板上の別の微小面積d𝑆′に生じる速度ポテン
シャルを求める.
d𝑆′に生じる音圧を求め,それを全面積で積分して,
円板が受ける反力を求める
(円板の他の部分d𝑆からの影響で,どれだけd𝑆′の
押しやすさが変わるかを考える)
粒子速度で除算して,放射インピーダンスを求める
2015/6/30
応用音響学
28
最後の積分が難しいので,考え方だけフォロー
𝑃=
𝑈 −j𝑘𝑟
j𝜔𝜌
e
だったので,
2𝜋𝑟
𝑉0
′
d𝑃 = j𝜔𝜌
e−j𝑘𝑟 d𝑆
2𝜋𝑟
これを,全面積で積分すると, d𝑆′上の圧力𝑃′ が算出
できて,
𝑉0
′
𝑃 = j𝜔𝜌
e−j𝑘𝑟 d𝑆
2𝜋 𝑆
このd𝑆 ′ にかかる力𝑃′ d𝑆′を全面積で積分すれば,円
板が受ける反力になるので,
𝐹=
2015/6/30
𝑆
′
𝑃 d𝑆′ =
𝑉0
j𝜔𝜌
2𝜋 𝑆
応用音響学
𝑆
e−j𝑘𝑟 d𝑆 d𝑆′
29
この積分が難しいけれど,答えは知られていて,
𝐽1 2𝑘𝑎
𝑆1 2𝑘𝑎
2
𝐹 = 𝜋𝑎 𝜌𝑐 1 −
+j
𝑉0 e−j𝑘𝑟
𝑘𝑎
𝑘𝑎
ここで𝐽1 𝑥 は1次のベッセル関数.
𝑆1 𝑥 はストルーブ関数 と呼ばれる関数.
放射インピーダンスは,粒子速度𝑉0 e−j𝑘𝑟 で割れば
𝐽1 2𝑘𝑎
𝑆1 2𝑘𝑎
2
𝑧𝑟 = 𝜋𝑎 𝜌𝑐 1 −
+j
𝑘𝑎
𝑘𝑎
放射インピーダンス密度は,面積で割れば
𝐽1 2𝑘𝑎
𝑆1 2𝑘𝑎
𝑧𝑎 = 𝜌𝑐 1 −
+j
𝑘𝑎
𝑘𝑎
2015/6/30
応用音響学
30
放射インピーダンス密度
𝐽1 2𝑘𝑎
𝑆1 2𝑘𝑎
𝑧𝑎 = 𝜌𝑐 1 −
+j
𝑘𝑎
𝑘𝑎
三井田惇郎「音響工学」(昭晃堂) p.63より
2015/6/30
応用音響学
31
付加質量
𝐹=
𝜋𝑎2 𝜌𝑐
𝐽1 2𝑘𝑎
𝑆1 2𝑘𝑎
1−
+j
𝑘𝑎
𝑘𝑎
= (𝑟𝑎 + j𝑥𝑎 )𝑉0
とすると,虚部は慣性力に見える. 𝑀
𝑀=
d𝑉0
d𝑡
𝑉0
= j𝑥𝑎 𝑉0 の関係から,
𝑥𝑎
だけ質量が増加したように見えている.
𝜔
2𝑥 2
と近似できることが知られているので,
3𝜋
𝑘𝑎 ≪ 1のとき,𝑆1 𝑥 =
振動板の周長より波長が十分大きい範囲で付加質量は,
𝜋𝑎2 𝜌𝑐𝑥𝑎 𝜋𝑎2 𝜌 8𝑘𝑎 8𝑎 2
𝑀=
=
=
𝜋𝑎 𝜌
𝜔
𝑘 3𝜋
3𝜋
8𝑎
よって,円板を底面とする高さ の円柱状の媒質が,円板に付
3𝜋
着して振動していると考えることができる.
