スピン3重項超伝導における新しいタイプの 時間反転対称性の破れ

スピン 3 重項超伝導における新しいタイプの時間反転対称性の破れ
27
スピン 3 重項超伝導における新しいタイプの
時間反転対称性の破れ
*
*
三 宅 和 正
New Type of Time-Reversal Symmetry Breaking in Spin-Triplet Superconductivity
*Kazumasa Miyake*
It is discussed that an extra magnetization is induced by an onset of the equal-spin-pairing of spin
triplet superconductivity if the energy dependence of the density of states of quasiparticles exists in
the normal state. It turns out that the effect is observable in Sr2RuO4 due to the existence of van Hove
singularity in the density of states near the Fermi level, explaining the extra contribution in the Knight
shift reported by Ishida et al. It is also quite non-trivial that this effect exists even without external
magnetic field, which implies that the time reversal symmetry is spontaneously broken in the spin
space.
1.は じ め に
この研究報告では,当初の研究計画では想定しなかっ
平成 26 年度の研究計画は「超伝導発現機構の多様性
た,Sr2RuO4 などで実現するスピン 3 重項超伝導状態に
に関する理論的研究」であった.それに向けて,いくつ
おいて,スピン自由度に起因する新しいタイプの時間反
かの可能性を検討した.
転対称性の破れが生じることを示した理論について紹介
1 )平成 25 年度までの銅酸化物高温超伝導体における
する .
4)
電荷移動ゆらぎ超伝導機構の可能性の検討を行い,銅酸
2.超伝導状態の記述:
2スピン1重項&スピン3重項
化物の基本モデルである d-p モデルは,CeCu(
2 Si,Ge)
2
系で実現していることが確認された Ce の価数転移の量
子臨界現象と同様に,d-p 電荷移動の臨界点を保有し臨
この節では,後で必要となる超伝導状態の基本的性質
界価数ゆらぎを内包することが分かった.平成 26 年度
に関する「理論ミニマム」についてまとめておく.
は,C. M. Varma らにより提案されている「ループカレ
1)
2.1. スピン 1 重項超伝導状態
ント秩序」の存在を ,電子相関を充分に取り込んだ理
先ず,スピン 1 重項ペアの場合を考える.そのとき,
論にもとづいて示すことができた(論文準備中).
/√2 で与えら
クーパーペアのスピン状態は(|↑↓〉– |↓↑〉
2 )平成 25 年度までの研究で,主量子数 n の大きな原
れ,準粒子に対する有効相互作用ハミルトニアンは
子軌道は空間的に広がっており,そのような電子を含む
イオンでは(通常は大きな効果をもたない)ペアホッピ
ング相互作用が重要となり,その多体効果で ns 電子の
(ns)状態が排除されて,その結果(ns)状態と(ns)状態
1
0
2
の縮退が生じて,電荷近藤効果が生じることがわかっ
2,3)
た
.これは不純物モデルにもとづいた議論であるが,
平成 26 年度の研究により格子系に拡張する見通しが得
–
2015 年 3 月 2 日 受理
*
豊田理化学研究所フェロー
a
a
(1)
準粒子の生成演算子を,† がないのは消滅演算子を意味
する.超伝導ギャップ Δk は,次のギャップ方程式を満た
すように定まる.
∆ k = – ∑ Vk,k'
3 ) He-a 相,Sr2RuO4 など軌道運動に起因する固有
備中).
a a
k,k'
†
3
子上のモデルに対する数値計算によって求めた(論文準
†
†
k,k' k↑ –k↓ –k'↓ k'↑
と与えられる.ここで,a k↑ は,波数 k,スピン ↑ をもつ
られた.
角運動量や固有磁気モーメントの大きさを 2 次元正方格
ΣV
Hpair =
k'
∆ k'
E
tanh k'
2 Ek'
2 kBT
(2)
ここで,Ek は,波数 k をもつ超伝導状態での準粒子の励
起エネルギーであり,Fermi 準位から測ったノーマル状
態の準粒子のエネルギー ξ k を用いて
Ek = √ξ k2 + |Δk|2
(3)
スピン 3 重項超伝導における新しいタイプの時間反転対称性の破れ
28
と表せる.
超伝導状態と(仮想的)ノーマル状態での基底状態エ
Δ̂k =
ネルギーの差 ΔE は
1
2
ΔE ≃ –-
N〈
F |Δk| 〉
FS
(4)
2
(
)
–d(
+ id(
x k)
y k)
d(
z k)
d(
z k)
d(
x k)+ id(
y k)
(5)
ここで,d =(dx, dy, dz)は d─ベクトルと呼ばれ,スピン空
間の回転に対してベクトルの性質をもつ(一般には複素
6)
数).準粒子の励起エネルギーÊk も 2×2 の行列となり,
で与えられる.ここで,フェルミ準位近傍での(スピン
Êk =[ξ k2 + Δ̂k Δ̂k]1/2
それで近似できるものとし,〈・・・〉FS はフェルミ面での
平均を表す.
式(1)に現れる Vk,k' はペア相互作用の強さを表し,相
(6)
†
はフェルミ準位での
当たりの)準粒子の状態密度 N(
F ξ)
で与えられ,その固有値は
1/2
Ek ≡[ξ k2 + |d(k)|2 ± |d(k)× d*(k)|]
±
(7)
互 作 用 が 準 粒 子 間 距 離 の み に 依 存 す る と き は, そ の
となる.
