“思いの連携”軸のオムニコマースへ

昭和54年4月24日第三種郵便物認可 週1回月曜日発行
WWDジャパン
2016年
(平成28年)7月25日
(月曜日)
発行 vol.1928
25
勝利の方程式
販売チャンスの四次元化
SHIBUYA109が ECサイトを10月に大幅リニューアル
“思いの連携”軸のオムニコマースへ
東急モールズデベロップメント
(以下、TMD)は10月、SHIBUYA109のECサイトを大幅リニューアルする。パートナーには、ストライプインターナショナル、ウィゴー、ジャパ
ンイマジネーションなどの自社 ECフルフィルメント支援を運営するAMSを選定。各館のオフィシャルサイトとECサイトを統合、オウンドメディアとの連携強化など新しい試
みをふんだんに取り込んだリニューアルには、
どのような狙いがあるのか。リニューアルをけん引するキーパーソン3名に聞いた。
PHOTO BY MAYUMI HOSOKURA
WWDジャパン
(以下、WWD)
:今回のECサイ
トリニューアルの経緯は?
沢辺亮TMD ICT戦略部シニアマネジャー
(以
下、沢辺)
:SHIBUYA109のEC事業は2004
年と比較的早い時期からスタートし、ブームの
後押しもあって12年頃までは順調に成長でき
た。だがテナントの自社ECの立ち上げやスマー
トフォンの普及などでデジタルの流れが変わり、
そこに対応できていなかった。TMDとしても
SHIBUYA109事業全体を見直す中で、EC事
業は撤退も含め抜本的に検討することになった。
座談会出席者
WWD:いろんな改良パターンがあったと思うが
(左)
近悟/
AMS事業推進本部 運営管理部 副部長
特に重視したところは。
野田大介ECコンサルタント
(以下、野田)
:EC
は在庫をどれだけ確保できるかにかかってい
(中)沢辺亮/
東急モールズデベロップメント
(TMD)
ICT戦略部 シニアマネジャー
る。しかし相談を受けた時に、TMD側が真
(右)野田大介/ECコンサルタント
サイトで売り上げの実績だけを考えるなら、実
剣に撤退も視野に入れていると知り、本質的な
“SHIBUYA109らしさ”
を徹底的に議論した。外部からす
WWD:そうなるとショップスタッフの活用も重要になるが。
組めていないブランドが多い。こちらもSNSと同様に、力
ると、
SHIBUYA109の最大の強みはカリスマ店員を輩出し
沢辺:スタッフが活躍する場をリアルだけでなく、ウェブ上で
を入れたいがさまざまな事情でできていない会社が多かっ
てきた
“人”
。その部分をどうデジタルと絡め、ECサイトに生
もしっかり作りたいと思っている。今カリスマ店員はいない
た。350以上のアパレルブランドのEC機能・サービス開発
かしていくかを重視した。
といわれるが、SNS上ではインフルエンサーレベルの影響
と実運用を提供してきたAMSをパートナーとしたことで、
WWD:AMSをパートナーに選んだが、
その理由は?
力を持つ販売員は今でも多い。お互いにその立場を活用し
SHIBUYA109らしく、ECでもブランドのインキュベーショ
沢辺:SHIBUYA109に出店しているテナントの自社ECを
合い、ファンを増やしていければよいと考えている。そのた
ン支援につながる動きができたのは大きな成果だ。
多く受託運用し、実績とノウハウがあったことが大きい。だ
めSNSで使えるコーディネート画像はプロカメラマンに入っ
近:売上規模は小さくてもEC事業拡大やオムニチャネル化
が、
決め手になったのは、
重要な在庫の問題を立ち上げ時か
てもらい、
毎週店頭で撮影を行うことも考えている。
を進めたいという相談はこれまでも少なくなかったが、やは
ら解決できるだけでなく、当社のターゲットであるデジタル・
近:ECサイトに訪問する人の80%はコーディネート経由とい
り条件のすり合わせが難しく、こちらとしても歯がゆい気持
ネイティブ世代に対しての知見があったこと。
うケースもある。随時コーディネートを上げてもらうことは
ちがあった。今回のプロジェクトをベースに、弊社としても
WWD:AMSから見たリニューアルのポイントは?