2015/6/30
応用音響学
32
超音波アレイの話
2015/6/30
応用音響学
33
研究紹介
2014/7/8
応用音響学
34
研究紹介
2014/7/8
応用音響学
35
研究紹介
2014/7/8
応用音響学
36
収束超音波による触覚ディスプレイ
• 超音波振動子のアレイにより,
一点に音圧の高い場所を生成する
• 音響放射圧という非線形音響現象により,
その場に正圧が生じる
– 音は気体の振動であり,正負の振幅が同じなの
で,一般的には積分して正となる力は生じない
– 非線形な領域では生じる
2014/7/8
応用音響学
37
音響放射圧
非線形音響現象の1つ
これまでの波動方程式算出時の仮定では,
Δ𝑉
𝑝 = −𝐾
𝑉
が常に成立するとしていた.
実際には,正圧が高まると体積弾性率が一定とみなせない
音圧が大きくなると,このような非線形な項が無視できなくなり,
時間平均したときに,音圧の二乗に比例した正圧が生じる
→正確に考えるにはナビエ・ストークス方程式を用いるべき
この話はこの講義ではここまで.
2014/7/8
応用音響学
38
多数の超音波振動子アレイによる
収束音場
• N×N個の振動子
• ある焦点面に収束する
• 自分で設定した焦点位置は 𝑥𝑐 , 𝑦𝑐
• 焦点面上の点 𝑥𝑓 , 𝑦𝑓 の
圧力分布は
𝑁−1 𝑁−1
𝑝 𝑥𝑓 , 𝑦𝑓 =
2 𝑝𝑟
′ −j𝑘(𝑟 ′′ −𝜔𝑡)
−j𝑘𝑟
e
e
𝑚=0 𝑛=0
以降の導出は,名工大 星貴之先生の資料より
2014/7/8
応用音響学
39
𝑁−1 𝑁−1
′
2 𝑝𝑟 e−j𝑘𝑟 e−j(𝑘𝑟
𝑝 𝑥𝑓 , 𝑦𝑓 =
′′ −𝜔𝑡)
𝑚=0 𝑛=0
′
−j𝑘𝑟
e
は焦点に収束させるための位相項.
(開口から平面波が出ている場合にはこの項は無い)
𝑟 ′ は(𝑚, 𝑛)番目の振動子から焦点位置までの距離で
𝑟 ′ = (𝑥𝑚 − 𝑥𝑐 )2 +(𝑦𝑛 − 𝑦𝑐 )2 +𝑟 2
′′ −𝜔𝑡)
−j𝑘(𝑟
e
は,各振動子から放射される球面波.
2𝑝𝑟
𝑝𝑟 は距離𝑟だけ伝搬した時の音圧の実効値.
𝑟 ′′ は焦点平面上の任意の点 𝑥𝑓 , 𝑦𝑓 までの距離で
𝑟 ′′ =
2014/7/8
(𝑥𝑚 − 𝑥𝑓 )2 +(𝑦𝑛 − 𝑦𝑓 )2 +𝑟 2
応用音響学
40
よく使う近似式
𝑓 𝑥 = (1 + 𝑥)𝑎
で𝑥 ≪ 1のとき
𝑓 𝑥 ~1 + 𝑎𝑥
これって,なんででしたっけ?
