53 化膿性左膝関節炎による感染性心内膜炎の疣贅が脾 塞を来した一例 ◎角矢 武広 1)、吉本 裕香 1)、牧 亜祐美 1)、椎原 百合香 1)、鵜飼 聡子 1)、伊東 佳子 1)、後藤 忍 1) 社会医療法人 敬和会 大分岡病院 1) 亀井誠治 1 森田雅人 2 嶋岡徹 2 福田敦夫 2 楠 正美 2 石川敬喜 2 浦壁洋太 2 金子匡行 2 宮本 宣秀 2 永瀬公明 2 迫秀則 2 立川洋一 2 *1:整形外科医師、2:心血管センター医師 感染性心内膜炎(IE)は、菌血症や血管塞栓症、心 障害など多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症疾患 である。今回われわれは IE による大動脈弁疣贅が 脾梗塞を来たした症例を経験したので報告する。症 例 60 代男性、主訴は左膝痛、既往歴:C 型肝炎、 肝臓癌(手術)、7 年前に左膝の単顆型人工関節置 換術(UKA)施行、現病歴:高血圧併存し治療中。当 院受診 2 日前、急に左膝痛出現し歩行困難となり当 院を受診。腫脹と膝の摩耗あり。左膝関節穿刺より 関節液を採取し培養検査提出、UKA 抜去後、全人 工膝関節置換術(TKA)予定となり当院入院となる。 入院時所見:WBC5,940/μl、Hb11.8g/dl、 CRP1.6mg/dl。心電図:有意所見なし。経胸壁心エ コー:術前検査で大動脈弁左冠尖の弁尖に可動性の ある等輝度構造物(疣贅)を認めた。弁膜症は大動脈 弁逆流を軽度から中等度、左室壁運動に異常なし。 経過:心臓手術も考慮されるが頭部 CT で脳出血も 見つかり保存的治療を選択、ABPC、GM 投与開始。 その後 BT38.4℃まで上昇、関節液より E.faecalis 検 出、血液培養から同菌種を検出。化膿性膝関節炎に 対して洗浄及び人工関節抜去術施行。手術後は持続 灌流開始。14 日後疣贅の増大を認めた。入院 16 日 目、左側腹部の痛みを訴えたため造影 CT を施行、 脾臓に楔状の造影不領域が出現しており脾梗塞を疑 う。経胸壁・経食道心エコーにて疣贅の消失を確認、 心臓手術はせず経過観察となる。左側腹部痛は数日 で軽快。血液培養は陰性になり ABPC、GM は投与 終了。考察:脾梗塞は左心系感染性心内膜炎によく みられる合併症で、その頻度は剖検で 44~58%との 報告がある。今回、IE の診断で心エコーの重要性を 再認識させられた症例であった。
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