No. 1

基礎物理学 Ia
– 演習問題の模範回答 –
数学的な準備
問1
オイラーの公式、eix = cos x + i sin x を用い、次の関係が成り立つことを示せ。
1. cos 3x + i sin 3x = (cos x + i sin x)3
解答例:
e3ix = (eix )3 が成り立つ。この両辺でオイラーの公式が成り立つことを用いれば、上の
結果が得られる。
2. sin 2x = 2 sin x cos x, cos 2x = cos2 x − sin2 x
解答例:
e2ix = eix eix の両辺にオイラーの公式を適用し、
cos 2x + i sin 2x = (cos x + i sin x)2 = (cos2 x − sin2 x) + 2i sin x cos x
が成り立つ。この両辺の実部と虚部を比較して、問いの関係が成り立つことがわかる。
問2
次の複素数 z を、2 つの実数 r, θ を用いて reiθ の形に表せ。
√
z = ( 3 + i)2 ,
z = 1 + i,
√
z = (1 − i 3)/2
解答例:
√
1
eiπ/4 = cos(π/4) + i sin(π/4) = √ (1 + i), ∴ 1 + i = 2eiπ/4
2
√
√
1
eiπ/6 = cos(π/6) + i sin(π/6) = ( 3 + i), ∴ ( 3 + i)2 = (2eiπ/6 )2 = 4eπi/3
2
√
√
1
e−iπ/3 = (1 − i 3), cos(−π/3) = 1/2, sin(−π/3) = − 3/2 が成り立つため
2
問3
複素数 z = 3 + 2i に対し、以下の複素数を複素平面上に図示せよ。
z,
z∗,
iz,
−z,
−z ∗
解答例: これらの複素数の実部と虚部は以下のように表される (図は省略)。
z ∗ = 3 − 2i,
問4
iz = −2 + 3i,
−z = −3 − 2i,
−z ∗ = −3 + 2i
sin x と cos x を、2 つの複素数 eix , e−ix を用いて表せ。
解答例:
cos x =
1 ix
(e + e−ix ),
2
1
sin x =
1 ix
(e − e−ix ),
2i
問5
多変数関数の偏微分についての以下の問いに答えよ (問題文のすぐ下に解答例を示す)。
1. 関数 f (x, y) = x3 y について、x と y に関する偏微分係数を求めよ。
∂f
= 3x2 y,
∂x
∂f
= x3
∂y
2. f (x, y) = sin(xy) について、変数 x, y に関して偏微分した結果を示せ。
∂f
= y cos(xy),
∂x
3. 関数 x2 e−x
2
−y 2
∂f
= y cos(xy)
∂y
を、x に関して偏微分した結果を示せ。
2
2
∂f
= (2x − 2x3 )e−x −y ,
∂x
4. 関数 f (x, y) = e−a(x
2
+y 2 )
2
2
∂f
= −2x2 ye−x −y
∂y
sin(x + 2y) について、x と y に関する偏微分係数を求めよ。
ただし、a は定数であるとする。
2
2
∂f
= [−2ax sin(x + 2y) + cos(x + 2y)]e−a(x +y ) ,
∂x
2
2
∂f
= [−2ay sin(x + 2y) + 2 cos(x + 2y)]e−a(x +y )
∂y
√
5. 関数 f (x, y, z) = 1/ x2 + y 2 + z 2 について、x、y 、および z に関する偏微分係数を
求めよ。また、この関数についての全微分 df を求めよ。
∂f (x, y, z)
y
,
=− 2
∂y
(x + y 2 + z 2 )3/2
1
df = − 2
(xdx + ydy + xdz)
2
(x + y + z 2 )3/2
∂f (x, y, z)
x
,
=− 2
∂x
(x + y 2 + z 2 )3/2
∂f (x, y, z)
z
=− 2
,
2
∂z
(x + y + z 2 )3/2
平均速度と瞬間速度
問3
時刻 t = 0 のときに座標原点 x = 0 で静止していた物体の速度が次の時間変化を示すとき、
時刻 t における座標 x(t) の値を求めよ。
1) v(t) = A sin(ωt) cos(2ωt)
解答例: v(t) = A[sin(3ωt) − sin(ωt)]/2 の式が成り立つので、x(t) は次の積分で求
まる。
A
x(t) =
2
∫
t
dt′ [sin(3ωt′ ) − sin(ωt′ )] = −
0
A
[cos(3ωt) − 3 cos(ωt)]
6ω
2) v(t) = Bt/(t + t0 ), (t0 > 0): 解答例を以下に示す
)
∫ t
∫ t(
t′
t0
′
x(t) = B
dt = B
1− ′
dt′ = B[t − t0 log(1 + t/t0 )]
′+t
t
t
+
t
0
0
0
0
3) v(t) = (v0 t/τ ) e−t/τ : 変数変換 s = t/τ を用いた解答例を次式に示す。
