副作用には個人差 抗がん剤治療の目的の一つはが んの完治です。手術後の補助化学 療法で、見えないがんも﹁たたい て ﹂ 再 発 も 防 ぎ ま す。 も う 一 つ 調整することが大切です。 大腸がんの場合、患者さん全体 %にK︱RASという遺 胞膜の外側にはさまざまな分子が 制する作用があります。がんの細 を持つ分子を狙ってその機能を抑 分子標的型の抗がん剤は﹁分子 標的薬﹂とも呼ばれ、がんの特徴 には詳しい検査が必要です。 このため、分子標的薬の使用の前 拮 抗 薬 ︶ の 効 果 が 得 ら れ ま せ ん。 られています。 R抗体︵上皮細胞増殖因子受容体 の刺激が核に伝わるので抗EGF 伝子の異常があり、別の場所から 足皮膚症候群﹂を起こすことが知 ができて皮膚がむけてしまう﹁手 足 が 赤 く は れ、 水 疱︵ す い ほ う ︶ ﹁レゴラフェニブ﹂は複数の 穴をふさぐ効果がありますが、手 付いており、特定の刺激を受ける が作られるのを阻害し ﹁兵糧攻め﹂ く 少 な い ﹂ と さ れ て い ま し た が、 ﹁ 血 管 新 生 阻 害 薬︵ 抗 V E G F 抗 体 ︶﹂ は が ん に 栄 養 を 送 る 血 管 実際は、多彩な副作用が発生しま ∼ と、細胞内の核に信号を送り、分 にするほか、がんが無秩序に作っ す。副作用を放置すると、QOL の 裂を促します。分子はがんの種類 た血管を整理して抗がん剤を届き 分子標的薬も副作用 ことで増殖を防ぎます。消化器系 穴﹂のような役 やすくします。副作用として高血 ︵ 生 活 の 質 ︶ を 著 し く 低 下 さ せ、 分子標的薬の登場当初は﹁がん を狙い撃ちするので、副作用がご 予防を積極サポート が ん で は﹁ T S ︱ 1﹂ ﹁シスプラ に刺激を送る﹁ タ ビ ン ﹂ な ど が 使 わ れ て い ま す。 によりある程度決まっており、核 チン﹂ ﹁パクリタキセル﹂ ﹁ゲムシ 目 を し て い ま す。 分 子 標 的 薬 は がんは成長のスピードが速いこ とから、細胞分裂の仕組みに働き が日常生活や人生を有意義に過ご まり、仕事や趣味など、患者さん いです。近年では、薬の効果が高 しても、生存期間を延ばすのが狙 代表的なのが﹁脱毛﹂と﹁骨髄 抑制﹂です。骨髄は﹁血液を作る こります。 繰り返しているので、副作用が起 れていますが、正常細胞も分裂を かける抗がん剤が効きやすいとさ ています。 激が伝わったりすることも分かっ をふさいでも別の場所から核に刺 り、一部の遺伝子異常により 者さんによっては 穴 穴がなかった 胞の増殖を防ぎます。しかし、患 るのを先回りしてふさぎ、がん細 ﹂が入 と呼ばれる す。 いほど痛んだりする場合がありま の周りの肉が盛り上がって歩けな の乾燥や色素沈着が起きたり、爪 び﹂のような皮疹が出た後、皮膚 の 患 者 さ ん に 発 生 し ま す。﹁ に き 創︵ざそう︶様皮疹﹂がほとんど ますが、特徴的な副作用として﹁挫 同様に、核への刺激伝達を阻害し ﹁増殖因子﹂ が発生します。抗EGFR抗体と ています。 んに伝えたりして、サポートをし 用品の使用法など予防策を患者さ 止め薬を処方したり、スキンケア 作用について十分説明し、かゆみ に、事前に主治医と皮膚科医が副 し、抗がん剤の効果を高めるため は、副作用を上手にコントロール いことになります。当センターで 抗がん剤治療を中止せざるを得な せ る よ う に、 基 本 的 に は 外 来 を 工場﹂です。抗がん剤によりこの 圧や出血、たんぱく尿や血栓など ベースにした治療が主流です。 働きが抑えられると免疫をつかさ 穴に がん治療の研究が進み、抗がん 剤治療もがんの種類や、患者さん どる白血球、 出血を止める血小板、 この の状態に合わせ、薬の組み合わせ 酸素を運ぶ赤血球が減り、患者さ 手術が不可 が多様化していますが、抗がん剤 んは、 感染や出血を起こしやすく、 抗がん剤の基礎知識 は仕組みにより二つに大別されま 貧血状態にもなります。 