2014/7/8
応用音響学
41
𝑓 𝑥 をテイラー展開すると
𝑓 𝑥 =𝑓 0 +
𝑓′
1 ′′
0 𝑥 + 𝑓 0 𝑥2 + ⋯
2
𝑥 ≪ 1なので,高次の項は無視するとして,
1次までで近似すると
𝑓 𝑥 ~𝑓 0 + 𝑓 ′ 0 𝑥
𝑓 𝑥 = (1 + 𝑥)𝑎 のとき,
𝑓 𝑥 ~1 + 𝑎𝑥
例えば
𝑓 𝑥 = 1 + 𝑥~1 +
2014/7/8
𝑥
2
応用音響学
42
𝑟′ =
(𝑥𝑚 − 𝑥𝑐 )2 +(𝑦𝑛 − 𝑦𝑐 )2 +𝑟 2
(𝑥𝑚 − 𝑥𝑐 )2 +(𝑦𝑛 − 𝑦𝑐 )2
~𝑟+
2𝑟
𝑟 ′′ =
(𝑥𝑚 − 𝑥𝑓 )2 +(𝑦𝑛 − 𝑦𝑓 )2 +𝑟 2
(𝑥𝑚 − 𝑥𝑐 )2 +(𝑦𝑛 − 𝑦𝑐 )2
~𝑟+
2𝑟
等の近似を入れて解くと
𝑁−1 𝑁−1
𝑝 𝑥𝑓 , 𝑦𝑓 =
2 𝑝𝑟
′ −j𝑘(𝑟 ′′ −𝜔𝑡)
−j𝑘𝑟
e
e
𝑚=0 𝑛=0
𝑁𝑑𝜈𝑥 𝑁𝑑𝜈𝑦
sinc
, 2
2
~ 2𝑝𝑟 𝑁 2
ej{𝜑(𝑥𝑓,𝑦𝑓 )−𝜔𝑡}
𝑑𝜈𝑥 𝑑𝜈𝑦
sinc
,
2
2
2014/7/8
応用音響学
43
𝑁𝑑𝜈𝑥 𝑁𝑑𝜈𝑦
sinc
,
2
2
2
𝑝~ 2𝑝𝑟 𝑁
ej{𝜑(𝑥𝑓 ,𝑦𝑓)−𝜔𝑡}
𝑑𝜈𝑥 𝑑𝜈𝑦
sinc
,
2
2
ここで,sinc 𝑥, 𝑦 =
sin 𝑥 sin 𝑦
𝑥𝑦
𝑁はアレイの1辺の個数.(実際には20個くらい)
𝑑はアレイ1つあたりの直径.(実際には10mm)
座標 𝑥𝑚 , 𝑦𝑛 = 𝑚𝑑 + 𝜉, 𝑛𝑑 + 𝜉
ここで𝜉はオフセット
𝑘
𝑟
𝑘
𝜈𝑥 ≡ 𝑥𝑓 − 𝑥𝑐 , 𝜈𝑦 ≡
𝑟
𝑘
𝜑 𝑥𝑓 , 𝑦𝑓 ≡
𝑥𝑓 2 + 𝑦𝑓 2
2𝑟
𝑦𝑓 − 𝑦𝑐
:焦点からの距離で表現
− 𝑥𝑐 2 − 𝑦𝑐 2
𝑁−1 𝑑
− 𝜉+
(𝜈𝑥 + 𝜈𝑦 )
2
2014/7/8
応用音響学
44
細かいことは置いておいて…
• 大雑把に状況を理解する
𝑁𝑑𝜈𝑥 𝑁𝑑𝜈𝑦
sinc
,
2
2
2
𝑝 𝑥𝑓 , 𝑦𝑓 ~ 2𝑝𝑟 𝑁
ej{𝜑(𝑥𝑓 ,𝑦𝑓)−𝜔𝑡}
𝑑𝜈𝑥 𝑑𝜈𝑦
sinc
,
2
2
数が増えると
振幅が増す
2014/7/8
振動である
空間的な振幅パターンを
決定する部分
応用音響学
位相が位置に
よってずれる
45
メインの幅は,sinc
それがsinc
2014/7/8
𝑁𝑑𝜈𝑥 𝑁𝑑𝜈𝑦
,
2
2
𝑑𝜈𝑥 𝑑𝜈𝑦
,
2
2
で決まる.
の周期で現れる.
応用音響学
46
2次元的に表現すると
2014/7/8
応用音響学
47
sinc
sinc
𝑁𝑑𝜈𝑥 𝑁𝑑𝜈𝑦
,
2
2
𝑁𝑑𝜈𝑥 𝑁𝑑𝜈𝑦
,
2
2
の最初の零点間の幅は
=
sin
𝑁𝑑𝜈𝑦
𝑁𝑑𝜈𝑥
sin
2
2
𝑁𝑑𝜈𝑥 𝑁𝑑𝜈𝑦
2
2
𝑁𝑑𝜈𝑥
これが0になるのは
2
𝑘
𝜈𝑥 ≡ 𝑥𝑓 − 𝑥𝑐 から,
𝑟
なので,
= πのところで,
2π 𝑟
𝜆𝑟
𝑥𝑓 − 𝑥𝑐 =
=
𝑁𝑑 𝑘 𝑁𝑑
中心から最初の零点までの距離.
