155 原著 認知症予防に対する作業療法士による介入 −過去 年間の文献検討より− 中 梶 前 田 智 博 通 之 大 森 瀧 川 孝 誠 子 神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 医療リハビリテーション学科 [要約] 年の厚生労働省による推計では、約 MildCognitiveImpairment 万人の高齢者が認知症や MCI)に罹患していると推測されている。日本における認知症高齢者に対する援助内容の充実ととも ( に、認知症予防への対策の充足は今後ますます必要である。本研究では、日本における認知症予防を目 的とし、作業療法士が関与した介入の現状を対象者及び評価尺度、介入内容、効果に関して、 年か ら過去 年間の国内文献を調査及び整理した。この結果、介入内容では、語彙認識、属性分類、暗算な どの認知機能面を直接的に刺激するアプローチと上肢拮抗動作やウォ−キングなどの身体機能面からの 間接的なアプローチによる介入がみられた。また、これら双方の介入を混合して行う介入もみられた。 Mini-MentalStateExamination(MMSE)、FrontalAssessmentBattery 効果においてはいくつかの報告で、 atbedside(FAB)などの認知機能に関する評価尺度の点数に有意な増加がみられた。また、片足立ち 検査や m通常歩行速度などの運動機能の改善やウォーキング回数などの生活習慣の肯定的な変化もみ られた。しかし今回、渉猟しえた作業療法士が関与する認知症予防に対する報告数は 件と少なく、今 後の質の高い研究デザインによる複数の研究報告が期待される。 キーワード:認知症、認知機能低下、予防、作業療法 Ⅰ 充足させていく必要があると思われる。 はじめに 認知症予防に関しては、 年の厚生労働省による推計では、日本の 歳以上の高齢者における認知症有病率推定値は 年の介護保険制度 の改訂により、認知症予防事業も地域支援事業の つとして推進され、日本の各自治体によるプロ 万人 グラム開発や実施等の取り組みが行われている。 と報告されている。また、全国の MCIの有病率の これら各自治体で行われている認知症予防のプロ 推定値も %、有病者数約 グラムには、ウォーキングなどの運動プログラム %に達しており、認知症有病者数は約 万人とされ、約 万人の高齢者が認知症や MCIに罹患していると推 やメニューを考えレシピまで作成して行う料理活 測されている[ ] 。日本にとって、認知症のあ 動、グループにより行われる回想法、行き先の情 る高齢者への医療と福祉による援助の充実と発展 報収集や計画を立てることから実施する旅行、簡 は、今後ますます重要であり、高齢者に対する認 単な読み書きや計算などが行われている。また、 知症予防に関する援助内容の今後の発展も同時に 小学校や児童クラブで絵本の読み聞かせを行う、
© Copyright 2025 ExpyDoc