こどもの虫垂炎(いわゆる盲腸) について

静岡県立こども病院小児外科
2015年3月作成
病気の解説
こどもの虫垂炎(いわゆる盲腸)について
どんな病気??
虫垂が炎症を起こす病気で
年長児~学童期、成年期以降もよく見られる疾患です。
原因としてストレス、便秘など諸説ありますが、
科学的にはっきりとした原因は証明されていません。
どんな症状があるの??
虫垂
盲腸
まずはみぞおちあたりの不快感、吐き気が
出現しますが、無い方もいます。
そして、徐々に右下腹部が痛くなってきます。
状態が重症化するとおなか全体が痛くなったり
高熱がでたりします。
歩いたりおなかを揺さぶったりしたときにおなかに響く
場合は重症の可能性があります。(腹膜炎)
初期症状は胃腸炎と似ているため、
発症初期に診断することが難しい場合があります。
胃腸炎や便秘と診断された場合でも症状が続く場合には
もう一度病院を受診するようにしましょう。
特にこどもの虫垂炎では重症化、腹膜炎になる
スピードが大人よりも少し早いとも言われています。
どの病院に行けばいいの??
15歳未満の場合はまずは小児科を受診してください。
そこで虫垂炎が疑われればこども病院など、こどもの
外科疾患に対応できる病院を紹介してもらってください。
病院ではどんなことをするの??
まずは診断を確定します。
問診、診察、採血を行い、
超音波検査やCT検査で診断を確定します。
通常、虫垂炎と診断されれば入院加療が必要です。
診断が確定すれば治療方針を立てます。
治療は??
抗生物質による治療と手術による治療があります。
重症度やそれぞれの治療方法の利点、欠点を考慮し
ながら担当医と患者さんの間で治療方針を決定します。
治療中でも、治療方法を変更することは可能です。
医師の説明をしっかり聞いたうえで最終的には
ご自身もしくは保護者の方が判断してください。
小児科
紹介状
こども病院など
診断
入院
具体的な治療方法について
抗生物質による治療
入院し食事を制限しながら抗生物質の点滴を
行います。
軽症なら2~3日程度で退院できる場合もあり
ますが、重症になるにつれ入院期間は長くなり
ます。
また、抗生物質治療が効果不十分であった場
合、治療途中でも手術治療を勧められることが
あります。
抗生物質で治癒した場合、虫垂炎の再発を起
こす可能性があると言われています。
(20~30%)
手術治療
入院当日もしくは翌日に手術を行います。
開腹による手術と腹腔鏡を用いた手術があり
ますが、施設により手術方法に違いがあります。
また、重症度に応じて、手術創が大きくなった
り腹腔鏡手術のポートの数が増加する場合が
あります。
術後にドレーンと呼ばれる腹腔内チューブが留
置されることもあります。
入院期間は軽症の場合は3日~4日、重症にな
るにつれ長くなります。
抗生剤
手術
数日~数週間
退院
手術の様子
八光メディカルホームページより
写真提供 京都 西陣病院
手術器具 STORZホームページより
虫垂は切除しても問題ないの??
最近、免疫機能との関連が一部で言われてい
ますが、現在ではヒトにおける虫垂切除の問題
点は指摘されてはいません。
進化の過程で遺残した、無機能の臓器と考え
られています。
静岡県立こども病院での手術治療
基本的にはなるべく創が目立たないような
臍を用いた単孔式腹腔鏡手術を行っています。
臍の手術創は肉眼的にほとんどわからなく
なります。
また、開腹手術に比べ回復も早く、
ストレスの軽減、早期の社会復帰という点でも
よい影響であると考えています。
当院では年間30例程度と多数の
小児腹腔鏡下虫垂切除術を行っています。
代表的な合併症である術後の遺残膿瘍の
発症率は重症例で10~20%と,開腹手術や
他施設との比較においても遜色ない
良好な成績となっています。
術後の臍創部 当院症例