松下幸之助(まつしたこうのすけ)氏は、1894年、和歌山県に生まれました。家庭の貧窮により、 9 歳で小学校を中退し、親元を離れて大阪の火鉢商店に丁稚奉公に出ました。1 9 1 0 年、大阪電灯に内 線見習工員として入社するも、かねてより考案していたソケットの改良に専念するために独立を決心 し、1 9 1 8 年には松下電気器具製作所(現パナソニック株式会社)を設立しました。その後、「2 灯用 差込みプラグ(二股ソケット)」「自転車用砲弾型電池式ランプ」など画期的な製品を生み出し、そ の名は世界中に広がりました。実践に基づく独自の経営哲学を説き、現在でも「経営の神様」と称さ れています(1989年逝去)。 冒頭の言葉は、 「ビジネスにおいては、その時々の状況に応じて、当たり前のことをしっかりと 行うことが重要である」 ということを表しています。 あるとき、松下氏は、新聞記者から事業の成功の秘訣について尋ねられました。その際に答えた のが、この「雨が降れば傘をさす」という言葉です。 人間は誰でも、雨が降ってくれば傘をさし、寒くなれば厚着をするものです。こうした当たり前 のことを、松下氏は「天地自然の法則」と呼んでいます。 これをビジネスに当てはめると、「仕入れた(もしくは製造した)商品に適正な利益を乗せて販 売し、その代金を顧客から回収する」ということになります。しかし、ことビジネスとなると、こ の当たり前のことが行われていないことがしばしばみられます。 例えば、「売り掛けで商品を販売したものの、顧客がなかなか代金を支払わない」といった場合、 「『代金の支払いを督促すると相手の機嫌を損ねてしまい、今後の取引によくない影響を及ぼすの ではないか』と考えて支払いの督促をしなかった」「他社との競争に勝つために無理な値下げをし た結果、企業としての体力を著しく消耗してしまった」といったケースは少なくありません。 こうしたことに対し、松下氏は、「自身がビジネスに対して強い信念を持っていれば、常に当た り前のことを行うことができる」と述べています。 一般的に、顧客に商品を買ってもらう企業は、顧客よりも弱い立場にあると考えられがちです。 だからこそ、先に述べたように代金の督促をためらったり、顧客が他社に流れないように無理な値 引きを行ったりします。 しかし、自身がビジネスに対して強い信念があれば、「自社の商品やサービスを買うことによっ て、顧客にはこのようなメリットがある」ということを、顧客に対して自信を持って説得すること ができます。つまり、ビジネスに確固たる信念があれば、顧客と対等な立場で、そして他社の動向 を過度に気にすることなく、当たり前のことを行うことができます。 揺るぎない信念に基づき、当たり前のことをきちんと行っていくことこそが、大きな成功につな がるのです。 http://jim.business-town.jp/
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