Fourier 成分v q を用いて,Vk,k' = vk – k' と表せる.式(2)よ
り,超伝導ギャップ Δk の k─依存性は,ペア相互作用 Vk,k'
のそれで決まることが分かる.狭い意味での BCS 理論
5)
では ,Vk,k' ≡ –V0 は Fermi 準位近傍で k─依存性をもた
ないため,式(2)で決まるギャップも k─依存性がない定
で与えられる励起エネルギーは,E > Δ
数 Δ となり,式
(3)
は,0 < E < Δ に
である.そのため,励起状態密度 N(
s E)
= 0 である.このため低温(T≪Δ)での
対して,N(
s E)
–Δ/T
のように指数関数的な振舞いを示すこと
物理量は,e
(7)式より,d(k)× d*(k)= 0 のとき,励起エネルギー
は(時間反転に関する)2 重縮退をもつことがわかる.
そのとき,Δ̂k Δ̂k とÊk は単位行列に比例し,ギャップはユ
ニタリー状態にあるという.d(k)× d*(k)≠ 0 のとき
†
は,非ユニタリー状態にあるという.この場合は自発的
に 2 重縮退は破れている.すなわち,時間反転の対称性
も破れている.
2.3. スピン磁化率
さて,クーパーペアのスピン状態を直接反映する物理
になる.
量はスピン磁化率χ s である.スピン 1 重項の場合,分極
一方,Vk,k' が k─空間のある面[あるいは線]の上でゼ
を起こすためにはペアを壊す必要があるため,弱い磁場
ロになるような k─依存性をもつと,その面と Fermi 面
(ξ k = 0 で与えられる)が交差する場合には,励起エネ
ない.そのため,T < Tc でχ s は減少し T = 0K でゼロに近
のもとでは熱的に壊れたペアしかスピン分極に寄与でき
ルギー E はその交差線[交点]の上でゼロになる.その
づく.低温での温度依存性は Table 1 のようになる.
ため,励起エネルギーはゼロから連続的に分布する.そ
スピン 3 重項の場合は,もう少し事情は複雑である.
~
して,低エネルギー励起(E≪Tc)に対して,N(
s E)
= 0 とすることが
すべての波数 k に対して式(5)の d(
z k)
NF,
[(E/Tc)NF]と な る の で あ る. こ の よ う な
(E/Tc)
可能なとき(equal Spin Pairing の頭文字をとって eSP
2
ギャップを Polar 型[axial 型]と呼ぶ.これらの場合に
ペアと呼ぶ),ペアを壊すことなくスピン分極を作れる
は,低温での物理量は一般にベキ的な温度依存性(∝T )
ので,χ s は低温までノーマル状態の値のままである.一
を示す.ベキ指数 n はギャップの型および物理量により
が
方,どのようにスピン空間を回転しても式(5)の d(
z k)
異なり,Table 1 のようにまとめられる.
消えずに残るときは,超伝導転移温度(Tc)以下でχ s の
n
–
)
/√2 というスピ
減少が見られる.dz 成分は(|↑↓〉 + |↓↑〉
Table 1 熱力学的物理量の T≪Tc での温度依存性.ここで,1/(TT1)
(NMR 縦緩和率),Cel(:電子比熱),λ (磁場侵入長),χ s
(スピン 1 重項の場合のスピン磁化率).
1/T1
BCS 型
Polar 型
axial 型
–Δ/T
e
T3
T5
Cel
1 – λ(0)/λ(T)
χs
–Δ/T
e–Δ/
T
T2
–Δ/T
e
T2
T3
2
2
e
T
T2
T
2.2. スピン 3 重項超伝導状態
ス ピ ン 3 重 項 で は, ク ー パ ー ペ ア の ス ピ ン 状 態 は
–
|↑↑ > ,|↓↓ > ,
(|↑↓ > + |↓↑ > )
/√2 の 3 つが一般には可能で
ある.そのため,超伝導ギャップはスピン空間(↑, ↓)
の 2×2 の対称行列でつぎのように表される.
ン構造をもつために,1 重項と同様にスピン分極に寄与
,|↓↓〉の成分からの
できないからである.しかし,|↑↑〉
寄与の分だけ,T → 0 でもχ s はゼロにならない.
結 晶 が 反 転 対 称 中 心(CiS,Center of inversion
Symmety)をもつ場合には(現実にはこの場合が多いの
であるが),スピン 1 重項ペアとスピン 3 重項ペアは混じ
ることはない.超伝導ギャップ関数 Δk は結晶群の既約表
現であり,CiS があるときは k → –k に関する偶奇性で分
類される.Δk はクーパー対の波動関数φ k と同じ変換性を
もち,Pauli 原理によって,スピン 1 重項ペアは k → –k
(相対座標の入れ替えに対応)に対して偶であり,スピ
ン 3 重項ペアは奇であるので,混じることはないのであ
る.一方,CiS がないときには,スピン 1 重項ペアとス
ピン 3 重項ペアは一般に混じりあう.2004 年に CiS をも
スピン 3 重項超伝導における新しいタイプの時間反転対称性の破れ
7)
たない重い電子系物質 CePt3Si が ,2005 年に CeRhSi3
8)
29
の「余分の磁化」は通常の一般化した BCS 理論では考
が超伝導を示すことが発見され ,その後重い電子系以
慮されない効果である.
