進路指導室から第32号

平成 27 年 10 月 23 日
進 路 指 導 部
はじめに
朝日新聞朝刊に、哲学者であり前大阪大総長の鷲田清一先生のコラム「折々のことば」が掲載されています。
さまざまな「言葉」を紹介しながら、鷲田先生の「思索」を綴られています。その中に、こんな「言葉」と「思
索」がありました。
「みずからの中の偉大なものの小ささを感ずることのできない者は、他人の中の小さなものの偉大さを見すご
しやすい」
(岡倉天心『茶の本』
)
品格、教養、有徳、勇気、美意識…。いずれも称賛すべきものではあるが、そういう偉大さも、その陰で、あ
るいは縁の下で、その人のために、食事を用意し、掃除をしている人たちの沈黙の行為がなければ何ものでもな
い。このことを知り尽くしているか否かに、その「大きさ」はかかっている。
私たちは多くの存在に支えられています。その存在が何かわからないとしても、私たちを支えてくれている存
在を意識することが大切ではないかと思っています。
九州大学出張講義について
10月19日(月)
)に本校視聴覚室にて、九州大学 大学院システム情報化学研究院 情報知能工学部門 教授
鵜林 尚靖 先生を講師としてお招きし、
「ソフトウェア開発にかける夢」を演題に「九州大学出張講義」を行いま
した。
当日は、約70名の参加がありましたが、先生から、
「ソフト
ウェアの未来」
、
「ソフトウェアをつくること」
、そして「九州大
学で何が学べるか」についてお話をしていだきました。
2045 年には、
コンピューターが人間の能力を越えるといわれて
いますが、情報通信技術は生活のあらゆる場面で欠かさない存在
となっています。そうしたことから、ソフトウェア開発のエンジ
ニアの社会的ニーズが高まっていますが、エンジニアとして大切
なこととして、
「社会との接点を常に念頭において技術開発に取
り組む」ことをあげられたことが印象に残りました。
国立大学教育養成分野の再定義について(
「学研・進学情報 11 月号」から)
文部科学省から出された通知「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」
(平成 27 年 6 月 8 日付)
の中に、各国立大の「ミッションの再定義」を踏まえた組織の見直しが提言されました。これを受けて、現在、
免許取得を卒業要件としていない課程、いわゆる「新課程」の見直しが進められています。
そもそも「新課程」の設置が始まったのは 1987 年からです。これは、当面は教員需要が小さくなる時期であっ
た一方で、将来はまた教員需要が高まることが予想されたことから、教員養成学部の組織は維持したまま、
「新課
程」が設けられ、ピーク時の 2002 年には、
「新課程」の定員が6千人台になりました。
しかし、2013 年の教育再生会議の第3次提言において、初等・中等教育を担う教員の質の向上のため教員養成
系大学・学部については、量的整備から質的充実への転換を図るとされたこと等をきっかけに、
「新課程」の減尐
が目立っています。また、他学部への改組・転換もあり、2002 年に比べて45%も減尐しています。
こうした動きと並行して、国立大学の教員養成分野についてミッションの再定義を行い、①地域連携機能の強
化、②広域にわたる特定機能の強化、③大学院重点大学の3つに機能分類されました。
資料:国立大学教員養成分野のミッションの再定義
ミッション
内
容
大
学
名
の類型
①地域連携 ○ 都道府県の教育委員会との密接な連携により、当 弘前大、岩手大、秋田大、茨城大、宇都宮大、
機能の強化
該地域の教員養成・現職研修の中核的機能を担う総 群馬大、埼玉大、千葉大、横浜国立大、
(34 大学)
合大学などにある教員養成学部。
新潟大、金沢大、福井大、山梨大、信州大、
岐阜大、静岡大、三重大、滋賀大、
②広域にわ
たる特定機
能の強化
(7大学)
京都教育大、奈良教育大、和歌山大、島根大、
岡山大、山口大、香川大、愛媛大、高知大、
佐賀大、長崎大、熊本大、大分大、宮崎大、
