第70号 - 東邦大学医療センター大森病院

平成27年8月10日発行
メンタルヘルスセンター(精神神経科) 根本 隆洋 准教授(平成7年・慶應義塾大学卒)
包括的なメンタルヘルスと早期介入の取り組み
1.精神医学における早期介入
近年、職場や地域社会などさまざまな場面において、メンタルヘルスの重要性が認識されつつあります。国の医療計画に盛り
込むべき疾病に精神疾患が加えられ、がん、糖尿病などとともに「5大疾病」にも指定されました。その中で精神疾患の患者数
は最多に位置し、早期発見と早期治療に向けた体制の整備と拡充が喫緊の課題となっています。
私たちメンタルヘルスセンターは、本邦における先駆的な早期介入の実践を続けてきました。また、昨年の秋に国際早期精神
病学会(会長 水野雅文教授)を初のアジア開催として執り行い、精神病性疾患のみならず気分障害や不安障害も含めた、広範
囲にわたる精神保健や早期介入について活発な議論を重ねました。
2.
「うつ」の早期診断−光トポグラフィー検査の実施−
精神疾患の中でもうつ病をはじめとする気分障害は、今や診療科を問わず遭遇しうるcommon diseaseに位置づけられるも
のとなっています。うつ病の主要症状といえば抑うつ気分と意欲低下ですが、このような「抑うつ症状」は他の精神疾患にお
いてもよくみられます。光トポグラフィー検査は、抑うつ症状の鑑別診断、すなわち抑うつ症状がうつ病、躁うつ病、統合失調
症のいずれにより生じているのかを見極めるのに役立ちます。光トポグラフィーは近赤外線スペクトロスコピー(near-infrared
spectroscopy,NIRS)とも呼ばれ、近赤外光を用いて前頭葉から側頭葉にかけての血流量を非侵襲的に測定します。
うつ病と躁うつ病の鑑別は、その薬物療法が大きく異なるため非常に重要となります。従来の症候学的診断手法のみでは、本
来「躁うつ病」の患者さんであっても、初回躁病エピソードを呈するまでは「うつ病」として扱われ、結果として治療が後手に回る
という問題がありました。本検査によって、
「うつ病」と診断されていたが実は「躁うつ病」である可能性が強いというようなこと
がわかるようになりました。私たちは本検査を併用することで、早期に確実な診断を行い最適な治療の提供を目指しています。
3.ユースクリニックとイルボスコ
若者のメンタルヘルスにおいては、友人関係や就学環境などその世代特有の問題を十分に考慮し、それらに適切に対応できる
スタッフやプログラムが必須となります。メンタルヘルスセンターでは、若者に特化した専門外来「ユースクリニック」とユースデイ
ケア「イルボスコ」を実施し、専門的なケアやサポートを提供しています。従来は統合失調症やその前駆期にあたる精神病発症
危険状態(at-risk mental state, ARMS)を対象疾患としていましたが、多くのご要望にお応えするかたちで、少しずつ対象とす
る疾患を広げながらサービスの拡充を図っています。
4.急性期における認知リハビリテーション
統合失調症の認知機能障害に対するリハビリテーションは、これまで慢性期に施行されるのが専らでした。しかし、脳血管障
害や頭部外傷など身体科領域においては、十分な機能回復を達成するために、急性期からのリハビリテーションの重要性が強調
されています。メンタルヘルスセンターでは精神症状を十分に考慮した上で、入院後間もない急性期段階からの認知リハビリテー
ションを積極的に行っています。
メンタルヘルスセンターでは「リカバリー」を達成する具体的診断・治療手法として、
「早期介入」をキーワードに他にも様々な
取り組みを行っています。早期発見・早期治療の推進には、地域医療の先生方との連携が不可欠です。今後ともご指導とご協力
のほど何卒宜しくお願い申し上げます。
診療予約
診療日
診療のご予約は、下記までご連絡下さい。
診療日・診療時間をご案内いたします。
医療機関専用電話
パートナー
03−3762−6616(直通)
(受付時間 平日 8:30∼17:00、土曜 8:30∼14:00)