外にも多くの CiS をもたない系での超伝導が発見されて
一方,Takagi 理論では,↑─スピンと ↓─スピンの両方
9)
いる .
がクーパーペアを形成する a 相(a2 相)に入ると「余
分の磁化」は急速に消滅することを予言した.というの
3.ESP 状態での自発的時間反転対称性の破れ:
直観的描像
スピ ン 3 重 項 状 態に あ る超 流 動・超 伝 導 の 性質 は,
3
1972 年に発見された超流動 He 以来集中的に議論され,
6)
基本的な様相は解明されたといえる .一方,Sr2RuO4
は転移点より低温側で(磁化率に比例する)NMR のナ
10)
イトシフトがほとんど変化しないので ,eSP 状態のス
11,12)
,ごく最近,
ピン 3 重項超伝導だと考えられてきたが
ナイトシフトが転移点より低温側で僅かに(2% 程度)
13)
増大する現象が報告された .また最近,Sr2RuO4 の上
部臨界磁場 Hc2 が常磁性効果および低温高磁場領域で弱
14)
い一次転移的振る舞いを示すことから ,スピン 1 重項
15,16)
状態にあるのではないかと疑う人たちがいる
は,Takagi 理論では,ノーマル状態にある準粒子と ↑─
スピンだけがクーパーペアを形成する a1 状態の準粒子
との間での移動(再構成)は考慮されているが,超流動
状態における ↑─スピン成分と ↓─スピン成分の間での移
動(再構成)は考慮されていなからである.以下では,
Takagi 理論の精神を継承しつつ,eSP 状態において「余
分の磁化」がどのようにして生じるかについて,より広
い観点から議論する.
以下の論考では,無磁場(H = 0)でのノーマル状態の
(ξ )はフェルミ準位(ξ = 0)近傍で
準粒子の状態密度 N
N(ξ )≃ NF + aξ
(8)
で与えられると仮定する.すると,磁場下(H ≠ 0)で
.
しかし,ナイトシフトが転移点より低温側で(僅かで
と ↓─スピンのそれ N(
の,↑─スピンの状態密度 N(
↑ ξ)
↓ ξ)
はあるものの)増大するという現象はスピン 1 重項シナ
は Fig. 1 のように分離する.ここで,化学ポテンシャル
2
μ のシフトは,O(μ BH/ε*F )の程度の小さなものなので無
視する(ε*F は準粒子の有効フェルミエネルギー).
リオでは理解不能である.したがって,このナイトシフ
ト増大の現象を理論的に解明することは重要なテーマで
ある.以下では,従来は無視されてきた準粒子の状態密
度のエネルギー依存性の効果を取り込むことによって,
スピン 3 重項 eSP 状態の秩序状態の発達に伴って「余分
の磁化」が発生する現象として理解できることを理論的
に議論する.この効果は普遍的に存在するものではある
が,通常は観測にかからないほど小さなものである.
し か し,Sr2RuO4 で は ノ ー マ ル 状 態 の 状 態 密 度 が Van
Hove 異常による大きなエネルギー依存性をもつために,
4)
観測可能な大きさとなることが示せる .
この「余分の磁化」の物理的起源は比較的単純に理解
できる.Fig. 1 に示すように,準粒子の(ノーマル状態
(ξ )はフェルミ準位(ξ = 0)近傍で一
での)状態密度 N
般にエネルギー依存性をもつので,磁場(H)下では ↑─
スピンのフェルミ準位近傍での状態密度 N(
と ↓─スピ
↑ ξ)
とは一般に異なる.すると,↑─スピンで
ンのそれ N(
↓ ξ)
Fig. 1. フェルミ準位近傍の準粒子の状態密度 N
(ξ ):
無磁場(H = 0)と有限磁場(H ≠ 0)の場合.実線は占有状
態,破線は非占有(空)状態を表す.
4.基底状態(T = 0K)の議論
構成されるクーパーペアの自由エネルギーの得と ↓─スピ
ンのそれとは異なることになり,自由エネルギーを更に
最初に,式(4)を用いて,基底状態の場合を議論する.
得するように,↑─スピンのクーパーペアと ↓─スピンのそ
マ ジ ョ リ テ ィ(↓)ス ピ ン と マ イ ノ リ テ ィ(↑)ス ピ ン の
れとの割合を変える(再構成する)ことになるだろう.
eSP の基底状態での凝縮エネルギーの差d Econd を以下の
(ξ )のξ の 1 次項の符号によって「余分の
したがって,N
ように定義する.
磁化」が増大したり減少したりする.この効果は,40
年前 Takagi によって,超流動 He-a 相の 2 次相転移点で
3
17)
磁化率が僅かな不連続を示す効果として予言された .
