コラム7. 光をめぐる攻防

平成 27 年 6 月 11 日
千葉大院融合 椎名
「応用光学」コラム その7
光をめぐる攻防
光は力学的な作用をするものとして、ニュートンは光は光線(粒子)と捉え、
幾何光学としてまとめあげた。同じ時期にホイヘンスは光の回り込み(回折)
を説明するために、光は波であるとする波動説を唱えた。光は縦波であるとし、
その光は”エーテル”という未知なる媒質中を伝搬するとした。ニュートンの
幾何光学では説明できない”光の回り込み”を説明すべく説を掲げたが、肝心
の回り込みの際に生じる回折縞を説明できなかった。そのため,わざわざ光を
波で表す意味がないとして、この時代は幾何光学が全盛となった。
幾何光学はレンズやミラー、プリズムの振る舞いをよく説明できたが、顕微
鏡や望遠鏡の精度や倍率が高くなるにつれ、やがて限界が出てきた。ドイツを
始めとしてレンズ研磨の品質を理屈から捉えようとする動きはやがてザイデル
の収差論(ザイデルの五収差+色収差)として結実する。それでも尚、幾何光
学の理屈では扱えない有限長のスポットサイズが課題となり、改めて光の扱い
が議論される事となった。
トーマスヤングは、19世紀初め、光源からでた光を平行な2つのスリットを
通すと衝立上に縞が現れることを見いだした。しかし、この現象はこれまで正
しいとされてきたニュートンの幾何光学では説明のできない現象であった。そ
こで光を波としたホイヘンスの考えに同調したヤングは光の波動説を再燃させ、
科学界に大きな物議が沸き起こった。
光は光線(粒子)か波かの論争を収めるため、時の科学会(パリ・アカデミ
ー)は「光の粒子説(ニュートンの幾何光学)で光の回り込み(回折)現象を
説明し得た者には賞金を出す」との懸賞懸賞問題を掲げた。その議論に終止符
を打ったのが土木技師だったフレネルである。フレネルは禁じ手である波動説
を使って、光の直進性ならびに回折現象の回り込みに関しての一般論を展開し
た。パリ・アカデミーの当初の期待は敗れたものの、理論の正当性が認められ、
フレネルに賞が与えられた。波動光学の理論が展開され、フラウンホーファー、
キルヒホッフらによる回折現象の理解と理論の完成がなされた。
平成 27 年 6 月 11 日
千葉大院融合 椎名
「応用光学」コラム その7
光の波動説が認められた際にも、依然として光は縦波との考えが残った。粒
子説でなければ偏光を説明できないとされた。1817年にヤングが、1821年には
フレネルが光の横波説を展開し、1823年にはフレネルがいわゆるフレネルの公
式(反射・透過係数の振幅を求める式)を発見している。
やがて干渉縞がもつ光の波長程度(~1μm)の精度がモノの計測、評価に役
立つことが知られ、さまざまな干渉装置(干渉計)が作られるようになった。
1887年マイケルソンとモーリーは光の干渉計を使って光波の媒質となるエーテ
ルの存在を証明すべく実験を行った。水銀中に大理石を浮かべた防震台を使い、
地球の自転方向ならびに垂直方向での光速を測定した。光の速度の違いがエー
テルの存在を証明するはずであったが、結果は測定誤差の範囲内でしか光速に
違いは見出せなかった。この結果が1905年のアインシュタインの特殊相対性理
論の光速は媒質なしでも理論的に不変であるとする理論を裏付けるものとなっ
た。
平成 27 年 6 月 11 日
千葉大院融合 椎名
「応用光学」コラム その7
電磁気の利用
電磁気学の応用は現在の様々な電化製品、電気機器に応用されている。特に
電気と磁気との相互作用として、発電やモータの技術は広く使われている。
地下鉄大江戸線はリニアモータで駆動している。大江戸線の車輛は従来の電
車と異なり、円筒型のモータを搭載していない。車体の床下と線路に電磁石を
設置したリニアモータによって走行している。 リニアモータ式電車は、台車など床下の機器を小さくできるため、車体を小
さくできるというメリットがある。特に地下鉄では小さな車両ほどトンネル断
面積が小さくなるため、建設コストが下げられる。具体的には、回転式モータ
では1,100mm程度だった路面からの床面高さを、約700mmにまで抑え、トンネル
の断面積を通常型地下鉄の約半分程度まで小さくすることができている。した
がって、トンネルがコンパクトで済むので、工事で掘り出さなければならない
土砂の量も、それを運搬する回数も減らせ、さらに工期短縮による人件費の節
減など、経済面で大きなメリットが得られる。 また、リニアモータ式電車は、加速時の車輪の空転がなく、急勾配に強い。
一般的に、その限界は3%勾配(100m進む間に3m高くなる)程度と言われてる。
しかし、リニアモータの車輪は車体の重さを支えているだけで、レールとの摩
擦は推進力にほとんど影響しない。能力的には8%の勾配でも対応可能とされて
いる。 これらの理由から、最近は鉄輪式リニアモータの地下鉄路線が増えている。
名古屋の「リニモ」、大阪、横浜、神戸でも地下鉄として利用されている。