C11 Research Abstracts on Spatial Information Science CSIS DAYS 2015 人口減少黎明期の地方中核都市における空閑地の発生・残存パターン 坂本 慧介,飯田 晶子,横張 真 東京大学大学院 工学系研究科 Email: <[email protected]> (1) 動機: 我が国の地方圏では人口減少が始まり,空 き家・空閑地の増加による都市縮退の進行が予測 され,都市を適切な市街地規模へと誘導していくこ とが政策課題となっている(浅見 2014).しかし,地 方都市における縮退の進行状況と住宅地の立地 的特性との関係についての既存の研究蓄積は十 分ではない.そこで本研究では,既に人口減少基 調にある地方中核都市の住宅地における空閑地 の発生・残存パターンに着目し,都市縮退の実態と 立地的特性との関係を明らかにする. (2) 方法: 対象都市の住居系用途地域内に存在する 空閑地の悉皆調査を行い,詳細な空閑地データベ ースを整備した.その後,特化度を用いて空閑地 が発生・残存しやすい住宅地の立地特性を分析し た.研究対象都市は鳥取県鳥取市とした. (3) 結果: 図 1~図 4 は順に, 鳥取市における市街地 開発年代・住宅地の開発事業手法・鳥取駅からの 距離・道路幅員を示す.また図 5 は対象都市の住 居系用途地域内における全空閑地を示す.ここで 撤退タイプとは住宅の撤退により発生した空閑地, 未建築タイプとは開発以降未建築のまま残存する 空閑地を指す.特化度を用いて空閑地分布と立地 的特性との関係を分析したところ,撤退タイプ空閑 地の発生・残存には開発年代の古さ(1973 年以前) と道路幅員の狭さ(6.0 メートル未満)が,未建築タイ プ空閑地の発生・残存には開発年代の新しさ(1974 年以後)と住民主導の土地区画整理事業が,それ ぞれ強く関係することが明らかになった.特に,主要 駅に近接したエリアに多く立地する開発年代が古く 道路幅員の狭あいな住宅地に,撤退タイプ空閑地 が多く発生・残存している点は,既往研究で示され ている大都市圏の空閑地の発生・残存動向(例えば, 阪井 2014)とは大きく異なる.この結果は,自家用車 依存の強い地方中核都市では,公共交通へのアク セス性が住宅地の需要に必ずしも結びつかないた め,駅前を拠点として市街地を誘導する従来の都市 再編手法が機能しない可能性を示唆している. (4) 使用したデータ: ・「国勢調査」 総務省統計局 ・「住宅・土地統計調査データ」 総務省統計局 ・「土地基本統計データ」 国土交通省 ・鳥取市の住居系用途地域における空閑地の悉 皆調査データ(2014 年 8,9 月実施) ・「正式 2 万分 1 地形図,2 万 5 千 1 地形図」 国土 地理院 ・「基盤数値情報」 国土地理院 ・「平成 20 年度都市計画基礎調査データ」 鳥取県 ・「ゼンリン住宅地図」 株式会社ゼンリン (5) 参考文献: 浅見泰司 (2014) 空閑地の都市問題-周辺の土 地利用といかに有効に連携させるか-.『都市の空 閑地 空き家を考える』,Progress,3-13. 阪井暖子 (2014) 大都市圏郊外戸建住宅地にお ける空地等の発生消滅の実態と要因に関する研 究:首都圏および近畿圏の郊外戸建住宅地を対 象として.「都市計画論文集」,49(3),1035-1040. 図 1: 市街地の開発年代 図 3: 鳥取駅からの距離 図 2: 住宅地の開発事業手法 図 4: 市街地の道路幅員 - 43 - 図 5: 鳥取市における空閑地の分布
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