認知症予防に対する作業療法士による介入―過去10

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原著
認知症予防に対する作業療法士による介入
−過去 年間の文献検討より−
中
梶
前
田
智
博
通
之
大
森
瀧
川
孝
誠
子
神戸学院大学 総合リハビリテーション学部
医療リハビリテーション学科
[要約]
年の厚生労働省による推計では、約
MildCognitiveImpairment
万人の高齢者が認知症や
MCI)に罹患していると推測されている。日本における認知症高齢者に対する援助内容の充実ととも
(
に、認知症予防への対策の充足は今後ますます必要である。本研究では、日本における認知症予防を目
的とし、作業療法士が関与した介入の現状を対象者及び評価尺度、介入内容、効果に関して、
年か
ら過去 年間の国内文献を調査及び整理した。この結果、介入内容では、語彙認識、属性分類、暗算な
どの認知機能面を直接的に刺激するアプローチと上肢拮抗動作やウォ−キングなどの身体機能面からの
間接的なアプローチによる介入がみられた。また、これら双方の介入を混合して行う介入もみられた。
Mini-MentalStateExamination(MMSE)、FrontalAssessmentBattery
効果においてはいくつかの報告で、
atbedside(FAB)などの認知機能に関する評価尺度の点数に有意な増加がみられた。また、片足立ち
検査や m通常歩行速度などの運動機能の改善やウォーキング回数などの生活習慣の肯定的な変化もみ
られた。しかし今回、渉猟しえた作業療法士が関与する認知症予防に対する報告数は
件と少なく、今
後の質の高い研究デザインによる複数の研究報告が期待される。
キーワード:認知症、認知機能低下、予防、作業療法
Ⅰ
充足させていく必要があると思われる。
はじめに
認知症予防に関しては、
年の厚生労働省による推計では、日本の
歳以上の高齢者における認知症有病率推定値は
年の介護保険制度
の改訂により、認知症予防事業も地域支援事業の
つとして推進され、日本の各自治体によるプロ
万人
グラム開発や実施等の取り組みが行われている。
と報告されている。また、全国の
MCIの有病率の
これら各自治体で行われている認知症予防のプロ
推定値も %、有病者数約
グラムには、ウォーキングなどの運動プログラム
%に達しており、認知症有病者数は約
万人とされ、約
万人の高齢者が認知症や
MCIに罹患していると推
やメニューを考えレシピまで作成して行う料理活
測されている[
]
。日本にとって、認知症のあ
動、グループにより行われる回想法、行き先の情
る高齢者への医療と福祉による援助の充実と発展
報収集や計画を立てることから実施する旅行、簡
は、今後ますます重要であり、高齢者に対する認
単な読み書きや計算などが行われている。また、
知症予防に関する援助内容の今後の発展も同時に
小学校や児童クラブで絵本の読み聞かせを行う、