幅はこの倍なので
2𝜆𝑟
𝑤=
𝑁𝑑
2014/7/8
応用音響学
48
一方,繰り返しパターンはどの程度の間隔か?
sinc
𝑑𝜈𝑥 𝑑𝜈𝑦
,
2
2
の最初の零点間の幅がパターンの繰り
返し周期を決めている.
𝑑𝜈𝑥
これが0になるのは
2
= πのところで,
2π 𝑟 𝜆𝑟
𝐿 = 𝑥𝑓 − 𝑥𝑐 =
=
𝑑 𝑘
𝑑
N
焦点の幅に対して 倍
2
2014/7/8
応用音響学
49
以上まとめると…
2𝜆𝑟
収束させた時のサイズは
𝑁𝑑
𝜆𝑟
一方, の周期で同じピークが現れる.
𝑑
𝑁𝑑は超音波振動子の一辺のサイズ
𝜆は超音波の周波数
𝑟は収束点までの距離
つまり,以下の条件で焦点径は小さくなる.
• 超音波振動子の開口が大きいほど
• 波長が短いほど
• アレイと焦点との距離が短いほど
– ただし,途中の近似が成り立つ範囲
2014/7/8
応用音響学
𝑥
𝑟
≪1
50
現実的な話としては…
2𝜆𝑟
収束させた時のサイズは
𝑁𝑑
𝜆𝑟
の周期で,同じピークが現れる.
𝑑
現実的なサイズは
𝜆 = 8.5 mm @40 kHz
𝑟 = 200 mm
𝑑 = 10 mm,
𝑁 = 17
であり,このとき
𝑤 = 20 mm
𝐿 = 170mm
2014/7/8
応用音響学
51
細かい計算の話
一次近似
方針:(𝑚, 𝑛) の総和を取りたいので,
(𝑚, 𝑛) に関係ない部分を括りだしていく
2014/7/8
応用音響学
52
焦点座標cを中心座標fにもってくる以下の座標変換をして
なので,これを利用して
とすれば最終的に
2014/7/8
応用音響学
53
は,初項が1,公比e−j𝜈𝑥 𝑑 の等比数列の和なので,
右の公式を利用すれば,
𝑥の方だけ計算すると
2014/7/8
応用音響学
54
と書くことにして,𝑥, 𝑦 両方の掛け算をすれば,
より
ここは,𝐵と
をまとめたもの
2014/7/8
応用音響学
55
光学との類似性
• 一点に焦点を結ぶように位相を制御して
超音波を出す → 光学レンズと同じ効果
(今回の問題設定は四角いレンズ)
• 光学でこの辺の話がどうなっていたかを思い
出してみる
2014/7/8
応用音響学
56
開口での回折
ej𝑘𝑟
球面波を𝐴
とすると,開口𝑔
𝑟
𝑥, 𝑦 上での微小領域d𝑥d𝑦
ej𝑘𝑟
𝑥0 , 𝑦0 に作る場は𝐴
d𝑥d𝑦なので,
𝑟
が距離𝑅離れた位置
これを開口の形で積分すれば…
1
𝑢 𝑥0 , 𝑦0 =
j𝜆
ej𝑘𝑟
𝑔 𝑥, 𝑦 𝐴
d𝑥d𝑦
𝑟
1
j𝜆
ただし, はグリーンの定理から導き出される係数
𝑔 𝑥, 𝑦 は開いているところでのみ1,それ以外は0という関数
2014/7/8
応用音響学
57
聞いたことのあるキーワード
• フレネル回折
• フラウンホーファー回折
→ 違いはどこでしょう?