Takagi は同時にこの論文で,(H ≠ 0 で生じる)↑─スピ
ンだけがクーパーペアを形成する a1 相において,H の
大きさに依存しない磁化が存在することも予言した.こ
[2
(
)] 2
1 N Δ – –1 N Δ ×1 .
ΔEcond = –-
- F↑ ↑
-
F↓ ↓
2
2
2
(9)
ここで,↓ スピンおよび ↑ スピンの準粒子バンドのフェ
ルミ準位での状態密度は
NF↓ ≡ NF + Aμ BH
(10)
スピン 3 重項超伝導における新しいタイプの時間反転対称性の破れ
30
および
NF↑ ≡ NF – Aμ BH
(11)
であり,Δ↓ および Δ↑ は,それぞれ,超伝導ギャップの ↓
(
VNF
)
(16)
化が生じることを意味する.すなわち,時間反転対称性
を用いると,式(9)のδ Econd は
が自発的に破れるのである.もちろん,イジングモデル
[
{
]
2
1 *2
ΔEcond = –-
(ε )(NF + Aμ BH)exp – V
(NF + Aμ BH)
4 c
[
]}
2
–(NF – Aμ BH)exp – V(N – Aμ H)
F
B
(12)
と書ける.すると,H = 0 での微係数∂(δ Econd)/∂ H は
)
NF 2 Aμ B
∂(δ Econd) = –─ Δ ─
────
NF
∂H
2
H=0
( 1 + VN2 )
─
(13)
F
のように与えられる.したがって,磁場 H に関して 1 次
の範囲で,δ Econd は
(
)
NF 2 Aμ B
2
δ Econd ≃ – ── Δ ── 1 + ── H
NF
VNF
2
NF
2
となる.このことは,無磁場(H = 0)でも自発的に磁
Δ =ε*c exp(–1/VNF)
(
NF 2 Aμ B
2
δm ≃ — Δ —— 1 + ——
ギャップに対する弱結合の表式,
(
2
これを最小化するようにδm を決めると
スピン成分および ↑ スピン成分を表す.両スピン成分の
状 態 密 度 の 表 式,(10)お よ び(11), お よ び, 超 伝 導
)
NF 2 Aμ B
2
δm (δm )
ΔE
(δm )≃ – — Δ —— 1 + —— — + —. (15)
NF
VNF χ
2
2χ
(14)
の強磁性発生の場合と同様で,自発磁化は正と負の両方
が可能である.すなわち,–δm の仮想的磁化が生じると
して,上記の議論をすれば,負の自発的磁化が得られる
ことになる.いずれにせよ,自発的磁化が逆向きのスピ
ンをもつ eSP 状態にあるクーパーペアの間の移動によっ
て凝縮エネルギーを稼ぐことが本質的な点である.
この誘起された「余分の磁化」は,Fig. 1 のように
A > 0 であれば,有限の磁場下(H ≠ 0)でも存在する.
実際,磁化が磁場下 ePS 状態での従来型の磁化m (以下
で議論)に加えて,クーパーペアの移動にともなう余分
(m +δm )は
の磁化δm が生じた場合の全エネルギー E
(
で与えられる.
Fig. 1 に示すように A > 0 であれば,δ Econd < 0 であり,
↓─スピンペアの方が ↑─スピンペアより低いエネルギーを
もつことになる.この計算は,↓─スピンと ↑─スピンの電
子数はノーマル状態のそれらと同じであるという制約の
下で行われたものである.しかし,この制約を緩和する
と,クーパーペアを形成する電子は ↑─スピンバンドから
↓─スピンバンドに移動して凝縮エネルギーを稼ぎ,その
結果,「余分の磁化」が生じることが期待される.
この「余分の磁化」を評価するために,先ず,無磁場
(H = 0)の場合に何が起こるか考える.凝縮エネルギー
の差に関する式(14)は,クーパーペアが ↑─スピンバン
ドから ↓─スピンバンドにか仮想的に移動して仮想的磁化
δm が生じた場合にも,式(14)の H をδm /χ で置き換えれ
ば,有効である(ここで,χ はノーマル状態での磁化
率).すなわち,Fig. 1 のように A > 0 であれば,仮想的
磁化δm は,(H をδm /χ で置き換えた)式(14)で与えら
れるエネルギーの利得を生み出す.一方,仮想的磁化
δm による磁場のエネルギーの増加(スピン分極にとも
なう運動エネルギーの増加)は,(δm )/2χ で与えられ
2
る.したがって,仮想的磁化にともなう全エネルギーの
(δm )は,つぎの式で与えられる.
変化分 ΔE
)
N Aμ 2 δm
E(m + δm )= E(m )– —F Δ2 ——B 1 + —— —
NF
VNF χ
2
[
2
2
]
(m + δm ) m
+ ————— – — – δm H
2χ
2χ
(17)
で与えられる.ここで,第 1 項は磁化m を与える磁場 H
の下での従来型の凝縮エネルギーを,第 2 項はクーパー
ペアの移動によって生じる磁化の変化m →m +δm にと
もなうエネルギーの利得を,第 3 項は余分の磁化にとも
なう磁場のエネルギーの増加分を,最後の項は余分の磁
化にともなうゼーマンエネルギーの利得を表す.以下で
示すように,式(17)の右辺第 1 項の具体的な形は式(21)
で与えられる.そこでは,磁場の効果は,式(10)および
式(11)で与えられる,ノーマル状態の状態密度の磁場依
存性を通してのみ考慮されている.式(17)の右辺第 2 項
は式(14)の表式で磁場 H を(「余分の磁化」δm に対応す
(17)
る)“磁場” δm /χ に置き換えることで得られる.式
(m +δm )をδm について最
で与えられる全エネルギー E
小化することにより式(16)の関係が得られることは容
易に分かる.通常の eSP 状態では,O
[(Δ/ε*F)]≪1 を無
2
視する精度で,m =χ H の関係が成り立つからである.
O[(Δ/ε*F )2]のオーダーの補正を考慮しても,式(16)であ
(μ BH/ε*F )≪1 のオーダーにし
たえられるδm への補正は O
かならない.
