116 回スライドカンファレンス座長コメント

116 回スライドカンファレンス座長コメント
S2545
放射線治療後の MPNST。壊死や mitosis などの悪性に相当する像もあり(切片によっては
少ないのではという質問あり)。臨床病理学的所見を分かりやすく提示いただいた。
S2546
cortical tuber と subependymal nodules の像が提示された。tuberous sclerosis と cortical
dysplasia との異同などを含めて,詳細な説明があった。てんかんの病理は難しい。
S2547
meningioma との鑑別が難しいと思われたが,stat6 の免疫染色で陽性所見が確認され,SFT
と診断された(本当に髄膜腫で陽性とならないのか,個人的に少しは気になる)。
S2548
病理像から臨床像を考えて,HIV 感染症であると臨床病理学的に診断された例。p24 の陽
性所見や folliclelysis など,HIV 感染症のリンパ節病変でみられるような所見の提示があっ
た。感染対策への助言など,病院の中で病理医がなすべき役割は幅広く重要であると教え
て頂いた。
S2549
グリコーゲンを含む淡明な胞体を持つ異型細胞からなる悪性腫瘍であり、充実性領域や乳
頭状増殖を示す領域、壊死を認めたことから、high grade fetal adenocarcinoma と診断さ
れた。AFP 免疫染色では一部の腫瘍細胞が陽性に染色された。
S2550
画像所見から hepatocellular
adenoma あるいは FNH の鑑別がなされ、MRI の撮影条件から FNH が考えられた症例。
組織学的に、線維化および duct reaction を認め、免疫染色上 Glutamine synthase が陽性
に染色されたため、FNH と診断された。
S2551
Caroli 病で肝移植を受け、摘出された肝臓の拡張した胆管内に BilIN-III を認めた症例。
Caroli 病の発生機序ははっきりとしておらず、担癌状態になりうるかどうかも定かではな
い。今回の症例では胆汁鬱滞が原因と考えられた。
S2552
肝内胆管内および肝内胆管外に別々の病変を認めた症例。胆管内には IPNB(high grade)相
当の病変、胆管外には神経内分泌癌を認めた。両者には移行像があり、MANEC と診断さ
れた。
S2553
CD34/CD8/CD31 免疫染色にて血管腫様結節内の 3 種の血管が同定され、定型的な SANT
の例として提示された。本例では EBV や IgG4 の病態への関与を示唆する所見は見られな
かった。
S2554
腫瘍細胞は KIT, CD34, DOG1 陽性で GIST としての性格が明瞭に示された。一方 KIT,
PDGFRA 遺伝子変異解析や SDH 欠失の検索では有意所見は見出されなかった。なお術中
観察にて消化管漿膜との連続性を示唆する所見が指摘されているとの事である。
S2555
分化方向の明らかでない充実性領域についても周囲の高分化型領域との連続性、および
MDM2 陽性所見から脂肪肉腫の脱分化成分と判断された。投票も脱分化型脂肪肉腫とする
意見が大勢であった。
2556
副腎褐色細胞腫と膵内分泌腫瘍が提示され、他にも良性腫瘍が多発していた VHL 症例。縦
割り診療の問題点や、多科をまとめうるのは病理医であるという意見に触れ、社会的側面
も考えさせられた。
2557
一見驚くほどの核異型を呈する atypical leiomyoma の一症例。
2558
尿道に悪性黒色腫が発生しうる事を示していただいた。メラニン色素が少ない点にも考察
がなされていた。
2559
演者診断は、Desmoplastic neurotropic malignant melanoma であった。HE 所見からの
鑑別疾患、
免疫染色による検討、
そして確定という診断手順が示され、模範的な presentation
であった。診断投票には Neurogenic tumor も多かったが、演者の提示した所見(特に
melanoma in situ の存在)から、除外可能と判断された。
2560
演者診断は、Trichilemmoma, Suspicious of Cowden syndrome であった。PTEN 遺伝子の
検索はなされていなかったが、臨床的には Cowden syndrome が強く疑われ、それに関連し
た顔面皮膚病変(Trichilemmoma)と判断された。基底膜部の肥厚などの特徴的な所見は
はっきりせず、Verruca vulgaris などとの鑑別を要するものの、病変の全体構築や構成細胞
は、Trichilemmoma として矛盾しないと考えられた。
2561
演者診断は、Lymphatic venous malformation であったが、演者は腫瘍(特に Kaposiform
hemangioendothelioma)を考える所見も示し、また分類上の問題点についても言及した。
両者の厳密な鑑別が困難な病変であるため、後者の可能性についても考慮し、注意深い経
過観察が望まれる。