答え:距離の近似に関して,
フラウンホーファー回折の方が,
距離の近似が強い
2014/7/8
応用音響学
58
距離の近似に対して…
• フレネル回折
𝑟 = 𝑅2 + (𝑥 − 𝑥0 )2 +(𝑦 − 𝑦0 )2
𝑥 − 𝑥0 2 + 𝑦 − 𝑦0 2
~𝑅 1 +
2𝑅2
• フラウンホーファー回折
𝑥 2 + 𝑥0 2 + 𝑦 2 + 𝑦0 2 − 2(𝑥𝑥0 + 𝑦𝑦0 )
=𝑅+
2𝑅
𝑥0 2 + 𝑦0 2 𝑥𝑥0 + 𝑦𝑦0
~𝑅+
−
2𝑅
𝑅
2014/7/8
応用音響学
59
フラウンホーファー回折
𝑢 𝑥0 , 𝑦0
この距離𝑟として,𝑅 +
ej𝑘𝑟
𝑔 𝑥, 𝑦 𝐴
d𝑥d𝑦
𝑟
1
=
j𝜆
𝑥0 2 +𝑦0 2
2𝑅
−
𝑥𝑥0 +𝑦𝑦0
を代入.
𝑅
ただし,分母の𝑟は振幅の変化を与えるだけなので𝑅で置き換え.
積分に関係しない𝑥0 2 + 𝑦0 2 ,𝑅あたりの項を
積分から出してまとめて𝐴′としてしまえば,
𝑢 𝑥0 , 𝑦0 = 𝐴′
ここで,𝜈𝑥 ≡
2014/7/8
𝑘
𝑥 ,𝜈
𝑅 0 𝑦
≡
𝑔 𝑥, 𝑦 e−j(𝜈𝑥𝑥+𝜈𝑦 𝑦) d𝑥d𝑦
𝑘
𝑦 , 𝐴′
𝑅 0
≡
𝐴 j𝑘
e
j𝜆𝑅
応用音響学
𝑥0 2 +𝑦0 2
𝑅+
2𝑅
60
フラウンホーファー回折とフーリエ変換
𝑢 𝑥0 , 𝑦0 = 𝐴′
𝑔 𝑥, 𝑦 e−j(𝜈𝑥 𝑥+𝜈𝑦 𝑦) d𝑥d𝑦
ところで,ある関数のフーリエ変換の定義は
𝐹 𝜔 =
𝑓(𝑡) e−j𝜔𝑡 d𝑡
なので,このフラウンホーファー回折の結果は
𝑢 𝑥0 , 𝑦0 = 𝐴′ 𝐺 𝜈𝑥 , 𝜈𝑦
つまり,開口の形𝑔 𝑥, 𝑦 の二次元フーリエ変換になっている.
𝐴 j𝑘(𝑅+𝑥0 2 +𝑦0 2 )
2𝑅
𝐴′ ≡
e
j𝜆𝑅
は位置 𝑥0 , 𝑦0 に応じた振動成分であるが,光の場合には
その強度が観測されるため,ここは定数として見てよい
2014/7/8
応用音響学
61
矩形の開口なら…
∞
𝐹 𝜔 =
𝑓(𝑡) e−j𝜔𝑡 𝑑𝑡 =
−∞
1 −j𝜔𝑡
= − e
j𝜔
𝑎
=
𝑎
e−j𝜔𝑡 𝑑𝑡
−𝑎
ej𝜔𝑎 − e−j𝜔𝑎
−𝑎
j𝜔
sin 𝑎𝜔
= 2𝑎
𝑎𝜔
なので,sinc関数になる.
2014/7/8
応用音響学
62
円形の開口なら
第一種一次ベッセル関数によって表せて
𝐽1 (𝑤)/𝑤
( 𝑤 は半径)
2014/7/8
応用音響学
63
ここまでの話は,超音波の時のような
「一点で位相を揃える」
というような部分は出てきていない
ある開口を通り抜けた平行光が遠方でどう見え
るかを考えると,フーリエ変換になっている
という話.