(ξ )のエネルギー依存性を表
式(8)において状態密度 N
す係数 A の大きさを決める無次元パラメタ a を
スピン 3 重項超伝導における新しいタイプの時間反転対称性の破れ
a
εF
a = NF —
*
4
(–)
2
2μ B NF
H
m n ≃————
a
1 + F0
]
–(NF – Aμ BH)
(Tc – T) .
により導入する.一般に a ~ O
(1)であり,N
(ξ )のξ = 0
での磁化m n は
[
2
(+)
δ Fcond = – K (NF + Aμ BH)
(Tc – T)
(18)
での傾きの大きさを表す.磁場 H の下でのノーマル状態
31
2
(23)
ここで,超伝導転移温度 Tc は
(±)


1
Tc( ± ) = ε̃c* exp  –

µ
V
(
N
±
A
H
)


F
B
(19)
(24)
と与えられ,係数 K は K ≡ 8π /7ζ(3)≃ 9.38 と定義され
2
と表せる.ここで,F0 は磁化率の補正を与えるフェル
a
ミ液体パラメタである.したがって,δm とm n の比は
2
(
)
δm 1 aΔ
2
a
— = – ——— 1 + —— (1 + F0 )
VNF
m 0 4 μ BHε *F
る(ζ(x)は Riemann のζ 関数).基底状態(T = 0K)の場
合に式(14)を導いたのと同様の計算によって,
(20)
となる.
も ち ろ ん, 上 で 議 論 し た「 ↓ ─ ス ピ ン と ↑─ ス ピ ン の
クーパーペアの間の移動」を考慮しない場合に現れる
「従来型」の磁化m s も存在する.これは基底状態の凝縮
δ Fcond  –
K
Aµ B 
2T (T – T ) 
NF
(Tc – T )2 + c c

 H (25)
2
NF 
VN F

が得られる.GL 領域(T <
~ Tc)では ,[・・・・]の中の第 1
項は第 2 項に比べて無視できるので,基底状態(T = 0K)
の場合の式(16)に対応して,「余分の磁化」δm は
エネルギー Econd に含まれる状態密度の H 依存性のみを
通じて現れるもので,種々の場合に議論されている
18)
.
δδm
m  K NF
実際,Econd は
{
[
]
1
2
Econd = – – (ε *c )2(NF + Aμ BH)exp – ————
V(NF + Aμ BH)
4
[
]}
2
+(NF – Aμ BH)exp – ——————
V(NF – Aμ BH)
と与えられる.したがって,式(20)に対応して,δm と
(21)
により,
(26)
m n の比は
m
δδm
で与えられるので,磁化m s はこれを H で微分すること
Aµ B 1
Tc (Tc – T )
N F VN F
m0n
m
=
8π 2 aaTc (Tc – T ) 1
aa
((11++FF
0 0))
7ζ (3) µ B H ε*F VN F
(27)
となる.
式(26)で与えられる結果は,Takagi 論文で与えられた
「 He-a1 相での余分の磁化」の結果とコンシステントで
3
∂E
m s ≡ – cond
∂H
N
Aµ B
μ BH
4 A
 F ∆2
. ———
N F (VN F )2 NF
2
(4)は「余分の磁化」を
ある.すなわち,Takagi 論文の eq.
(22)
[(Aμ BH/NF)]のオーダーの
となる.これを導くとき,O
MI – Mn = NF Tc μ Bη(t +η h)/2β
17)
のように与えている .Takagi 論文のパラメタと本論文
のそれらとの間の関係は
2
項を無視した.このm s は式(16)で与えられるδm に比べ
る と Aμ BH/NF = aμ BH/ε*F ≪ 1 だ け 小 さ な 量 で あ る の で,
無視してよい.
(28)
t≡
µ H
(Tc – T )
ATc
, η≡
, h≡ B
2
Tc
Tc
V (NF )
(29)
であり,本論文ではいわゆる「フィードバック効果」を
考 え て い な い の で,(1/β )= K で あ る.2 倍 の 違 い は,
5.超伝導転移点近傍(GL 領域)の議論
つ ぎ に, 超 伝 導 転 移 点 近 傍( い わ ゆ る,GinzburgLandau 領域)について議論する.そこでは,GinzburgLandau(GL)型の自由エネルギーを用いた議論が便利
である.GL 領域では,基底状態でのエネルギー差 Econd,
(+)
(12), に 対 応 す る 自 由 エ ネ ル ギ ー の 差,δ Fcond ≡ Fcond
(–)
6)
– Fcond ,はつぎのように与えられる .
Takagi 論 文 の eq.(4)で は a1 相(↑─ ス ピ ン だ け が ク ー
パーペアを構成)を考えているのに対し,本論文では ↓─
スピンと ↑─スピンの両方が eSP 状態のクーパーペアを
構成しており,クーパーペア間の移動を考慮しているこ
とに起因している.
Takagi 論文では,↓─スピンと ↑─スピンの両方がクー
(h )
パーペアを構成する a 相(a2 相)では,外部磁場 H
スピン 3 重項超伝導における新しいタイプの時間反転対称性の破れ
32
に依存しない「余分の磁化」が消滅している(Takagi 論
17)
(5)参照) .その理由は,クーパーペア間の移動
文 eq.
が考慮されていないためだと考えられる.
