心神喪失者等医療観察法制度における専門的医療の向上のための

研究課題
課題番号
主任研究者
心神喪失者等医療観察法制度における専門的医療の向上のためのモニタリングに関す
る研究
H17-こころ−010
国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部 部長
吉川 和男
1.研究目的
本研究は、医療観察法の成立に伴い新設された精神保健研究所司法精神医学研究部を中心に、医療観
察制度に関わる種々の機関からの情報を統合的に収集管理し、専門的な見地からの評価と分析を加え、
その結果を関係機関に定期的にフィードバックすることによって、同制度の専門的医療の向上を図る
と同時に、5 年後の制度改正の際に必要とされる客観的なデータを集積、提供することを目的とする。
2.研究方法
データは毎月診療報酬明細書にその写しが添付されることになる、
「入院処遇ガイドライン」記録等の
標準化による関係するシート、及び「通院処遇ガイドライン」記録等の標準化による「指定通院医療
機関における多職種チーム会議において整備すべき情報」のうち氏名等の個人が特定されるものを除
いた情報について、開発したデータベース・システムを用いて収集する。これらのデータは司法精神
医学研究部で分析され、精神医学、法学等の専門家よって構成される外部評価班での評価を経た上で、
制度上の問題点や具体的な改善計画が示され、関係機関や関係省庁に定期的に報告されることになる。
3.研究結果・考察
医療観察法の入院及び通院処遇ガイドラインにおいて記録の標準化のために厚生労働省によって定
められ、かつ、診療報酬明細書に添付しなければならない対象者の処遇状況を記録する各種シートを
データベース化するソフトウェアの開発を進め、全国の指定医療機関に配布またはホームページ上で
ダウンロード可能とし、各種シートの普及啓発に努めた。また、全国の指定医療機関に上記ソフトウ
ェアを用いた研究の協力を要請し、入院 6 施設、通院 40 施設より協力を得、うち入院 6 施設、通院
20 施設より対象者 190 名のデータを回収した(現在も回収中)。収集したデータ項目には、処遇決定
に至る経過、医療機関での介入内容、被害者の状況等、医療観察法による入院および通院処遇の概況
を知る上で重要な項目が含まれており、これらによって得られる結果の有用性が示唆される(現在、
解析中)。
医療観察法附則第3条には、
「政府は指定医療機関における医療が、最新の司法精神医学の知見を踏
まえた専門的なものとなるよう水準を高めるよう努めなければならない」と規定されているが、本研
究によって、各指定医療機関の医療水準を適切に把握することが可能となると考えられた。また、 同
法附則第4条には、
「同法施行後5年を経過した時点で、政府は法律の施行状況の把握、国会への報告、
検討、および法制の整備等を実施しなければならない」と規定されているが、本研究によって分析さ
れた問題点は、施行 5 年後の法の見直しに向けての貴重な資料となるなど、行政施策へ大きく貢献す
る可能性が示唆される。
4.結論
医療観察法の入院及び通院処遇ガイドラインにおいて記録の標準化のために厚生労働省によって定め
られ、かつ、診療報酬明細書に添付しなければならない対象者の処遇状況を記録する各種シートをデ
ータベース化するソフトウェアの開発を進め、全国の指定医療機関に配布またはホームページ上でダ
ウンロード可能とし、各種シートの普及啓発に努めた。全国の指定医療機関に上記ソフトウェアを用
いた研究の協力を要請し、入院6施設、通院40施設より協力を得、うち入院 6 施設、通院 20 施設よ
り対象者 190 名のデータを回収した。収集したデータ項目には、処遇決定に至る経過、医療機関での
介入内容、被害者の状況等、医療観察法による入院および通院処遇の概況を知る上で重要な項目が含
まれており、これらによって得られる結果の有用性が示唆された。