収束定理(pdfファイル:5ページ)

収束定理
測度空間 (X, M, µ) をひとつ固定する.特に断らない限り,X の部分集合は M に属す
るものだけを扱い,関数はすべて X 上の R = R ∪ {±∞} に値をとる M-可測関数とする.
記号 関数 f, g について,すべての x ∈ X に対して f (x) ≤ g(x) が成り立つとき,f ≤ g
と書く.関数 fn (n = 1, 2, . . .) について,すべての x ∈ X に対して lim fn (x) = f (x) が
成り立つとき,f = lim fn あるいは fn → f (n → ∞) と書く.
n→∞
n→∞
ほとんどいたるところ成り立つことに関しても,同様の記号を用いる.すなわち,零集
合 N が存在して,すべての x ∈ X − N に対して f (x) ≤ g(x) が成り立つとき,f ≤ g a.e.
と書く.またすべての x ∈ X −N に対して lim fn (x) = f (x) が成り立つとき,f = lim fn
n→∞
n→∞
a.e. あるいは fn → f (n → ∞) a.e. と書く.
注意 N を零集合とすると,関数 f の X 上の積分と X − N 上の積分は一致する.ま
た,可算個の零集合の和集合は零集合である.よって以下の収束に関する定理において,
“すべての x ∈ X に対して成り立つ” という条件を,“ある零集合 N が存在して,すべて
の x ∈ X − N に対して成り立つ” あるいは “ほとんどいたるところ成り立つ” という条件
に置き換えてもよい.
定理 (単調収束定理, Monotone Convergence Theorem)
可測関数 fn (n = 1, 2, . . .) が 0 ≤ f1 ≤ f2 ≤ · · · を満たすならば,
∫
∫
(
)
lim
fn dµ =
lim fn dµ.
n→∞
X
n→∞
X
証明 仮定によりすべての x ∈ X につて 0 ≤ f1 (x) ≤ f2 (x) ≤ · · · である.単調増加
な R の元の列は収束するか +∞ に発散するので, lim fn (x) ∈ R を f (x) で表すと,写像
n→∞
f : X −→ R が得られる.fn (n = 1, 2, . . .) は可測関数だから,f = lim fn も可測関数で
n→∞
∫
ある.
各 n について fn ≤ f だから,非負値可測関数の積分の性質により
fn dµ ≤
X
である.n → ∞ とすると,
∫
f dµ
X
∫
fn dµ ≤
lim
n→∞
∫
X
f dµ
X
が得られる.よって,逆向きの不等号が成り立つことを示せばよい.
非負値可測関数 fn の積分の定義より,各 n に対して,単関数 fn,k (k = 1, 2, . . .) で
0 ≤ fn,1 ≤ fn,2 ≤ · · · , lim fn,k = fn を満たすものが存在して,
k→∞
∫
∫
fn dµ = lim
X
k→∞
fn,k dµ
X
である.x ∈ X に対して,gk (x) = max{fn,k (x) | 1 ≤ n ≤ k} として写像 gk : X −→ R
を定義する.fn,k が非負値単関数だから,gk も非負値単関数である.gk の定義より,0 ≤
g1 ≤ g2 ≤ · · · で,1 ≤ n ≤ k の範囲で
fn,k ≤ gk ≤ f
(1 ≤ n ≤ k)
1
である.ここで k → ∞ とすると,
fn ≤ lim gk ≤ f
k→∞
が得られる.これが任意の n について成り立つので, lim gk = f がわかる.よって,非
k→∞
負値可測関数 f の積分の定義より
∫
∫
f dµ = lim
k→∞
X
gk dµ
X
∫
∫
≤ fn ≤ fk だから,gk ≤ fk である.よって, gk dµ ≤
fk dµ
となる.
1 ≤ n ≤ k の範囲で fn,k
X
である.k は任意なので,
∫
∫
∫
gk dµ ≤ lim
f dµ = lim
k→∞
X
X
k→∞
X
fk dµ
X
となり,求める不等号が得られる.
定理 (B. Levi の定理)
∑
fn ≥ 0 (n = 1, 2, . . .) が可測関数ならば, ∞
n=1 fn も可測関数で,
∞ ∫
∑
n=1
fn dµ =
∫ (∑
∞
X
X
)
fn dµ.
n=1
∑k
証明 gk =
n=1 fn とおく.これは可測関数の有限個の和だから可測関数であり,
∑
0 ≤ g1 ≤ g2 ≤ · · · を満たす. ∞
n=1 fn の定義より
lim gk =
k→∞
で,これも可測関数である.