磁化に対する「従来型」の磁化m s は,基底状態の場
合の議論と同様に,GL 自由エネルギー Fcond の磁場(H)
依存性を通して生じる.Fcond は GL 領域で
Fcond = –
(
K
( N F + Aµ B H ) Tc( ± ) – T
4
+ ( N F – Aµ BH )
(
Tc(–)
)
2
)]
2
分することにより,
(31)
Aμ B 1
Aμ BH
≃ K NF —— ———[
+ TTc]———
c Tc – T)
2 2T(
NF(VNF)
NF
となる.ここで,基底状態の場合と同様に,O
[(Aμ BH
2
/NF)]のオーダーの項を無視した.このm s は式(26)で与
えられるδm に比べると Aμ BH/NF = aμ BH/ε*F ≪ 1 だけ小さ
(T – Tc)
/Tc < μ BH/ε*F
な量であるので,T = Tc のごく近傍,
≪ 1,を除けば無視してよい.
この「従来型の磁化」m s は,Takagi 論文の a2 相の磁
(5)と(T-Tc)に関してゼロ次の範囲で完全
化に対する eq.
に一致する.実際,Takagi 論文の a2 相の磁化とノーマ
17)
(5)は
ル相のそれとの差を与える eq.
(32)
2
MII – Mn = NFTc μ B η h /β
で与えられるが,Takagi 論文のパラメタと本論文のそれ
らとの間の関係は式(29)および(1/β )= K で与えられる
ことを考慮すると,式(31)の[・・・]の中の第 2 項だけを
採ったものと一致している.
6.理論結果のまとめ
ここで,「余分の磁化」δm とノーマル状態での磁化
m n の比についての前節までの結果をまとめておく.T =
0K での結果,(20),と T <
~ Tc での結果,(27),は
1 a∆ 2
4 µ B H ε *F

2 
a
 1 + VN  (1 + F0 ) (T = 0)
F
Tc – T ) 1
8π 2 a Tc (T
(1 + F0a ) (T <
~ Tc)
7ζ (3) µ B H ε *F VN F
のようにまとめて表せる.T <
~ Tc では Δ ≃[8π /7ζ(3)]
2
2
T(
であるから,T = 0 と T <
~ Tc は滑らかに繋がっ
c Tc – T)
ていることが分かる.
(33)
20)
となる .したがって,実験値,ξ 0 = 1050Å と aℓ = 3.87Å
を用いると,ε*F /Tc は
TF ≃ 2.5×103
Tc
∂ Fcond
ms≡ – —
∂H


δδm
m 
=
m0n 
m


ε*
ξ
–1 F
0
–––
= 1.1 × 10 –––
aℓ Tc
(30)
–T 

と与えられるので,「従来型の磁化」m s はこれを H で微
7.Sr2RuO4 の NMR ナイトシフトの実験との関係
11,12)
この節では,超伝導状態での物性
および NMR ナ
10,13)
が詳しく調べられている Sr2RuO4
イトシフトの様相
の「余分の磁化」δm /m n の値を見積もる.
磁場を c 軸に印加したときの上部臨界磁場 Hc2 の値か
ら,T = 0K の極限での超伝導コヒーレンス長ξ 0 は,ξ 0 ≃
11)
1050Å と評価される .ξ 0 と面内の格子定数 aℓ の比は
BCS 理論により評価すると
(34)
20)
と評価される .すなわち,準粒子の有効フェルミエネ
ルギー ε*F は
ε*F ≃ 2.5×10 Tc ≃ 3.8×10 K
3
(35)
3
となる.ε˜c ~ε*F を仮定すると,超伝導の結合定数 VNF は
1
≃7
VNF
(36)
と評価される.BCS の関係を用いると T = 0K での超伝
導ギャップは
Δ ≃ 1.7×Tc ≃ 2.6 K
(37)
と与えられる.ランダウパラメタ F0 は,ノーマル状態
a
でのウィルソン比の実測値(≃2)から,F0 ≃ –0.5 である
a
21)
ことが分かる .
NMR ナイトシフトの実験に用いられた磁場は,H ≃
1T なので,μ BH ≃ 0.67K である.すると,式(20)で与
えられる,T = 0K での「余分の磁化」とノーマル状態で
の磁化の比,δm /m n,は
δm
–3
a
m n ≃ 5.0×10 ×
(38)
と評価される.
つぎにパラメタ a の値を評価する.自由電子モデルで
は,学部の演習でやるように,a = 1/2 である.ところが,
準 2 次元系の Sr2RuO4 では van Hove 異常がフェルミ準
位近傍にあることが知られており,a の値はかなり増大
している.実際,フェルミ面を再現するようなタイトバ
インディングモデルによるγ バンドの状態密度は Fig. 2
のように計算されていて
22)
,フェルミ準位のごく近傍に
van Hove 異常が存在する.この図から状態密度のフェ
ルミ準位でのエネルギー微分の値を読み取り,m */mband
19)
≃ 5.5 であることを考慮すると ,パラメタ a の値は
スピン 3 重項超伝導における新しいタイプの時間反転対称性の破れ
a ≃ 3.6
(39)
と評価される.ここで無視したα およびβ バンドからの
効果もそれなりの寄与があるが,状態密度に占める割合
はγ バンドに比べると小さいので,その効果は結果を大
きく変えるほどではないと期待される.そうすると,式
(38)で与えられる,T = 0K の極限での比δm /m n はほぼ
2% となる.これは NMR ナイトシフトで観測された超
伝導転移点以下での磁化の増大の相対値
13)
をほぼ再現す
る.
