5. 高血圧による OA変化:つくば高血圧モデルマウスを

近畿大医誌(M ed J Kinki Univ)第34巻3号
19A
2009
19A
5. 高血圧による OA 変化:つくば高血圧モデルマウスを用いた検討
山岸孝太郎
墳 本 一 郎
井 上 紳 司
橋 本 和 彦
赤 木 將 男
整形外科
【目的】
諸家の報告により,高血圧患者は変形性関節症の
発症率が有意に高いことが既に明らかとなってい
る.しかし,未だその機序の詳細は不明である.今
OARSI score を用いて評価した.また,関節軟骨変
性をⅡ型,
Ⅹ型コラーゲンの免疫染色にて評価した.
【結果】
回我々は,レニンアンギオテンシン系(RAS)を人
コントロールと THM の両者とも,強制走行負荷
により内外側コンパートメントの変性は経時的に増
為的に亢進させたつくば高血圧マウス(THM )を
加した.内側コンパートメントでは,コントロール
用し,高血圧症と,関節軟骨変性の関連を組織学的
と THM で変性の程度に有意差を認めなかった,外
に明らかとすることを目的とした.
側コンパートメントは,2・4週間の走行負荷では
【方法】
変性の程度に有意差を認めなかったが,6・8週間
C57BL6/Jc1 マウスにヒト・アンギオテンシノー
ゲン及びヒト・レニンをトランスジェニックして得
の走行負荷後では OARSI score は THM 群がコン
トロール群より有意に上昇した.また,THM 群では
られる THM に,トレッドミルを用いて11m/ ×
コントロール群に比べ2型コラーゲンの発現が有意
15 の強制走行負荷を隔日で加えた(n=6)
.負荷
後,2・4・6・8週で 殺し,左膝関節を摘出し
た.サフラニンOとファストグリーンの重染色を施
行 し,内 外 側 コ ン パ ー ト メ ン ト の 関 節 軟 骨 を
に減少し,Ⅹ型コラーゲンの発現は増加した.
【結論】
RAS 亢進による高血圧症は,変形性関節症進行の
危険因子である可能性が示された.
6. 乳児の湿疹に対する早期皮膚治療による食物アレルギー発症予防の可能性」
山 崎 晃 嗣
竹 村
豊
長 井
恵
竹 村
司
近畿大学医学部 小児科学教室
【はじめに】 近年,食物アレルギーの原因としての
皮膚炎という構図(=経皮感作)が注目され,乳児
期の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の え方は
180度転換したとも言える.さらに,皮膚治療による
アレルギー一次予防の可能性も示される様になって
きた.しかし“いつから”皮膚治療を開始すれば良
いのかについてはいまだ明らかでない.
【目的】 乳児の湿疹に早期から治療介入することで
食物アレルギー発症予防が可能か検討する.
【方法】 対象は湿疹を主訴に来院した乳児66人で,
カルテを用いて後方視的に検討した.皮膚炎の治療
には,ステロイドを用いたプロアクティブ療法を実
施した.食物アレルギー診断は,特異的 IgE 抗体
(卵
白,牛乳,小麦,大豆)測定を行ない,感作が認め
られないものは基本的に自宅での摂取を指示し,確
定診断は自宅での摂取確認の問診,もしくは食物負
荷試験を実施し,診断した.1歳半時に卵,牛乳,
小麦,大豆アレルギー発症の有無を離乳食開始前と
えらえる早期介入群(生後1∼4か月,33人)と
後期介入群(生後5∼11か月,33人)に けて比較
した.
【結果】 特異的 IgE 抗体感作は,早期介入群で12人
が卵白,牛乳,小麦,大豆の全てにおいて認められ
ず,後期介入群ではそれは4例と少なかった.初診
時の TARC は早期群で中央値3176pg/ml で,後期
群では1939pg/ml であった.食物アレルギー確定診
断に,66例中34例(早期群10例,後期群24例)に対
し負荷試験を実施した.食物アレルギー発症は早期
群で4例で,それに対し後期群では11例と発症数が
多かった(P<0.05)
.
【 察】 早期介入群では多くが食物感作を認めなか
ったため,多様性のある食生活(除去食品のない食
生活)
を離乳食開始時から送っている可能性があり,
これが食物アレルギー発症を抑えた可能性もあり,
皮膚治療のみが今回の結果に寄与したかは不明であ
る.しかし,乳児の皮膚炎は「乳児湿疹」と診断さ
れ,自然軽快する疾患として積極的な治療対象とな
らない現状を えた場合,今回の我々の結果がそれ
を改める契機となりうる可能性が えられた.
【結論】 乳児の湿疹に対して早期から積極的に皮膚
治療を行なうことで,食物アレルギー発症を抑制で
きる可能性が示された.