クリスタルガラス

平成 27 年 6 月 4 日
千葉大院融合 椎名
「応用光学」コラム その6
クリスタルガラス
クリスタルガラスとは?クリスタル?ガラス? クリスタルガラスは珪砂(SiO2)、カリウム、ソーダ灰というガラスの主成分に
酸化鉛(PbO)を添加して形成される鉛ガラスの一種。 ガラスの製造時に酸化鉛
等を添加することでガラスの溶解温度が低く抑えられ成形もソーダガラスに比
べて容易になること、また透明度と屈折率が高まり水晶(クリスタル)のよう
に輝く透明なガラスになることから、「クリスタル」と呼ばれる。 ガラスは鉛の含有量が上がるほど光の透明度や屈折率が高くなり、また比重
が大きくなるとともに打音が澄んで余音を持つ。このため、特にワイングラス
など工芸用では酸化鉛が多いものが好まれる。 しかし、高度な製造技術や鉄分
など不純物の除去、混合物の配合など全体的な化学組成の調整が重要であり、
一概に鉛の含有量が高ければ良いクリスタルガラスとなるとは言えない。
スワロフスキーはオーストリアのクリスタルガラスを主とした製造会社。ベ
ルサイユ宮殿や有名劇場の豪華なシャンデリアなども手掛けてきた、100 年以上
の歴史をもつ。酸化鉛の含有量が 32%以上と他社のクリスタルガラスよりも高
い。さらにガラス自体に色をつけているため、半永久的に変色しない。AB カラ
ーと呼ばれるオーロラコーティングがなされたものは、1970 年代にクリスチャ
ン・ディオールが依頼したのが始まり。これは見る場所によって光の輝きが変
わる。型の中には既に廃盤になったものもあり、ディオール、シャネル、ニナ・
リッチ、ジバンシーなどからの依頼で作られたヴィンテージものの宝飾の多く
は、現在は美術館域になるほどの評価がされている。
ガラス<クリスタルガラス<宝石
平成 27 年 6 月 4 日
千葉大院融合 椎名
「応用光学」コラム その6
割れるガラス、割れないガラス
なぜ脆いのか?それはガラス表面の微小な傷(クラック)が割れる原因にな
るためである。物が割れるということは、ガラスの場合珪素と酸素の結合が切
れることを意味する。この結合を切るのには1ミリ四方で1トンの力を要する。
しかし、現実には通常のガラスはその百分の一の力で割れてしまう。これは、
ガラスの表面に目に見えない無数の傷が存在するためである。その傷の一つに
力が集中してそこから傷が伸びていき成長し破壊が発生する。過冷却の液体で
あるガラスはその他の固体構造に特有の結晶の粒界が無いため、傷の延長が食
い止められない。ガラスの強度にばらつきがあり、その原因は見えないほどの
徴細な傷にある。この微細な傷をグリフィスの傷という。この傷は幅が数100Å
から1,000Å、またはそれ以下で光の波長より短いため、光学的にとらえること
はできない。 板ガラスを約 700 度まで加熱した後、ガラス表面に空気を吹きつけ、均一に
急冷し、表面に圧縮層を持たせると、
同じ厚さのフロート板ガラスに比べると
3~5 倍の強度を持つため、割れにくく、万一割れた場合にはガラス全面が粒状
になる。このような処理を施したガラスを強化ガラスという。 一方、防弾ガラスは銃による攻撃から室内の人や貴重品を保護する目的でつ
くられたガラス。ガラスの硬さと樹脂の柔軟さで強力なエネルギーを吸収し、
銃弾の貫通を阻止する。この強力な防御力は銃弾に限らず、ハンマーやつるは
しを使った破壊侵入の阻止にも有効である。 ガラスは温度の伝わり方が非常に遅いと言う事と、温度によって体積が変化
する事で、ガラス内部に熱応力が発生し、この熱応力がガラスの破断応力を超
えるとガラスは割れてしまう。耐熱ガラスは「熱膨張率」を下げる技術を施し、
ある範囲の急激な温度変化にも耐えるようにしている。 脆さ、一瞬の輝き、一度割れたら決して戻ら
ない儚さ。
ガラスに魅せられるのはなぜだろう。