(休診日:第3土曜日・日曜日・祝祭日・年末年始・創立記念日6/10)
根本 隆洋 准教授:金曜日午前
東邦大学医療センター大森病院
Toho University Omori Medical Center
〒143-8541 東京都大田区大森西 6-11-1
03−3762−4151(代表)
http://www.omori.med.toho-u.ac.jp/
発行元:地域医療支援センター
平成27年8月10日発行
田中 友紀 作業療法士
メンタルヘルスセンター イルボスコ(精神神経科)(平成11年・早稲田大学卒)
若者のための早期治療デイケア“イルボスコ”
大森病院精神神経科デイケア“イルボスコ”は、精神疾患もしくはそのリスクを有する15∼30歳の若者への包括的
な早期治療やサポートを提供しており、先進的なモデルとして全国的にも注目されています。若者の心性に配慮した
エビデンスに基づくプログラムを多数揃え、早期精神病と呼ばれる精神病発症危険状態(ARMS)および初回エピ
ソード統合失調症(発症5年以内)への集中的な治療を主目的として取り組みを続けています。
イルボスコでは早期介入の専門スタッフが日常の活動中の関わりや個別面談、関係機関との連携などアウトリーチ
を通して患者さん個々の状態を評価し、それぞれの「できること」=「力」を大切にしていきます。そしてご本人・
ご家族・関係者と相談しながらその「力」が最大限発揮できるように環境調整していきます。対人関係技能は実際の
人との関わりの中で練習してこそスキルアップできます。イルボスコでは様々な集団活動による経験を通して「主体
性」「自己効力感」「対人交流技能」などの獲得・向上を目指し、レジリエンス(復元力)を育んでいきます。
就労支援 病気や生活の自己管理を主とした働くための下準備を行います。また平行してご本人の希望を引き出しな
がら、具体的な進路を一緒に決めていきます。雇用後も就労定着支援を行い、必要に応じて各種雇用支援制度の利用
などの調整も行います。
学校との連携 担任教諭と連絡を取り合い、常に情報共有をしています。また定期的に地域の養護教諭などの関係職
種にお集まりいただき、勉強会『城南ティーンこころのメンテ研究会』を開催しています。
認知機能トレーニング ゲームやペーパーワーク・各種ミーティング・運動・調理など活動全般を通じて、楽しみな
がら記憶力・集中力・遂行機能などの認知機能の改善を図ります。
SCIT(社会認知ならびに対人関係のトレーニング) 全20回の体系化されたプログラムにより、他者の意図や感情を
読みとる能力(心の理論)を含む、対人コミュニケーションを支え
る社会的な認知機能の改善を図ります。
心理教育 病気やストレス対処、栄養管理、薬の知識、社会資源な
どについて学び、主体的に地域生活を送るための技能を向上させて
いきます。
家族教室 定期的にご本人・ご家族・スタッフなどの皆で勉強会や
ディスカッションを行います。
これまでも地域の先生方から多くの患者さんを紹介していただき
ました。他の医療機関へ通院中でもご利用いただけます、どうぞお
気軽にご相談ください。今後とも宜しくお願い申し上げます。
診療予約
イルボスコ
診療のご予約は、下記までご連絡下さい。
診療日・診療時間をご案内いたします。
医療機関専用電話
パートナー
03−3762−6616(直通)
(受付時間 平日 8:30∼17:00、土曜 8:30∼14:00)
(休診日:第3土曜日・日曜日・祝祭日・年末年始・創立記念日6/10)
http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/
mentalhealth/index.html
東邦大学医療センター大森病院
Toho University Omori Medical Center
〒143-8541 東京都大田区大森西 6-11-1
03−3762−4151(代表)
http://www.omori.med.toho-u.ac.jp/
発行元:地域医療支援センター