鹿児島大、琉球大
○ 地域密接に加え広域の拠点となる特定の機能を 北海道教育大、宮城教育大、東京学芸大
併せ持つことを目指す教員養成大学など。
愛知教育大、大阪教育大、広島大、
○ 北海道、東北、関東、中部、関西、中国・四国、 福岡教育大
九州の各地域ブロックに1大学。
○ 広域で、教育人材養成の多様なニーズに対応する
ため、新課程の存立もありうる。
○ 大学院教育を中核に位置付け、我が国の現職教員 上越教育大、兵庫教育大、鳴門教育大
再教育の拠点機能を目的として設立した大学。
③大学院重
点大学
(3大学)
教員養成課程の強化や教職大学院の強化など新課程の廃止が進められていますが、大学それぞれの「ミッショ
ン」を見定めた進路指導が必要になるのではないかと考えています。
「新・心のサプリ(新聞記事から)
」
10月18日(日)の毎日新聞朝刊に、日本医大特任教授の海原純子先生の「新・心のサプリ」に以下の記事
が掲載されました。
レッテルを外すエネルギー
今年のノーベル医学生理学賞と物理学賞の発表を聞いたとき、皆さんはどんな思いまが心に浮かびましたか?テ
レビで街の声を拾っていたが、
「日本人はすごい」というものが多いなと感じた。
私もそういう思いより、まずお二人の出身大学がかつての国立Ⅰ期校でないことに驚き、大村智さんが定時制高
校で教鞭をとっていたことに驚いた。そして何よりこのように画期的で素晴らしい研究をしている方がいるのをち
ょっと分野が違うと全く知らずに過ごしているのだなあ、と考えた。今、ノーベル賞はどこの国がいくつなどと競
争やナショナリズム的な視点が強くなっているが、自分の知らない素晴らしい研究や生き方をしている学者が世界
にいることに、気づかせてくれるのがノーベル賞ではないかと思った。日本の受賞者は研究内容や人柄について詳
しく報道されている。しかし、他国の受賞者の報道はわずかだ。もう尐し他国の方たちのことも知りたい気がする。
どんな生き方をなさっているのだろう。
さて、大村さんの年齢は80歳だが、高齢者という雰囲気は全くない。すてきな大人という印象だ。年齢という
枠や高齢というレッテルから見事に飛び出していらっしゃる。大村さんご自身がいわゆる「レッテル貼り」の心理
の枠から飛び出して生きてこられたからだろうか?一つの枠にはまらず自分の可能性とやってみたいことを追求
していく人生を、後輩に見せてくれている。農業しながら勉強し、勉強しながらスキーで国体に出場し、高校教師
という枠に収まらず研究者として学び直し、研究者をしながら枠にはまらず美術館の館長をするという生き方はお
見事というしかない。
レッテルというのは実は非常に厄介だ。自分でつけたくなくても周りから自然につけられてしまう。まず出身大
学。国立Ⅰ期校を出ていないといいところに就職できない。国立Ⅰ期校以外はダメというレッテルはまだまだ根強
く残っている。特に学術的な分野ではそうした風潮がかなり強いのだ。その中で地方大学を卒業した今回のお二人
は、周囲のレッテルを実力で外していったのだと思う。レッテルを外すには、周囲を納得させるだけの力とエネル
ギーが必要だ。大変な努力だったと想像できる。周囲からつけられたレッテルで、自分はだめなのだろうと最初か
らあきらめてしまう若者を最近多くみているから、若者の励みになるだろう。自分はどうせだめだとあきらめ、枠
の中に閉じこもってしまわず可能性を追求する姿勢を教えてくれている。
今回お二人のノーベル賞受賞が決まったことは、出身大学がすべてではなく、枠を超えて可能性を追求する情熱
が大切ということを今の学歴社会に伝えてくれたような気がする。お金をかけて教育された人たちだけがいい大学
に行く今の風潮を苦々しく感じているサラブレッドではない若者に、勇気を与えてくれたと思う。
「枠を超えて可能性を追求する情熱」が世界を変えていく力になるのかもしれません。
終わりに
10月30日(金)から、顧問を務めているクラブが中国大会に出場します。しっかり準備をして大会に臨み、
連覇をめざしていきたいと考えています。
(文責:進路指導部 池本 邦彦)