脂肪肝・NAFLD

脂肪肝・NAFLD
副院長:奥嶋 一武
状態をアルコール性肝障害と呼んでいます。
やメタボリックシンドロームのある方は、
一方、アルコールを飲まない方や時々しか
NAFLD の発症率は 1 年で 10%と推定されてい
治療の原則は、食事・運動を含む生活習
飲まない方にも脂肪肝を認める場合があり、
ます。よって、肥満の改善やメタボリックシ
慣を是正して肥満を改善し、内臓脂肪を
これを NAFLD と言います。NAFLD は、主に肥
ンドロームの治療は非常に重要です。
減少させることです。7%以上の体重減少
満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などを基
近年、我が国や欧米などの先進国では食
事の欧米化など生活環境の変化によって肥
満が増加しています。それに伴い、糖尿病
NAFLD は、 非 ア ル コ ー ル 性 脂 肪 肝
改善も見られるようになります。そして、
は脂肪肝があるか否かを判断することから始
NAFLD の背景にある糖尿
まります。脂肪肝がなければ NAFLD ではあり
病・高血圧・脂質異常症
と
などの治療も非常に重要
性脂肪が異常値となること)、高血圧など
非 ア ル コ ー ル 性 脂 肪 肝 炎(nonalcoholic
です。薬物療法はいくつ
動脈硬化の原因となる疾患が増加し、心筋
steatohepatitis : NASH)の2つに分類さ
かが試みられています
梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患のリス
れています。NAFL は病態がほとんど進行し
が、現在のところ確実な
クファクターが複数認められるメタボリッ
ないと考えられており、肥満の治療として
治療薬はありません。高
クシンドロームが問題となっています。そ
の生活習慣の改善は必要で
度 の 肥 満 が あ る NASH に
して、メタボリックシンドロームが肝臓
すが、特に肝臓の治療は行
対しては減量手術が有効
に現れた病変が脂肪肝や非アルコール性
い ま せ ん。 一 方、NASH は 肝
で、欧米では日本よりも
脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver
臓の組織に障害(壊死、
炎症、
普及しており、高い治療効果が報告されて
disease : NAFLD)と呼ばれる疾患です。
線維化など)を認め、NAFLD
います。また、NASH の進展により肝硬変
今回はこの疾患について述べます。
の重症型と位置づけられて
ません。これには肝臓の超音波検査が最適で
からさらに肝不全に移行した場合は肝移植
います。そして、肝硬変や肝臓癌の原因と
す。超音波検査で脂肪肝を認めた場合、アル
が行われることもあります。
なるため肝臓の治療が必要となります。
コールを飲まない方で、血液検査で肝障害
や脂質異常症(血中のコレステロールや中
脂肪肝とは、肥満やアルコールの過剰摂
(nonalcoholic fatty liver : NAFL)
で、肝臓に蓄積した脂肪が減少し、炎症の
NAFLD の診断方法について述べます。最初
盤に発症しています。
NAFLD / NASH の治療について述べます。
取などが原因で肝臓に脂肪が蓄積した状態
2011 年、日本では NAFLD は約 1000 万人、
(AST や ALT の異常高値など)があると NAFLD
のことを言います。我が国では検診を受け
NASH は約 200 万人の方が罹っていると推計
の疑いが出てきます。そして、血液検査でB
前述したようにメタボリックシンドローム
た方の約 30%に脂肪肝が認められており、
しています。しかし、その後も増え続けてい
型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎や自
があるため動脈硬化による心血管障害や脳
最も有病率の高い肝臓病となっています。
るため、最近では約 30%の日本人が NAFLD
己免疫性肝疾患などの他の肝臓病がないこと
血管障害が大きな影響を及ぼします。
また、
アルコールの過剰摂取によって肝臓の炎症
を罹っていると想定されています。そして、
を確認した時点で、NAFLD と診断します。次
長期間にわたる肝臓の慢性の炎症によって
や機能障害が起こることは以前より知られ
2020 年には、肝移植の原因の第一位が NASH
に、NAFLD のうち、臨床的に問題にならない
肝硬変へ進展します。また、肝臓に癌が発
ており、アルコール性肝障害の方の多く
になるだろうとの予測もあります。人間ドッ
ことが多い NAFL か、治療が必要な NASH かを
生することもあります。NASH による肝硬
に脂肪肝を認めます。飲酒量としてはエタ
クの集計では、生活習慣病関連項目のうち、
区別しなければなりません。これには肝生検
変からの肝臓癌は、年率 2%と言われてお
ノール換算で男
耐糖能異常(糖尿病の指標です)
、高血圧、
という検査が必要です。局所麻酔を行い、お
り、
定期的に超音波検査や CT などでチェッ
性は1日30g
脂質異常症、肝機能異常が年々増加してい
腹から肝臓の組織を採取するための専用の針
クする必要があります。NAFLD はまだ新し
以 上、 女 性 は 1
ます。これらの生活習慣病患者の増加は、
を肝臓に直接刺して、肝臓の組織を少量採取
い病気であり、現在も多くの専門施設で研
日20g以上の
NAFLD や NASH の増加につながるため、早い
し、顕微鏡で調べる検査です。当院では、2
究が進められています。将来、新しい診断
飲 酒 を し、 肝 臓
段階での生活習慣の改善と治療の開始が重
日間の検査入院で行っています。この結果で
方法やより効果的な治療法が開発されるこ
に障害が現れた
要となってきています。とくに体重の増加
NAFL か NASH かの診断が確定します。
とを筆者も期待しています。
NAFLD / NASH の患者の予後については、