Bose 凝縮体中に動く円柱状障害物がある系における 超流動流の安定性

Bose 凝縮体中に動く円柱状障害物がある系における 超流動流の安定性解析 國見昌哉(電気通信大学)、加藤雄介 (東京大学) 流れを持った流体中に円柱状の障害物を置いたときの流れの振る舞いがどの
ようになるかは古くから研究されている。冷却原子気体の実験では、レーザー
を量子流体に照射することで障害物ポテンシャルを生成し、流体をかき混ぜる
ことができるようになった[1,2]。これらの実験では、超流動臨界速度、量子渦
の生成、位相すべりなどの興味深い超流動現象が観測されている。また、理論
的にも古典流体力学で見られるKarman渦列が量子流体でも現れるという研究
[3]もあり、単純ながら、奥の深い系であると言える。 本研究では、量子流体における様々な現象、特に、超流動臨界速度近傍の物
理を理解するために、超流動流の線形安定性解析を行った[4,5]。用いたのは、
希薄なBose-Einstein凝縮体(BEC)を定性的、定量的に精度よく記述できること
が知られているGross-Pitaevskii(GP)方程式とこの方程式をその定常解まわり
で線形化したBogoliubov方程式である。これらの方程式を数値的に解いた結果、
超流動臨界速度近傍において、励起スペクトルがスケーリング則に従うこと、
不安定定常解のエネルギー分枝、密度ゆらぎの増加などの性質を明らかにした。
また、不安定定常解のエネルギー分枝の構造から、いままで知られていた
swallowtail構造[6]とは異なる多重swallowtail構造を発見した。この構造は1
次元では存在しない量子渦対が関わっていることも明らかにした。 [1] C. Raman, et al., Phys. Rev. Lett. 83, 2502 (1999). [2] K. C. Wright, et al., Phys. Rev. Lett. 110, 025302 (2013). [3] K. Sasaki, et al., Phys. Rev. Lett. 104, 150404 (2010). [4] M. Kunimi and Y. Kato, J. Low Temp. Phys. 175, 201 (2014). [5] M. Kunimi and Y. Kato, Phys. Rev. A 91, 053608 (2015). [6] E. J. Mueller, Phys. Rev. A, 66, 063603 (2002).