∫ t/τ
[
]t/τ
v0 t −t/τ
x(t) = v0
se−s ds = −v0 (1 + s)e−s 0 = v0 (1 − e−t/τ ) −
e
τ
0
2
力と運動
問1
(放物運動) 水平面上の直線を x 軸とし、それに対して鉛直上向きに y 軸を定義する。時刻
t = 0 の時、質量 m の物体を速さ v0 で、x 軸の正の向きに地面との成す角 θ の方向に投げ
上げた。空気による抵抗が無視できるとして、この物体の座標ベクトル、速度ベクトル、及び
加速度ベクトルを、それぞれ r(t) = (x(t), y(t))、v(t) = (vx (t), vy (t))、a(t) = (ax (t), ay (t))
と置いたとき、物体の運動についての以下の問いに答えよ。
1. この物体に作用する力のベクトル F の各成分 Fx , Fy の値を示せ。
解答例: 鉛直下向き方向についてのみ重力の影響を受けるので、Fx = 0, Fy = −mg が
成り立つ。
2. 座標成分 x(t) 及び y(t) と、これらの時間 t についての 1 階、および 2 階の導関数の
間に成り立つ微分方程式を示せ。
解答例: 速度と加速度についての定義より、vx = dx/dt, vy = dy/dt, ax = dvx /dt,
ay = dvy /dt が成り立つ。また、ニュートンの運動の法則より、加速度についての次の
2 つの式が成り立つ。
m
d2 x
= 0,
dt2
m
d2 y
= −mg
dt2
3. これらの解のいずれもが、次のように表されることを示せ。
x(t) = x0 + x1 t + x2 t2 ,
y(t) = y0 + y1 t + y2 t2
上の解に現れる係数 xi , yi (i = 0 ∼ 2) の値を求めよ。
解答例: x2 = 0, y2 = −g/2 と置けば、上のどちらの解も微分方程式を満たすことがわ
かる。また、t = 0 の時の座標 x(0) = 0, y(0) = 0 から x0 = 0, y0 = 0 が成り立ち、初
速度 vx (0) = v0 cos θ, vy (0) = v0 sin θ より、x1 = v0 cos θ, y1 = v0 sin θ が成り立つ。
問2
空間のある点にフックの法則にしたがうバネの一方の端を固定し、もう一方の端に質量 m
の物体を吊り下げたときの物体の運動について以下の各問に答えよ。 ただし、バネ定数を
k 、重力加速度を g とする。物体は鉛直方向にのみ運動し、また鉛直下向きを x 軸の正の方
向とする。物体を取り付けるバネの自然長の端の位置を x = 0 とおく。周囲の気体による
抵抗は無視してよい。
1. 物体をバネにぶら下げたとき、物体にどのような力が働くかについて説明し、それらの
力を座標 x の関数として表せ。
解答例: バネによる復元力 −kx と、重力 mg を受ける。
2. 物体が静止しているときの力の釣り合いの条件から、物体の静止位置の座標 x0 を求
めよ。
解答例: 2つの力の釣り合いの条件、−kx + mg = 0 から、x0 = mg/k が得られる。
3
3. 静止位置から物体を下方に引っ張り、静かに放した後の物体の運動について、速度 v と
加速度 a を座標 x を用いて表せ。さらにニュートンの運動の法則を利用し、物体の座
標の時間変化を求めるための微分方程式を求めよ。
解答例: 速度と加速度、および運動の微分方程式は以下のように表される。
v=
dx
,
dt
a=
d2 x
,
dt2
m
d2 x
= −kx + mg
dt2
4. 座標の時間変化 x(t) = x0 + A cos(ωt + α) を微分方程式に代入し、ω の値を求めよ。
A, α は定数である。
解答例: ẍ(t) = −ω 2 x(t) が成り立つ。これを微分方程式に代入すると次の式が得ら
れる。
−mAω 2 cos(ωt + α) = −k[x0 + A cos(ωt + α)] + mg = −kA cos(ωt + α)
この式が成り立つための条件から、ω =
問3
√
k/m が得られる。
水平面上の x 方向にだけ運動する質量 m の物体が、原点からの距離に比例する力 −kx を
受けて運動する場合について、以下の問いに答えよ。ただし、摩擦はないものとする。
1. ニュートンの運動の法則より、物体の運動を記述する微分方程式を求めよ。
解答例: ma = F = −kx が成り立つので、次の方程式が成り立つ。
m
d2 x
= −kx
dx2
2. この物体の座標の時間依存性が, x(t) = A sin ωt, と表されるとしたとき、運動方程式が
成り立つために必要な角周波数 ω を求めよ。
解答例: x(t) = A sin ωt と置いたとき、次の式が成り立つ。
d2 x
= −Aω 2 sin ωt = −ω 2 x
dx2
√
したがって、mω 2 = k 、つまり ω = k/m が求まる。