「一点で位相を揃える」効果は光学ではレンズ
→ 位相を揃える項が入るとどうなるか?
2014/7/8
応用音響学
64
レンズ
レンズの焦点距離は近いので,フラウンホーファー回折
ではなく,フレネル回折の近似で扱う必要がある.
焦点距離を𝑓としたとき,
点(𝑥, 𝑦)から焦点までの距離
𝑟′
(𝑥0 , 𝑦0 )
(𝑥, 𝑦)
= 𝑓 2 + 𝑥2 + 𝑦2
に応じて,位相をずらす効果がある
𝑟′
𝑓
レンズの中心を位相の基準に取るとこの性質は
′ −𝑓)
−j𝑘(𝑟
ℎ 𝑥, 𝑦 = e
と書ける
2014/7/8
応用音響学
65
距離𝑅にあるスクリーン上での振幅分布はレンズの
−j𝑘(𝑟 ′ −𝑓)
効果ℎ 𝑥, 𝑦 = e
を考慮して
1
ej𝑘𝑟
𝑢 𝑥0 , 𝑦0 =
𝑔 𝑥, 𝑦 ℎ(𝑥, 𝑦)𝐴
d𝑥d𝑦
j𝜆
𝑟
1
=
j𝜆
𝑔 𝑥, 𝑦 𝐴
これにフレネル回折の近似
𝑥 − 𝑥0
𝑟~𝑓 1 +
′ +𝑓)
j𝑘(𝑟−𝑟
e
𝑟
d𝑥d𝑦
+ 𝑦 − 𝑦0 2
2𝑓 2
𝑥2 + 𝑦2
𝑟′~𝑓 1 +
2𝑓 2
を代入すると,結局 𝑟 − 𝑟 ′ のところでフラウンホーファー回折の
ときに無視していた 𝑥 2 ,𝑦 2 の部分が消えるので…
2014/7/8
2
応用音響学
66
𝑢 𝑥0 , 𝑦0 = 𝐴′
ここで, 𝐴′ ≡
𝐴
e
j𝜆𝑅
𝑔 𝑥, 𝑦 e−j(𝜈𝑥 𝑥+𝜈𝑦𝑦) d𝑥d𝑦
𝑥0 2 +𝑦0 2
j𝑘(𝑓+
)
2𝑓
, 𝜈𝑥 ≡
𝑘
𝑥0 , 𝜈𝑦
𝑓
≡
𝑘
𝑦0
𝑓
これはフラウンホーファー回折と同じ式であり
開口形状のフーリエ変換になっている.
つまり,レンズを使うとフレネル回折程度の近距離で,
フラウンホーファー回折と同じ効果が生じる
2014/7/8
応用音響学
67
開口と解像度
http://microscopelabo.jp/learn/029/より
• 2つの焦点が2つに見える
→零点間の距離以上離れている
2014/7/8
応用音響学
68
フェーズドアレイもレンズと同じ
2014/7/8
応用音響学
69
収束超音波の話に戻ると…
𝑁−1 𝑁−1
′
2 𝑝𝑟 e−j𝑘𝑟 e−j𝑘(𝑟
𝑝 𝑥𝑓 , 𝑦𝑓 =
′′ −𝜔𝑡)
𝑚=0 𝑛=0
′
𝑟 は(𝑚, 𝑛)番目の振動子から焦点位置までの距離で
𝑟 ′ = (𝑥𝑚 − 𝑥𝑐 )2 +(𝑦𝑛 − 𝑦𝑐 )2 +𝑟 2
𝑟 ′′ は焦点平面上の任意の点までの距離で
𝑟 ′′ =
(𝑥𝑚 − 𝑥𝑓 )2 +(𝑦𝑛 − 𝑦𝑓 )2 +𝑟 2
フレネル回折の近似で計算すると
𝑝(𝑥𝑓 , 𝑦𝑓 )~ 2𝑝𝑟 𝑁 2
𝑁𝑑𝜈𝑥 𝑁𝑑𝜈𝑦
,
2
2
ej{𝜑(𝑥𝑓 ,𝑦𝑓)−𝜔𝑡}
𝑑𝜈𝑥 𝑑𝜈𝑦
sinc
,
2
2
sinc
だったので,矩形開口のフーリエ変換になっている.