33
価できる.すると,式(35)
(
, 36), および(37)で与えられ
る数値を用いると,T = 0K でのδm は
δm ≃ 0.92 J · T
(41)
–1
となる.これは磁場
δ B = μ 0δm ≃ 1.1×10 T = 1.1×10 G
–6
(42)
-2
を与える.ここで,μ 0 = 4π × 10 H・m は真空の透磁率
–7
–1
を表す.式(42)で与えられる自発磁場δ B は下部臨界磁
24)
場 Hc1 = 10G お よ び Hc1 = 50G , よ り 充 分 小 さ い の で,
ab
c
マイスナー効果によって遮蔽されてしまう.したがっ
て,自発磁場のドメインのサイズが磁場侵入長 λ ≃ 1.3
× 10 Å より小さくない限り,この自発磁場を観測する
3
ことは不可能と考えられる.
Sr2RuO4 の NMR ナイトシフトで観測された「余分の
磁化」の効果は,やはり「スピン」3 重項超伝導を示す
と考えられている UPt3 においても(一ケタほど小さい
効果ではあるが)既に観測されていたとみることもでき
25)
26)
る .SQUiD を用いた磁化測定によれば ,UPt3 の自
発 磁 場 の 上 限 は 1mG と 与 え ら れ て い る. こ れ は, 式
(42)で与えられるものより 1 ケタ小さく,矛盾しない.
また,この結果は,純良単結晶を用いたμ SR の測定が自
27)
28)
発磁場の上限を ~30mG あるいは~ 80mG
と与えて
いることとも矛盾しない.
Fig.2. Sr2RuO4 のγ バンドの状態密度(Ref.22 の Fig. 41).
破線はフェルミエネルギー(ξ ≡ε – ε F = 0)での状態密度 N
(ξ )の接線を表す.
8.スピン 3 重項超伝導状態での時間反転
8.対称性の破れの普遍性
式(16)および(26)で与えられる「余分の磁化」は外部
磁場がないとき(H = 0)にも存在する.このことは 3 節
でも注意したように,自発的に時間反転対称が破れてい
て自発磁化が発生することを意味する.この時間反転対
称性の破れは,Sr2RuO4 のように正方対称に起因する超
伝導オーダーパラメタの軌道部分の縮退から生じる,
(sin kx + i sin ky)状態での時間反転対称性の破れとは別
23)
のものである .この「自発磁化」は自発磁場を生じる
が,その磁場の大きさδ B は以下のように評価できる.
自由電子の分散を仮定すると,フェルミ準位での状態
密度は NF = 3N/4ε*F で与えられるので,式(16)で与えら
れるδm は
により生じるスピン分極」は超流動 He-a 相においても
3
存在するはずである.実際,式(20)で与えられるδm /m n
は,仮想的基底状態(T = 0K)かつ H = 1T では,以下の
ように評価される.P = 27 気圧下の液体 He のパラメタ
–26
の組,
(ε*F ≃ 1.09K,Δ = 1.7,Tc ≃ 4.3mK,μ N ≃ 1.1×10
3
29)
J/T, 1/VNF ≃ 6,F0 ≃ –0.755 and a = 1/2) , を 用 い る
と,δm /m n は
a
δm
m n ≃ 7.7×10
–3
(43)
となる.つまり,超流動 He-a 相における「余分の磁
3
化」は,仮想的基底状態(T = 0K)では,Sr2RuO4 で期
待されるものと同程度になると期待される.
9.まとめと今後の展開
スピン 3 重項 eSP 状態において,異なるスピンのクー
パーペアの間で凝縮エネルギーを得するように移動が起
2
δδm
m=
このような,「異なるスピンのクーパーペア間の移動
3 ∆  
2 
a 1+
N µB
VNF 
8 εF*  
(40)
こることにより,(外部磁場下では)従来考えられてき
た磁化以外に「余分の磁化」が発生することが分かっ
た.それは,最近 Sr2RuO4 において観測された「転移温
と 表 せ る. 単 位 胞(aℓ = bℓ = 3.9×10
–10
m,and cℓ =
(12.7/2)× 10 m) 当たり 1 ケの電子があると仮定する
–10
と,単位体積当たりの電子数 N は,N ≃ 1.04×10 と評
28
度より低温側で NMR ナイトシフトが僅かに増大する」
現象を半定量的に説明する.この効果は超流動 He-a 相
3
で eSP 状態が同定されて以来 40 年の間見過ごされてき
スピン 3 重項超伝導における新しいタイプの時間反転対称性の破れ
34
たものである.また,この効果は,外部磁場が無くても
生じる.つまり,自発的に時間反転対称性が破れて自発
磁化が発生することを意味する.これは,今まで考えら
れてこなかった「時間反転対称性を破る機構」であり,
今後の研究の発展が待たれる.
実際,Sr2RuO4 の超流動相においてのみ,磁気光学
30)
Kerr 効果が観測されており ,時間反転対称性が破れて
いる証拠の一つと見なされているが,その起源は未だよ
く分かっていない.ここで報告した機構との関連に興味
が持たれる.また,最近,空間反転中心(CIS)を持た
31)
ない超伝導体 LaNiC2 においてμ SR や SQUID を用いた
磁化測定
32)
によって,ごく小さな自発磁化が存在するこ
とが報告されており,それとの関連を解明することも今
後の興味ある課題である.
