励起子絶縁体としての Ta2NiSe5 の理論

Nanoscience and Quantum Physics
量子物理学・ナノサイエンス第 23 回特別セミナー
励起子絶縁体としての Ta2NiSe5 の理論
講師 : 金子 竜也 氏
(千葉大学 大学院理学研究科)
日程 : 4 月 17 日(金)13:30場所 : 本館 2 階 H284A 物理学科輪講室
概 要
励起子相、時に励起子絶縁体と呼ばれるものは、バンドの重なりの小さい半金属
やギャップの小さい半導体において励起子(電子-ホール対)の凝縮状態として基底
が記述される相のことである[1]。層状カルコゲナイド Ta2NiSe5[2]は励起子絶縁体
の候補物質として、近年注目を集めている物質である[3-5]。Ta2NiSe5 は 半導体的
な電気抵抗の振る舞いを示すが、室温付近で構造相転移を伴ったが観測されている
[2]。角度分解光電子分光の実験から、Ta2NiSe5 における相転移の起源として励起子
絶縁体転移の機構が提案された[3]。 我々は密度汎関数法に基づく電子構造計算か
ら励起子形成に有効なバンド構造を導いた。そこから有効模型として電子-格子相互
作用を考慮した3バンド Hubbard 模型を構成し、解析を行った結果、バンド間クー
ロン相互作用と電子-格子相互作用が協力し合い、励起子絶縁体への転移が Ta2NiSe5
における構造相転移を誘発することを示した[4]。発表では、我々が進めてきた拡張
Falicov-Kimball 模型や多軌道 Hubbard 模型における励起子相の研究から基礎理論
を解説し、その後に Ta2NiSe5 における励起子絶縁体の理論を展開する予定である。
[1] B. I. Halperin and T. M. Rice, Solid State Physics 21, 115-192 (1968).
[2] F. J. DiSalvo et al., J. Less-Common Met. 116, 51 (1986).
[3] Y. Wakisaka et al., Phys. Rev. Lett. 103, 026402 (2009).
[4] T. Kaneko et al., Phys. Rev. B 87, 035121 (2013).
[5] K. Seki et al., Phys. Rev. B 90, 155116 (2014).
連絡教員 物性物理学専攻 古賀 昌久(内線 2727)
東京工業大学 ナノサイエンス・量子物理学国際研究センター 主催
2015 年 4 月
同「ナノサイエンスを拓く量子物理学拠点」、大学院理工学研究科基礎物理学専攻・物性物理学専攻 共催