8 共同研究 A - 日本語教育振興協会

8
Ⅰ
共同研究 A
代表日本語教育機関の所在地及び代表者名
1
代 表 機 関 名
日本学生支援機構
東京日本語教育センター
(研究共同校:日本学生支援機構大阪日本語教育センター)
2
所
在
地
〒169-0074 東京都新宿区北新宿 3-22-7
電話
3
設
4
役職・代表者名
Ⅱ
置
者
03-3371-7267
独立行政法人
日本学生支援機構
理事長
保雄
北原
研究内容
1
研究課題
中国の大学入学等の統一試験及びその成績の日本語学校入学審査にお
ける活用について
2
3
研究組織
(代表者名) 徳田
裕美子
(研究員名) 唐澤
清司、渡辺
四郎、中尾
英昭、田内
郁子、
上田
直子、重松
保明、風間
賢二、矢野
良子
研究目的
昨年度の普通高考の研究を基礎に、研究範囲を会考や成人高考、高職単独招生まで拡大
することによって、試験制度や中国からの応募者の学力、教育内容を把握するとともに、
日本での中等教育機関学習内容との関連性を検討し、以ってこれらの試験の成績を日本語
学校入学審査での適切な活用に資することを目的とする。
Ⅲ
研究成果の概要
1.研究の動機
この研究は文部科学省補助事業「教材等研究・開発等」研究協力校として昨年度行った
「中国の大学入学統一試験及びその成績の日本語学校入学審査における活用について」の
いわば続編である。昨年この研究を行った背景には中国教育部大学院生教育発展センター
が日本語教育振興協会と協定書に調印し、試験の認証制度をスタートさせたことにあった
が、認証制度は高考と会考の両方であったのに対し、昨年の研究範囲は高考に留まってい
た。そこで、今年度は会考の制度や内容について高考と比較しながら調べることを中心に
していくことにした。さらに、高等教育に進学するための試験として、成人高考、高職単
独招生というものもある。これらの試験についても高考との比較を試みた。
2.会考
「会考」の正式名称は「高级中学毕业会考」つまり高等学校の卒業試験であるが、卒業
前になって初めて受ける試験ではなく、それぞれの科目を学び終えた時点で課される省(ま
たは自治区・直轄市であるが、便宜的に「省」と記す)レベルの統一試験である。統一試験
が正しく行われれば、卒業資格は客観的かつ公正なものとなり、高校卒業生の質が保証さ
れる。またすべての科目の試験なので、受験対策に走るあまり勉強が文科・理科に偏って
しまうことを防げる。試験のレベルは教学要求を満たしている学生なら必ず合格できるよ
うなものに設定された。
最初に会考が試験的に実施されたのは上海で、1985 年のことであったが、1990 年代に
なってすべての省で行われる試験となった。しかし 2000 年に入ると、会考の決定権や管
理権は省に任されるようになった。
「全国会考协作会」によると、現在、会考の学科試験の実施方式には下記の 5 パターンが
あり、さらに会考の実施自体をとりやめてしまった省もある。なお、会考には学科以外に
合格不合格で判定される考査(労働技術、物理実験、化学実験、生物実験)もある。
(1) 省レベルで学科の試験を全面的に行う従来からの方式。省の統一科目としては主要
三教科[語文(国語)、数学、外国語]に理科と社会の 6 教科[政治、物理、化学、生物、
歴史、地理]を加えた9科目。これ以外に市や県単位で実施する情報等の科目がある。
(2)「3+6」方式。国、数、英の主要三教科は必修受験科目として市または県が実施する試
験を受け、それ以外の 6 科目(江苏では文科綜合+理科綜合という科目になる)につい
ては省の統一試験問題となる。
(3) 新課程(モジュール型)の下で実施される「普通高中学生学业水平考试制度」。毎学期末
に 10 科目(上述の 9 科目に情報技術必修課程が加わる。
「基礎会考」という言い方もあ
り、高考の総得点に加えられる省もある。
(4)「反向小综合」方式。文科の学生は理科綜合を、理科の学生は文科綜合を受ける(遼寧
省のみ)。
(5) 学科試験の実施を省から市、県、または学校レベルに下げる方式。
3. 成人高考
脱産(社会人がもう一度全日制の学校に戻って勉強する)、業余(夜間及び土日)、函授
(通信教育)の三種類の学習方式の高等教育機関で学ぶために受ける入学試験。
(a)高卒者が専科に進学するため,
(b)高卒者が本科に進学するため,
(3) 専科卒業者が本
科(編入)に進学するため の三種類がある。
(b)の試験については、文科系の学生は国語、数学(文科系)、英語、歴史地理を、理科系の
学生は国語、数学(理科系)、英語、物理化学を受験する。
4.高職単独招生試験
高職(高等職業学校、専科)の募集方法の一つ。高職の募集方法としては、
(1) 統考統招(高考を受ける)
(2) 単考単招(主要三教科のみ共通試験を受け、加えて専門科目を受ける)
(3) 自主招生(その学校独自の試験を受ける)
の三種類がある。
試験科目は主要三教科+X で、三教科は省レベルの共通試験である。X は綜合専業科目
か専業基礎科目、さらに職業技能科目が二科目で、各大学(専科)がそれぞれに行う選抜
試験(自主命題)となる。
高職単独招生はいわゆる三校(中専、技校、職校)の卒業生に対してのみ行われていたが、
今では普通高校の学生も受けられる省もある。
なお、この試験の正式名称は省によって違っており、「三校生报考普通高校」「中职升高
职」
「高职班对口招生单独考试」などさまざまな名称がある。
5.各試験の比較
2∼4 の試験と高考及び日本留学試験(英語の場合はセンター試験)との比較を試みた。2
と4は省によって違うため、各省の問題が入手できることが望ましかったが、残念ながら
限られた問題しか入手できなかった。会考や成考が高考と比べて易しいことは事実である
が、会考と高職単独招生試験は省レベル(またはその下のレベル)の試験であること、また
上述のようにさまざまなタイプがあることから、難易度にばらつきがあるようである。
6.日本語教育機関における各試験の成績の利用について
高校を 7 月に卒業して日本語学校に 10 月に入学する学生の場合、出願の際に高考の成
績の提出は間に合わず、会考のみ提出してもらっている。したがって、会考の制度につい
て正しく認識することが肝要である。また、普通高校の卒業生でないため高考や会考を受
験していない学生の中に成人高考や高職単独招生試験の受験者もいるが、これらの試験も
主要三教科等の学力を測る指標の一つとなるため、制度や内容をある程度理解できれば活
用していくことも可能なのではないだろうか。