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夢 交差点 vol.58
連 載3
大学の窓から…市民活動、ボランティア…
「コミュニティ」の社会心理学
突然ですが、質問です。
①あなたの身近な地域は居心地が良いですか?
②あなたは自分が地域に何らかの影響を及ぼしていると思いますか?
③あなたは地域の人々が同じ価値観を共有していると思いますか?
④あなたは地域の人々が互いに良い関係を保っていると思いますか?
今回は私たちが自分たちの住む地域(コミュニティ)に対してどのように感じているか、地域に対する感覚はど
のようにして作られたのか、また、そのような感覚は何をもたらすのか、ということを考えてみましょう。
コミュニティに対して人々が持つ態度を「コミュニティ感覚」と呼びます。サラソン(Sarason)という研究者
は、コミュニティ感覚を「他者との類似の知覚、他者との相互依存関係の認知、他者が期待するものを与えたり、
自分が期待するものを他者から得たりすることによって、相互依存関係を進んで維持しようとする気持ち、自分
はある大きな、依存可能な安定した構造の一部であるという感情」と定義しています。
何だかよくわからない定義ですが、要するに、自分は地域の一員で、地域の人々とつながりを持っており、自分
から進んで地域に関わっていこうと思っているし、地域からのさまざまな誘いや申し出、提案などにはすすんで
答えようと思っている、というような気持ちのことを「コミュニティ感覚」と呼ぶわけです。
はじめの4つの質問は「コミュニティ感覚」を測定する項目の一部です。これらの質問に「はい」と答える人は
高いコミュニティ感覚の持ち主と言えます。皆さんの地域の人たちが高いコミュニティ感覚を持っていれば、その
地域は皆さんにとって居心地がよく、地域の人々も互いに良い関係を保っていると言えるでしょう。
コミュニティ感覚はさまざまな指標と関連しています。コミュニティ感覚が高い人は、人生への満足感や主観
的幸福感が高く、孤独感が低いと言われます。また、コミュニティ感覚が高い人は、地域でのボランティア活動に
積極的に参加するなど、地域社会に積極的・主体的に参加すると言われています。学校における研究では、コミ
ュニティ感覚の高い高校生は授業妨害や早退、中退の割合が低く、コミュニティ感覚の高い大学生は大学内での
活動に積極的に参加する傾向があります。社会人についても、コミュニティ感覚の高い人は仕事の満足度が高い
ことが報告されています。さらに、メンバーが少ない小さなコミュニティの方が、大きなコミュニティよりも、メンバ
ーのコミュニティ感覚が高いことが知られています。また、居住年数や関わりの長さとコミュニティ感覚との関連
も指摘されています。その地域に長く住んでおり、地域との関わりが長い人ほど、コミュニティ感覚が高いのです。
コミュニティ感覚が高い人は、コミュニティに積極的に関わり、コミュニティ作りに貢献するので、よりよいコミ
ュニティ作りのためには、人々のコミュニティ感覚を高めることが必要になります。人々のコミュニティ感覚を高
めるキーワードは「市民参加」です。市民参加とは「個人が、自らに影響を及ぼす制度やプログラムや環境への
意思決定に参加するプロセス」のことを指します。要するに、コミュニティの意思決定に参加することです。
宮崎市でもさまざまな形で市民がまちづくりに参加しています。市の計画や決定に参加することで、市民は自
分たちのまちを自分たちで作れるという「自己決定」の意識を持つようになります。また、たくさんの市民が参加
することで、市民の間の「連帯感」も生まれます。連帯感と自己決定の意識を持ったコミュニティ感覚の高い市民
はまちづくりに積極的に参加し、宮崎市の活性化につながるでしょう。
ことばは難しく聞こえますが、ボランティア活動は市民参加の具体的な姿です。ボランティア活動を通してコミ
ュニティの意思決定に参加することは、よりよいコミュニティを作るとともに、皆さん自身の幸福や満足感にもつ
ながっていくのです。
著者プロフィール
宮崎公立大学人文学部国際文化学科(メディア・コミュニケーション)教授
川瀬 隆千(かわせ たかゆき)
コミュニティ支援の理論と方法や大学生のキャリア形成支援を研究。社会心理学、コミュニティ
心理学の観点から、地域の問題解決について考える。著書に『影響力の武器−なぜ人は動かさ
れるのか−』
(誠信書房)、
『感情の社会的共有』
(ナカニシヤ出版)など。
2015.3.31
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