年金未加入と生活保護モラルハザードに関する実証分析 菅 桂太† 要旨 『 公 的 年 金 制 度 に 関 す る 意 識 調 査 』( 平 成 18 年 5 月 ) に よ る 独 自 調査結果を用い、生活保護制度に頼ることのないよう将来へ備える という自助努力の水準を測るための代理指標を構築し、検証可能で 社会的に望まれている自助努力(国民年金加入行動)への影響を計 測することで、 「 生 活 保 護 モ ラ ル ハ ザ ー ド 仮 説 」を 実 証 的 に 検 証 し た 。 制御関数法を用いて、年金非納最適反応行動が系統的に異なる属性 では説明されない利得の増加を通じ、生活保護モラルハザード意図 が非納率を高めることを明示的に取り扱った計測を行い、年金非納 率をモラルハザードがない場合とモラルハザードの寄与に分解した。 その結果、主体の観察される属性による年金非納からの利得の増加 はほとんどなく、利得の大部分はそれらの属性では説明できない部 分 か ら 発 生 し て お り 、現 在 の 年 金 非 納 率 の う ち 2 割 弱 が 将 来 生 活 保 護に頼ることをあてにしたモラルハザードに起因する可能性がある ことが明らかになった。 † 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 、 電 子 メ ー ル su g a - k e i t a @ i p s s . g o . j p キーワード: 生活保護モラルハザード仮説、政策評価 JEL 分 類 : H55, C15, C14 本稿は総合研究開発機構における「年金制度と個人のオーナーシップ」 研 究 会 で の 筆 者 の 研 究 報 告 に 基 づ く も の で あ る 。本 稿 の 議 論 は 著 者 個 人 の 考 え に し た が っ た も の で あ り 、所 属 機 関 等 を 代 表 す る 主 張 で は な い 。誤 り は 筆 者の責に帰す。 1
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