赤核脊髄路の発生学的研究 Ⅲ 生後 日目マウスの赤核

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原著
赤核脊髄路の発生学的研究 Ⅲ
生後 日目マウスの赤核の神経回路
栢
原
哲
郎、小
形
晶
子
神戸学院大学 総合リハビリテーション学部
医療リハビリテーション学科
[要約]標識物質としてビオチン化デキストランアミンを生後
日目(
P )のマウスの赤核に注入し、
P )の赤核からの順行性および逆行性投射について観察した。赤核から視床に上行
する標識線維群はP や成体マウスとほぼ同じ神経核や領域、つまり視床外側腹側核、視床束傍核、視
床中心傍核、不確帯などに投射していた。しかしP マウスで観察されたような視床の反対側へ侵入す
生存期間
日後(
る多量の線維束や視床外側腹側核からさらに周辺部に広がっていくような、発生初期に見られる一時的
P マウスとほ
な投射線維群はもはや観察されなかった。一方、赤核から脊髄へ下行する標識線維群も
P マウスでは仙髄レベルにまで到達し、そこから脊髄の灰白質に侵入する軸索
側枝も下位腰髄レベルまで見られた。このP マウスでは、頚髄レベルで、赤核脊髄路からほぼ直角に
ぼ同じ下行路を通り、
脊髄灰白質に侵入した軸索側枝が枝分かれをくり返しながら脊髄灰白質のⅤ層∼Ⅵ層に広がっていた。
そのⅤ層∼Ⅵ層の内側部では分枝した軸索側枝の途中からさまざまな形をした突起や小さな枝を出し、
シナプスの形成を示唆するような構造物も観察された。軸索側枝の中には、Ⅸ層の運動ニューロングルー
P マウスで観察
プに直接枝を出すものも観察された。胸髄や腰髄レベルでは、観察された軸索側枝も
されたそれらに比べると、軸索側枝からでる突起や小さな枝の数もはるかに多数でしかも多様な形態を
していた。仙髄レベルでは、赤核脊髄路中の軸索も、そこから分枝する軸索側枝もともに大小様々な数
珠状の線維で構成され、腰髄レベルまでの線維と比べて、かなり未熟な状態にあるのが観察された。
P マウスでは、すでに赤核は視床核や脊髄など成体とほぼ同じ投射領域と神経連
以上の結果より、
絡をもち、しかも脊髄内では赤核からの軸索側枝と脊髄の脊髄灰白質のⅤ層∼Ⅵ層やⅨ層に分布する介
在ニューロンや運動ニューロンとの間でシナプス形成が始まっていることが明らかになった。
BDA、幼若動物、赤核脊髄路、シナプス形成、軸索側枝
キーワード:
Ⅰ
多少の違いはみられるが、赤核の大細胞部に起始
まえがき
し、腹側被蓋交叉で反対側に移り、反対側の脊髄
赤核は大脳皮質や小脳からの入力を受けなが
側索中を下行し、屈筋の運動ニューロンに投射す
ら、上行性には視床へ、下行性には赤核脊髄路と
ると言われている[
して脊髄へ投射している[
ビオチン化デキストランアミン(
,
,
]
。赤核脊
髄路は、実験動物の種類や実験方法の違いにより
]。我々も標識物質として
BDA)を用い
て、成体マウスの赤核の神経回路を調べ、報告し