[第11回]花粉症

こどもの病気【第 11 回】
花粉症
【どんな病気】
さまざまな花粉がアレルギーの原因物質(アレルゲン)となって、鼻症状(く
しゃみ、鼻水、鼻づまり)や眼症状(かゆみや涙目、充血)、のどのかゆみや咳
などを起こす病気です。季節性アレルギー性疾患の代表的なものです。
1980 年代に爆発的に増加し、日本では約 25%の人に症状があるといわれてい
ます。代表的なものはスギ花粉症で、スギ花粉症の有病率は 13~16%、スギ以
外の花粉症が 10%程度と考えられていますが、最近スギ花粉症の増加が著明で
す。以前は大人に多かったですが、最近は思春期や学童、乳幼児にも増えてき
ています。
【原因】
通年性アレルギー性鼻炎の代表的な原因物質はハウスダストやダニ、動物の
毛やフケなどです。花粉症の原因として、世間ではスギやヒノキが常に注目さ
れますが、スギやヒノキ以外でも花粉症は起こります。スギは 1 月中旬から 5
月中旬に、ヒノキ科は 1 月後半から 5 月後半に開花します。そのほかにもハン
ノキ属は 1 月から 6 月に開花しますし、イネ科の植物は4月のはじめから 11 月
前半にかけて開花します。ブタクサ族は8月はじめから 10 月後半に、ヨモギ族
は 8 月後半から 10 月中旬までに開花します。これらは花粉症を引き起こす代表
的なものですが、他の花粉でも花粉症は起き得ます。
【症状】
鼻水がとめどなく出続けたり、鼻づまりを起こしたりします。こどもは鼻が
詰まっても口で息をしてあまり気にならないようです。常に涙目で、目のかゆ
みのため目を盛んにこすったり頻回にまばたきをしたりします。
【診断】
家族歴、アレルギー既往歴、発症年齢などが重要ですが、好発期と開花時期
を検討することである程度原因花粉が推測できます。くしゃみ、水性鼻汁、鼻
づまりがあり、鼻汁中にアレルギーに関与する好酸球が増えていたり、特異的
IgE 抗体が上昇していたりすると花粉症と診断されます。皮膚テストも利用され
ます。
スギ花粉症は症状的には 2~3 歳で起こしますが、多くの場合特異的 IgE 抗体
は 4 才ころまであがりません。
【治療】
抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の飲み薬、点鼻薬(抗アレルギー薬、抗ヒ
スタミン薬、ステロイド剤など)を使います。眼症状が強いときには抗アレル
ギー薬入りの点眼薬を使うと効果があります。目がかゆい為に目をこすりすぎ、
目の周りの皮膚があれている場合なども、点眼薬を使用することで触らなくな
り、改善が期待できます。
毎年同じ時期に症状を繰り返す場合は、花粉が飛ぶことが予測される前に受
診をし、前もって抗アレルギー薬を使用すると効果があります。
【ケア】
花粉を目や鼻に入れないことが予防にもケアにもなります。花粉症の人だけ
でなく、家族全員で花粉を家に持ち込まないようにすることが大切です。その
ための具体的な方策を示します。①花粉の多い季節は外出を控える。②外出後
は、すぐに衣類を脱がせシャワーを浴びさせる。③花粉が飛ぶ時期は窓を開け
っぱなしにしない。④花粉の飛ぶ時期は布団や洗濯物を外に干さないようにし、
外に干した場合はよくはたき、花粉を十分に落としてから取り込む。⑤表面が
つるつるして花粉がつきにくい素材の洋服を選ぶ。⑥マスクやめがねも有用で
す。以上のような点に注意して花粉症対策をしましょう。
行徳総合病院小児科 佐藤俊彦