再発したり 能だったり、 す。 こうした副作用の発生は個人差 があるので、普段から自分の体調 ∼がん医療に臨むための口の管理∼ 放射線治療では口の周りに照射を の細菌や汚れを洗い流すことがで だけでも、刺激を避けながら口内 す。 造 血 幹 細 胞 移 植 で は 約 8 割、 食塩水﹂などを使って口をゆすぐ こる﹁涙目﹂が増加しています。 挿 入 し 涙 の 通 り 道 を 確 保 し ま す。 OL︵生活の質︶が低下したりし レ タ ン 製 の﹁ 涙 管 チ ュ ー ブ ﹂ を ス コ ー プ で 確 認 し た 後、 ポ リ ウ 進行した場合は、涙道ファイバー 涙を拭くことがストレスになりQ 困難になったり、頻︵ひん︶繁に えづらくなり自動車などの運転が ンターでは地域の歯科医との連携 %が当センター を 積 極 的 に 進 め て い ま す。 現 在、 県内の歯科医の の﹁医科歯科連携登録医﹂です。 が可能な場合があります。 で、ほかに転移がなければ局所治療 抗がん剤でがんを小さくした時点 が ん 剤 治 療 が 適 し て い る で し ょ う。 な治療ではなく、全体を治療する抗 て、外科手術や放射線などの局所的 可能性が高いと考えます。したがっ て お り、 す ぐ に 他 臓 器 に 転 移 す る 節以外のリンパ管にもがんが残っ 年という早期の再発なので、リンパ て全身につながっています。術後1 Q 1年前に卵巣がんの手術をし ましたが、リンパ節に転移が見つ かり、再度抗がん剤治療を進めら れました。前回副作用がつらかっ たのでほかの治療法は選択できま せんか。 安 井 リ ン パ 節 は リ ン パ 管 を 通 し 事前や当日寄せられた質問を中 心に質疑応答が行われました。紙 面の都合により、本講座の内容に 即した質問事項をまとめました。 質疑応答 タ ウ ン ミ ー テ ィ ン グ と考えられます。 的な取り組みに広がりました。県 先ごろ、この連携の有益性が認 められ、厚労省の支援により全国 受けた場合に限りますが、ほぼ全 とかく受け身になりがちながん 治療ですが、口腔ケアは患者さん 積極的な口腔ケアを 員 に 口 内 炎 が で き て し ま い ま す。 きます。 内のほかの病院でも同様の連携体 また、抗がん剤治療で免疫力が低 抗がん剤の治療中は唾液の分泌 が減り、ドライマウスになりがち 当 セ ン タ ー の 歯 科 口 腔 外 科 は、 自身が積極的に取り組めるセルフ 口内炎などのがん治療で起こる口 ケア方法です。痛みがひどく、歯 下している患者さんの口内炎の傷 ですが、保湿成分入りのジェルや 制が整えられてきています。今後 口から細菌が入り込むと、敗血症 ス プ レ ー、 マ ウ ス コ ン デ ィ シ ョ 磨きが難しい場合は、500㍉㍑ す。 という全身の感染症になるリスク ナーを使うなどして、口の中の渇 周囲の副作用に対応しています。 ﹁ T S ︱ 1﹂ は 涙 目 以 外 に 角 膜 障害も引き起こし、視力が低下し が4倍に高まるという報告もあり きをケアすることが可能です。当 は、日本全体でがん治療時の口腔 ますが、治療法はなく、重症の場 ます。 腔ケア用品をメーカーと共同開発 のペットボトルに入れた飲料水に 合、抗がん剤治療を中断し治癒を このように口腔管理がおろそか になると、全身の合併症につなが し販売しています。 ケアの重要性がさらに高まるもの ヒアルロン酸の目薬は抗がん剤 による角膜障害には逆効果になる り、がん治療が中断することもあ 4・5 ㌘ の 食 塩 を 溶 か し た﹁ 生 理 場合は、早期に治療しないと症状 ります。また、口内炎の痛みで食 がん治療はこの 年間で入院期 間が半減し、通院治療が増えてい 一般的な抗がん剤治療を受ける と約4割の方が口内炎を発症しま が悪化し、重症になると治療が困 待ちます。 