∞
∑
fn
n=1
∫
可測関数の有限個の和の積分について
gk dµ =
X
k ∫
∑
n=1
fn dµ が成り立つので,前定理
X
を gk (k = 1, 2, . . .) に対して適用すると
∞ ∫
∑
n=1
X
∫
∫
fn dµ = lim
k→∞
gk dµ =
X
(
)
lim gk dµ =
k→∞
X
定理 (Fatou の補題)
fn ≥ 0 (n = 1, 2, . . .) が可測関数ならば,
∫
∫
(
)
lim fn dµ.
lim
fn dµ ≥
n→∞
X
X
2
n→∞
∫ (∑
∞
X
n=1
)
fn dµ.
証明 gn = inf fk とおく.gn は可測関数で 0 ≤ g1 ≤ g2 ≤ · · · であり,下極限の定義か
k≥n
ら lim gn = sup gn = lim fn である.よって,単調収束定理により
n→∞
n
n→∞
∫
X
∫
)
(
(
lim fn dµ =
n→∞
X
∫
)
lim gn dµ = lim
n→∞
n→∞
gn dµ
X
∫
となる.
gn の定義より gn ≤ fn であること,および
gn dµ (n = 1, 2, . . .) が単調増加であるこ
X
∫
とから,
∫
fn dµ ≥ lim
lim
n→∞
∫
n→∞
X
gn dµ = lim
n→∞
X
gn dµ
X
がわかるので,求める不等式が得られる.
定理 (Lebesgue の収束定理)
fn (n = 1, 2, . . .) は可測関数で,X 上で積分可能な関数 φ ≥ 0 が存在してすべての
n = 1, 2, . . . について |fn | ≤ φ が成り立つとする.
∫
∫
∫
∫
(
)
(
)
(1) lim
fn dµ ≥
lim fn dµ,
lim
fn dµ ≤
lim fn dµ.
n→∞
X
X
n→∞
n→∞
X
X
n→∞
(2) fn (n = 1, 2, . . .) の極限 lim fn が存在するならば, lim fn は X 上で積分可能で
n→∞
n→∞
∫
lim
n→∞
∫
(
fn dµ =
X
)
lim fn dµ.
n→∞
X
証明 g = lim fn , h = lim fn とおく.|fn | ≤ φ だから,|g| ≤ φ, |h| ≤ φ である.仮
n→∞
n→∞
定により φ は X 上で積分可能だから,これにより fn , g, h はどれも X 上で積分可能であ
ることがわかる. lim (−fn ) = − lim fn = −h に注意する.
n→∞
n→∞
φ + fn ≥ 0,
φ − fn ≥ 0
だから,Fatou の補題により
∫
∫
lim (φ + fn )dµ ≥ (φ + g)dµ,
n→∞
X
∫
lim
n→∞
X
∫
(φ − fn )dµ ≥
X
(φ − h)dµ
X
がわかる.この 2 つの不等式は
∫
∫
∫
∫
fn dµ ≥
φdµ + lim
φdµ + gdµ,
n→∞
X
X
X
∫
∫
fn dµ ≥
φdµ − lim
n→∞
X
X
∫
X
∫
φdµ −
X
hdµ
X
∫
と書き換えることができる. φdµ は有限の値だから,(1) が成り立つ.(2) は (1) からわ
X
かる.
3
系 1 fn (n = 1, 2, . . .) は f1 ≥ f2 ≥ · · · ≥ 0 を満たす可測関数で,f1 は X 上で積分可
能とすると,
∫
∫
)
(
lim
fn dµ =
lim fn dµ.
n→∞
X
n→∞
X
証明 f1 ≥ f2 ≥ · · · ≥ 0 だから,極限 lim fn が存在する.φ = f1 として Lebesgue の
n→∞
収束定理を適用すればよい.
系 2 (有界収束定理) µ(X) < ∞ とする.定数 M > 0 が存在してすべての n について
|fn | < M で,fn (n = 1, 2, . . .) の極限 lim fn が存在するならば, lim fn は X 上で積分
n→∞
n→∞
∫
可能で,
∫
lim
n→∞
(
fn dµ =
X
)
lim fn dµ.
n→∞
X
証明 µ(X) < ∞ だから,定数関数 M は X 上で積分可能である.よって,φ = M と
して Lebesgue の収束定理を適用すればよい.