2014/7/8
応用音響学
70
位相制御したフェーズドアレイは…
• レンズのような役割を果たすはず
• でも実際は…
この繰り返しパターンはなぜ出るのか?
2014/7/8
応用音響学
71
周期構造を決定するのは素子𝑑の幅
sinc
𝑑𝜈𝑥 𝑑𝜈𝑦
,
2
2
の周期で現れる
超音波の振動子が有限のサイズを持つことにより,
連続的な球面波ではなく,離散的な球面波の
足し合わせになっている
2014/7/8
応用音響学
72
つまり開口のパターン𝑔(𝑥, 𝑦)が…
𝑁𝑑
𝑑
ではなくて
矩形状の(有限の)デルタ関数列のように見えている
理想的な矩形パターンを𝑔0 (𝑥, 𝑦),デルタ関数列を
𝑧(𝑥, 𝑦)とすれば,実際の開口パターン𝑔(𝑥, 𝑦)は
𝑔 𝑥, 𝑦 = 𝑔0 𝑥, 𝑦 𝑧(𝑥, 𝑦)
2014/7/8
応用音響学
73
フーリエ変換の大事な性質
積𝒇(𝒕)𝒈 𝒕 のフーリエ変換は,
それぞれのフーリエ変換𝑭 𝝎 , 𝑮 𝝎 の畳み込み積分
𝑢 𝑥0 , 𝑦0 = 𝐴′
{𝑔0 𝑥, 𝑦 𝑧(𝑥, 𝑦)}e−j(𝜈𝑥𝑥+𝜈𝑦 𝑦) d𝑥d𝑦
なので理想的な開口のフーリエ変換𝐺 𝜈𝑥 , 𝜈𝑦 に対して,
デルタ関数列のフーリエ変換𝑍 𝜈𝑥 , 𝜈𝑦 が畳み込まれた形が
このパターン→
2014/7/8
応用音響学
74
理想的な状態として…
2𝜋
𝑑
𝑑
𝑑が小さくなり,密な点波源の集まりとみなせるように
なれば, 𝑍 𝜈𝑥 , 𝜈𝑦 のデルタ関数列の間隔が長くなる.
𝑑 → 0の極限では, 𝑍 𝜈𝑥 , 𝜈𝑦 の間隔が∞になり,
連続的なレンズの場合と一致.
2014/7/8
応用音響学
75
先ほどの振動円板の話
• 円形開口に,位相が揃った平面波が入ってきた場
合の回折と同じ
• 遠方の時の近似式は以下.
𝑎2 −j𝑘𝑟 J1 𝑘𝑎 sin 𝛼
𝑃 = jω𝜌𝑉0 e
2
2𝑟
𝑘𝑎 sin 𝛼
この中の角度𝛼に依存する,空間の分布を表す項は
J1 𝑘𝑎 sin 𝛼
2
𝑘𝑎 sin 𝛼
であり,これは円形開口のフーリエ変換
(もし振動板が長方形だったら,sinc関数)
2014/7/8
応用音響学
76
まとめ
• 振動するものの放射特性や,そのときの放射インピーダ
ンスを知りたいとき,点音源の重ね合わせで考えればよ
い
• アレイから位相を揃えて超音波を放射する
フェーズドアレイの考え方を説明した
• その時の音圧分布の求め方と,その計算方法を
示した
• 光学のレンズ系のように,フーリエ変換の
効果がある
2014/7/8
応用音響学
77
最終回予告
• 固体の中を伝搬する振動
• 空気中や水中を伝搬する振動と固体の中を
伝搬する振動で,一番違うのはどこか??
– 縦波?横波?
2014/7/8
応用音響学
78