難になる場 事が取れなくなれば、入院や点滴 ます。通院治療時の口腔に関する が閉塞する患者さんが約9%いま すが、チューブ摘出後に再び涙管 %はチューブの挿入で改善しま がん治療と口腔ケア ﹁ 以前から使われているのが﹁殺 細胞性抗がん剤﹂です。がん細胞 の変化を記録し、主治医と相談し %に症 合もありま などに余分な医療費が必要です。 抗がん剤の副作用による涙目は 涙に含まれた薬の成分が涙道内の ます。抗がん剤治療中に症状が出 センターはがん患者さん向けの口 す。涙目に 細胞に障害を起こすことが原因と チューブは他人が気付かないほど たら、眼科での早期診断と早期治 副作用を軽減させるために、当セ がDNAを合成したり、細胞分裂 ながら、薬の服用スケジュールを 4カ月で、患者さんの約 状が出てきます。 抗がん剤の成分を含む涙を洗い流 狭くなった り、詰まっ 考えられています。治療効果の高 小型で痛みもなく、抗がん剤治療 なると、見 さで注目されている経口抗がん剤 療を心掛けましょう。 たりして起 30 したりするタイミングを妨害する が延命です。 1997 年滋賀医大医学部卒。同 年同医大附属病院第二内科(消化 器・血液内科)入局。2004 年か ら静岡がんセンター消化器内科レ ジデント。07 年 4 月より同医長。 10 年同部長、13 年から副院長、 治験管理室長併任。日本内科学会、 日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学 会、日本胃癌学会所属。専門分野 は消化器がんにおける化学療法。 軽症の場合、防腐剤が入ってい ので、基本的には使用しません。 な い ド ラ イ ア イ 用 の 目 薬 を 使 い、 涙目は加齢によっても起こりま すが、抗がん剤治療を受けている ぶたのはれや結膜炎、まれに網膜 涙道が特に狭くなるほど症状が して対処します。 かし、最近、涙の排せつ路である 障害などが知られていました。し 以前から目に関する抗がん剤の 副作用として、まつ毛の異常、ま 涙目を看過しない ~最先端の治療現場から~ Vol.6 が終了すれば摘出します。症状の 35 よくわかるがん医療 第11弾 抗がん剤による眼の副作用 ﹁涙道﹂が 85 静岡がんセンター ﹁ T S ︱ 1﹂ を 服 用 す る と、 3 ∼ 15 25 静岡県立静岡がんセンター公開講座 第11弾「よくわかるがん 医療~最先端の治療現場から~」 ( 静岡新聞社・静岡放送主催、県 立静岡がんセンター、三島市、長泉町、裾野市、函南町、清水町、三 島市民文化会館共催、スルガ銀行特別協賛)の第6回が1月24日、 三島市民文化会館で開かれ、安井博史副院長兼消化器内科部長 が「抗がん剤治療の基礎知識」、柏木広哉眼科部長が「抗がん剤に よる眼の副作用」、百合草健圭志歯科口腔外科部長が「がん治療と 口腔ケア~がん医療に臨むための口の管理~」をテーマに講演し ました。その概要をお伝えします。 〈企画・制作/静岡新聞社営業局〉 静岡 県立 40 2002 年北海道大歯学部 卒。06 年同大学院歯科研 究 科 修 了。 同 年 静 岡 が ん センターレジデント、09 年同歯科口腔外科副医長、 14 年より現職。厚労省委 託事業がん診療医科歯科連 携推進協議会運営委員、日 本臨床腫瘍学会骨転移診療 ガイドライン委員。 1989 年北里大医学部卒。 同大学院、大学病院、英国 で 眼 腫 瘍 学 を 学 び、2002 年から現職。日本眼科学会 専門医、日本神経眼科学会 評議員など。専門は眼科一 般、眼腫瘍、眼病理、涙道、 神経眼科。抗がん剤の眼副 作用対策にも力を入れる日 本で数少ない眼腫瘍専門医。 公 開 講 座
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