系 3 µ(X) < ∞ とする.fn (n = 1, 2, . . .) が X 上で積分可能で,X 上で一様に f に
収束するならば,f は X 上で積分可能で
∫
∫
lim
fn dµ =
f dµ.
n→∞
X
X
証明 仮定により,ある番号 K が存在して,すべての n ≥ K に対して |fn − f | < 1/2
が成り立つ.このとき,すべての n ≥ K に対して |fn − fK | < 1 となるので,φ = |fK | + 1
として Lebesgue の収束定理を適用すればよい.
例 X = (0, 1] を R の区間,µ を Lebesgue 測度,M を X の部分集合で Lebesgue 可測
なもの全部の集合とする.fn : X −→ R を
{
n (0 < x ≤ 1/n)
fn (x) =
0 (1/n < x ≤ 1)
で定義される単関数とする.各点 x ∈ X で lim fn (x) = 0 だから単関数の列 f1 , f2 , . . . は
n→∞
∫
0 に収束する.すなわち, lim fn = 0.一方,任意の n について fn dµ = 1 だから,
n→∞
X
∫
∫
fn dµ ̸=
lim
n→∞
X
X
(
)
lim fn dµ
n→∞
となる.実際,左辺は 1 で右辺は 0 である.この単関数の列 fn (n = 1, 2, . . .) に対して,
Lebesgue の収束定理の条件を満たす関数 φ は存在しない.
定理 fn (n = 1, 2, . . .) が可測関数で,
∞ ∫
∑
n=1
|fn |dµ < ∞
X
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ならば,A ∈ M, µ(X − A) = 0 で次の条件を満たすものが存在する.
∞
∑
(1) A 上で
fn が存在し,その値は有限である.
(2)
n=1
∞ ∫
∑
n=1
fn dµ =
A
∫ (∑
∞
A
)
fn dµ.
n=1
∑∞
証明 |fn | ≥ 0 は可測関数だから,φ = n=1 |fn | とおくと φ も可測関数で,
∫
∞ ∫
∑
φdµ =
|fn |dµ
X
n=1
X
が成り立つ.仮定によりこれは有限な値だから,N = [φ = ∞] とおくと N は零集合であ
る.A = X − N とおく.各点 x ∈ A において
0 ≤ φ(x) < ∞ だから fn∑
(x) は実数である.
∑∞
∞
さらに,各点 x ∈ A において φ(x) =∑ n=1 |fn (x)| < ∞ だから,級数 n=1 fn∑
(x) は有限
∞
∞
の値に収束する.よって,x ∈ A に n=1 fn (x) ∈ R を対応させる A 上の関数 n=1 fn が
定義できる.
∑
∑
gn = nk=1 fk とおく.gn は可測関数で,A 上で lim gn = ∞
n=1 fn である.各点 x ∈ A
n→∞
において
|gn (x)| ≤
n
∑
|fk (x)| ≤ φ(x)
k=1
だから,A 上で gn (n = 1, 2, . . .) に対して Lebesgue の収束定理を適用すると
n ∫
∞ ∫
)
(∑
∑
fk dµ
fn dµ = lim
n=1
A
n→∞
∫
k=1
= lim
n→∞
A
gn dµ =
A
∫
(
)
lim gn dµ =
∫ (∑
∞
A n→∞
A
)
fn dµ.
n=1
定理 f は X 上で積分可能とする.
(1) En ∈ M (n = 1, 2, . . .) が E1 ⊂ E2 ⊂ · · · を満たすならば,E =
∫
∫
f dµ = lim
f dµ.
E
n→∞
n=1
n=1
について
En
(2) En ∈ M (n = 1, 2, . . .) が互いに交わらないならば,E =
∫
∞ ∫
∑
f dµ =
f dµ.
E
∪∞
∪∞
n=1
について
En
証明 最初に f ≥ 0 の場合を考える.fn = χEn f とおく.
(1): lim fn = χE f だから,単調収束定理により (1) が成り立つ.
n→∞
∑
(2): ∞
n=1 fn = χE f だから,(2) が成り立つ.
一般の場合は,f = f + − f − において f + と f − に対して f ≥ 0 の場合の結果を適用
すればよい.
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