謝 辞
ここで報告した研究成果は,石田憲二氏(京都大学理
学研究科)との議論により触発されたものです.記して
感謝します.本研究は JSPS 科研費 25400369 の助成を受
けています.
文 献
01) C. M. Varma: Phys. Rev. B 73 (2006) 155113.
02) H. Matsuura and K. Miyake: J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012)
113705.
03) 松浦弘泰,三宅和正:固体物理,第 48 巻,第8号,2013
年,399頁.
04) K. Miyake: J. Phys. Soc. Jpn. 83 (2014) 053701.
05) 例えば,P. G. de Gennes: Superconductivity of Metals and
Alloys, chap. 4 (Benjamin, New York, 1966) 参照.
06) A. J. Leggett: Rev. Mod. Phys. 47 (1975) 331.
07) E. Bauer, H. Kaldarar, A. Prokofiev, E. Royanian, A.
Amato, J. Sereni, W. Bramer-Escamilla, and I. Bonalde:
J. Phys. Soc. Jpn. 76 (2007) 051009.
08) N. Kimura, K. Ito, K. Saitoh, Y. Umeda, H. Aoki, and T.
Terashima: Phys. Rev. Lett. 95 (2005) 247004.
09) S. Fujimoto: J. Phys. Soc. Jpn. 76 (2007) 051008.
10) K. Ishida, H. Mukuda, Y. Kitaoka, K. Asayama, Z. Q.
Mao, Y. Mori, and Y. Maeno: Nature (London) 396 (1998)
658.
11) A. P. Mackenzie and Y. Maeno: Rev. Mod. Phys. 75 (2003)
657.
12) Y. Maeno, S. Kittaka, T. Nomura, S. Yonezawa, and K.
Ishida: J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 011009.
13) K. Ishida, D. Sugimoto, K. Karube, T. Yamanaka, T. Iye,
H. Fukazawa, Z. Q. Mao, Y. Maeno, and K. Miyake: The
International Conference on Strongly Correlated Electron
Systems 2014, Grenoble, France, Tu-IS10-5 ; 石田憲二 :
私信.
14) S. Yonezawa, T. Kajikawa, and Y. Maeno: Phys. Rev. Lett.
110 (2013) 077003.
15) K. Machida and M. Ichioka: Phys. Rev. B 77 (2008)
184515.
16) C.-H. Choi: J. Korean Phys. Soc. 56 (2010) 933.
17) S. Takagi: Prog. Theor. Phys. 51 (1974) 1998.
18) 例えば,V.P. Mineev: Phys. Rev. B 81 (2010) 180504 (R).
19) A. P. Mackenzie, S. R. Julian, A. J. Diver, G. J. McMullan,
M. P. Ray, G. G. Lonzarich, Y. Maeno, S. Nishizaki, and
T. Fujita: Phys. Rev. Lett. 76 (1996) 3786.
20) K. Miyake: J. Phys. Soc. Jpn. 79 (2010) 024714, eqs. (6.8)
and (6.9).
21) Y. Maeno, K. Yoshida, H. Hashimoto, S. Nishizaki, S.
Ikeda, M. Nohara, T. Fujita, A. P. Mackenzie, N. E. Hussey,
J. G. Bednorz, and F. Lichtenberg: J. Phys. Soc. Jpn. 66
(1997) 1405.
22) C. Bergemann, A. P. Mackenzie, S. R. Julian, D. Forsythe,
and E. Ohmichi: Adv. Phys. 52 (2003) 639.
23) K. Miyake and O. Narikiyo: Phys. Rev. Lett. 83 (1999)
1423.
24) T. Akima, S. Nishizaki, and Y. Maeno: J. Phys. Soc. Jpn.
68 (1999) 694 .
25) H. Tou, Y. Kitaoka, K. Ishida, K. Asayama, N. Kimura,
–
Y. Onuki, E. Yamamoto, Y. Haga, and K. Maezawa: Phys.
Rev. Lett. 80 (1998) 3129.
26) H. Kambara, T. Yoshizumi, T. Mamiya, N. Kimura, R.
–
Settai, E. Yamamoto, Y. Haga, and Y. Onuki: Europhys.
Lett. 36 (1996) 545.
27) P. Dalmas de Réotier, A. Huxley, A. Yaouanc, J. Flouquet,
P. Bonville, P. Imbert, P. Pari, P. C. M. Gubbens, and A.
M. Mulders: Phys. Lett. A 205 (1995) 239.
28) W. Higemoto, K. Satoh, N. Nishida, A. Koda, K.
Nagamine, Y. Haga, E. Yamamoto, N Kimura, and Y.
–
Onuki, Physica B: Condens. Matter 281&282 (2000) 984 ;
髭本 亘 : 私信.
29) J. C. Wheatley: Rev. Mod. Phys. 47 (1975) 415.
30) J. Xia, Y. Maeno, P. T. Beyersdorf, M. M. Fejer, and A.
Kapitulnik: Phys. Rev. Lett. 97 (2006) 167002.
31) A. D. Hillier, J. Quintanilla, B. Mazidian, J. F. Annett, and
R. Cywinski: Phys. Rev. Lett. 109 (2012) 097001.
32) A. Sumiyama, D. Kawakatsu, J. Gouchi, A. Yamaguchi,
–
G. Motoyama, Y. Hirose, R. Settai, Y. Onuki: J. Phys. Soc.
Jpn. 84 (2015) 013702.