【正多面体が5つしかないことの証明】(高1レベル以上) 正多面体(プラトンの立体)とは ・すべての面が同一の正多角形である ・すべての頂点において接する面の数が等しい 以上の条件をともに満たす多面体である。 実際にそのような多面体を考えると,以下の5つしか存在しない。 和名 英語名 構成面 頂点の数 辺の数 正四面体 The tetrahedron 正三角形 4 6 正六面体(立方体) The hexahedron 正方形 8 12 正八面体 The octahedron 正三角形 6 12 正十二面体 The dodecahedron 正五角形 20 30 正二十面体 The icosahedron 正三角形 12 30 この5つ以外には存在しないことを証明しよう。 多面体では一般的に次のことがいえる。 (1) 1 つの頂点に集まる面の数は 3 以上である (2) 1 つの頂点のまわりの角の大きさの和は 360◦ より小さい また,正 n 角形において,内角の和が (n − 2) × 180◦ であることから, 1 つの内角は n−2 × 180◦ n これらを利用すると,次の証明ができる。 証明1)正 n 角形が 1 つの頂点に k 個集まっているとすると,n, k はともに 3 以上の整数である。 µ また, ¶ n−2 × 180 × k < 360 が成り立つから, n k(n − 2) < 2n k(n − 2) − 2n < 0 k(n − 2) − 2(n − 2) < 4 (n − 2)(k − 2) < 4 ここで, n ≧ 3 かつ k ≧ 3 より, n − 2 ≧ 1 かつ k − 2 ≧ 1 n, k はともに整数だから, (n − 2, k − 2) = (1, 1), (2, 1), (1, 2), (3, 1), (1, 3) となり, 2 数 n, k の組は, (n, k) = (3, 3), (4, 3), (3, 4), (5, 3), (3, 5) の 5 組である。¥ これらは,それぞれ正四面体,正六面体,正八面体,正十二面体,正二十面体を表している。 1 また,次の定理を利用した証明も可能である。 【オイラーの多面体定理】 多面体において,頂点の数を v ,辺の数を e,面の数を f とすると, v−e+f =2 が成り立つ。ただし,穴の開いていない多面体に限る。 さらに,正 n 角形が 1 つの頂点に k 個集まっているとすると, ・各面に n 個の頂点があり,面の数が f であるから,合計で nf 個の頂点が考えられるが, nf となる。 k ・各面に n 個の辺があり,面の数が f であるから,合計で nf 個の辺が考えられるが, 1 つの頂点を k 個の面で共有するから,頂点の数は v = 1 つの辺を 2 つの面で共有するから,辺の数は e = nf となる。 2 これらを用いて証明を行う。 証明2) 多面体の頂点の数を v ,辺の数を e,面の数を f とし,1 つの頂点に正 n 角形が k 個 集まっているとする。 オイラーの多面体定理より v= v−e+f =2 nf nf , e= が成り立つから,上の式に代入すると k 2 nf nf − +f =2 k 2 n n 2 − +1= k 2 f 2n − nk + 2k = ここで,− 4k f nk − 2k − 2n = − 4k f k(n − 2) − 2n = − 4k f 4k < 0 より f · · · · · · (∗) k(n − 2) − 2n < 0 まだ証明の途中であるが,あとは証明1のように処理をすればよい。 ※オイラーの多面体定理を用いたことの利点は大きい。それは,求めた (n, k) の値から v, e, f の 値を直に計算できることである。 2 (∗) より k(n − 2) − 2(n − 2) − 4 = − 4k f (n − 2)(k − 2) − 4 = − 4k f 4 − (n − 2)(k − 2) = したがって v= f= 4k f 4k 4 − (n − 2)(k − 2) nf nf , e= より k 2 v= 4k n 4n × = 4 − (n − 2)(k − 2) k 4 − (n − 2)(k − 2) e= 4k n 2nk × = 4 − (n − 2)(k − 2) 2 4 − (n − 2)(k − 2) これを用いると,条件を満たす多面体は (n, k, v, e, f ) = (3, 3, 4, 6, 4), · · · · · · 正四面体 (4, 3, 8, 12, 6), · · · · · · 正六面体 (3, 4, 6, 12, 8), · · · · · · 正八面体 (5, 3, 20, 30, 12), · · · · · · 正十二面体 (3, 5, 12, 30, 20) · · · · · · 正二十面体 確かに,この5つ以外には存在しない。(本当に存在するかどうかは示されていないが……。) 完 3
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