3. 運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和で定義される、力学的エネルギー E と、
振幅 A の関係を求めよ。
解答例: 速度が、v(t) = dx/dt = −Aω cos ωt と表されることから、力学的エネルギー
E と A との次の関係が得られる。ただし、上の問いの ω 2 = k/m の関係を用いた。
E=
1
1
1
1
mv 2 (t) + kx2 (t) = A2 (mω 2 cos2 ωt + k sin2 ωt) = kA2
2
2
2
2
問4
角周波数が ω で振動する質量 m の振動子が、速度 v に比例する抵抗力 mγv を受けて運
動する場合を考える。静止位置を原点とする振動子の座標を x としたとき、以下の問に答
えよ。
4
1. この振動子の従うニュートンの運動方程式を用い、座標 x の時間変 q 化についての微
分方程式を示せ。
解答例: 振動子に作用する力が、mω 2 と抵抗力 mγv, (γ > 0) であり、加速度を a と
すればニュートンの運動方程式、ma = −mω 2 x − 2mγv が成り立つ。したがって、次
の方程式が成り立つ。
d2 x
dx
+ 2γ
+ ω2 x = 0
dt2
dt
2. ω > γ の不等式が成り立つ場合、次の形の解が前問の微分方程式を満たすことを示せ。
x(t) = x0 e−γt cos(νt + ϕ)
その場合、ν の値はどのように表されるかについても説明せよ。
解答例: 上の x(t) の t についての 1 階と 2 階の導関数が以下のように求まる。
dx
= −γx − νx0 e−γt sin(νt + ϕ),
dt
(
)
d2 x
dx
dx
dx
−γt
2
+ γνx0 e
sin(νt + ϕ) − ν x = −γ
+ γ −γx −
= −γ
− ν2x
dt2
dt
dt
dt
dx
= −2γ
− (γ 2 + ν 2 )x
dt
したがって、ω 2 = γ 2 + ν 2 が成り立つときに、方程式の解となる。ν が実数の値にな
るために、ω > γ の条件が必要である。
3. ω = γ が成り立つ場合、a と b を定数とする次の解が微分方程式を満たすことを示せ。
x(t) = ae−γt + bte−γt
解答例: 以下に示すように速度と加速度を求めて代入すると、方程式が満たされる。
d2 x
dx
= −γx + be−γt ,
= −γ(−γx + 2be−γt )
dt
dt2
d2 x
dx
∴ 2 + 2γ
+ γ 2 x = (2γ 2 − 2γ 2 )x − (2γb − 2γb)e−γt = 0
dt
dt
問5
ポテンシャルエネルギー U (x, y, z) が、空間座標の各点に対して定義されているとき、力 F
の各成分 (Fx , Fy , Fz ) とポテンシャル U (x, y, z) との関係を表す式を示せ。
解答例: ポテンシャルと力との関係は、勾配の操作を用いた次の式で表される。
Fx = −
問6
∂U
∂U
∂U
, Fy = −
, Fz = −
∂x
∂y
∂z
3 次元空間において、ポテンシャルエネルギーが次の関数 V (x, y, z) で与えられていると
き、力のベクトル F = (Fx , Fy , Fz ) を求めよ。
1. V (x, y, z) = mgz の場合
解答例: Fx = Fy = 0,
Fz = −
∂V
= −mg
∂z
5
√
2. V (x, y, z) = g/ x2 + y 2 + z 2 , (g は定数)
解答例: (y, z についても同様)
Fx = −
∂
1
∂V
g
√
= −g
=
∂x
∂x x2 + y 2 + z 2
2(x2 + y 2 + z 2 )3/2
1 2
kx
2
∂V
解答例: Fx = −
= −kx, Fy = Fz = 0
∂x
3. V (x, y, z) =
1 次元方向だけに運動する物体に作用する力 F (x) とポテンシャル (位置の) エネルギー
V (x) との関係について、以下の問いに答えよ。
1. V (x) と F (x) の間には、数学的にどのような関係が成り立つか答えよ。
dV (x)
解答例: F (x) = −
が成り立つ
dx
2. ポテンシャルエネルギーが V (x) = v0 (b/x2 − 2/x) で与えられているとき、上の問い
の結果を利用して力 F (x) を x の関数として求めよ。ただし、v0 , b は定数である。力
がゼロとなる点の座標 x0 を求め、また v0 > 0 の場合のポテンシャルのグラフを余白
に略図を用いて示せ。
解答例: 力 F (x) は以下の式で与えられる。
dV (x)
F (x) = −
= 2v0
dx
(
b
1
− 2
3
x
x
)
2v0
= 2
b
[( )3 ( )2 ]
b
b
−
x
x
F (x) = 0 の条件から、x0 = b が求まる。ポテンシャルのグラフを下図に示す。
0.5
0.0
b V(x)/v0
問7
-0.5
-1.0
-1.5
0.0
0.5
1.0
x/b
6
1.5
2.0