大切で、
さらには商品へきちんとひもづけできればベストだ。
そういったブランド支援に取り組めたことは非常にありがた
近悟AMS事業推進本部運営管理部副部長
(以下、近)
:
沢辺:写真とともにアップする内容やそれを書く時間も大切
い。今回のプロジェクトでは、これまでやりたくてもできな
ECサイトの来訪ユーザーはコーディネートを閲覧する傾向
で、SNS勉強会などを定期的に行う予定だ。また、
スタッフ
かったことに取り組むいい機会になっている。
が強く、当社のクライアントのECサイトでも、コーディネー
の接客以外に取られる業務時間を短縮するための環境整
野田:ECやオムニチャネルコマースというと、便利さやシス
ト経由の導線ログが一番多い。全国に発信力のある109ス
備をする必要もあると考えている。他にもECの売り上げ
テムの効率性ばかりが注目されてきたが、本来は、店頭で重
タッフコーディネートとECの連動は、ユーザーにとって非常
をスタッフに還元できる仕組みを作り、スタッフのモチベー
視されてきたショッピング体験のような、
接客やこの人から買
に魅力的であり、SHIBUYA109らしいと感じた。僕らか
ションにつながる施策もあればと考えている。
いたいという
“思いの連携”
だ。今回のリニューアルで、EC
らすると最大のポイントは、ECサイトと館のオフィシャルサ
近:店頭に在庫が無い場合、タブレットなどを使い店頭から
の新しい形を実現したいと思っている。
イトの統合、そしてオウンドメディアの
「109ニュース」との連
ウェブで買えるような仕組
携を図ること。これはEC業界でもかなり画期的なことだ。
みもTMDと一緒に考えて
SHIBUYA109やブランド、商品に興味のある人まで、あら
行きたい。店頭の売り上
ゆる導線をECにつなぎ込めるようになる。例えば2年前か
げが減ることを危惧し、店
らデジタル・ネイティブ世代に向けて情報発信してきた
「109
舗スタッフはEC送客に消
ニュース」を活用すれば、これまでニュースとして見せるだけ
極的な傾向があるが、評
で終わりだった展示会レポートも、ECと連動させられれば
価制度があれば店舗での
先行予約会を実施できたりする。AMSのクライアントでも
売り上げと同様に積極的
ECですでに先行予約会で実績を上げている。
なEC誘導を行い、小売事
沢辺:展示会はどこも同じタイミングなので、1社だけでな
業体としての全体売り上げ
く展示会特集という記事にして見せていくこともできるだろ
アップに直結するためだ。
う。
「109ニュース」自体は10社くらいの提携媒体がある。単
WWD:テナントがECに
にECサイトへユーザーを流すだけでなく、話題性のある記
取り組みやすくなるECシス
事を提携媒体に出すことによって、
情報拡散もできる。
テムの新サービスプランを
野田:例えばギャルが社長になるだけでもニュースになる
考えているとのことだが。
ように、それに近いことができると考えている。それほど
沢辺:人手や知識がない
SHIBUYA109という場所が持つ価値は高い。
ということで、ECに取り
AMS
キーワード
① ECサイト、各館のHPの統合と
オウンドメディアとの連携強化
各館サイト
ECサイト
109ニュース
統
合
館のフロアガイドやアクセス情報などを掲載するオフィ
シャルサイトとECサイトを統合するのは、他のファッ
ションビルやショッピングセンターが運営するECでは
初めてのこと
② 販売員
(109各ショップ店員)
のSNS
渋谷109の強みはなんといって
も販売員。ファッションインフ
ルエンサーのような存在が多く、
ツイッターやインスタグラムの
フォロワーは5000以上もザラ
「スワンキス」の販売員ぴかぷぅ
のツイッターフォロワーは5万
6000人以上
③ AMSの
「ライトECフルフィルメントプラン
(仮)
」
リアル店舗での直営店に当たる自社 ECサイトの開設は、EC
だけでなく、ブランド全体の成長を目指す上で、今最も重要な
事業の一つ。SNSなど消費者とブランドとの直接的な接点
が増えている今、自社 ECサイトの開設はますます重要になっ
ている。販売力や情報発信力の高い SHIBUYA109の ECサ
イトとブランド側の自社 ECサイトの開設がセットになれば、
ブランド側にとっては109と自社 ECでの企画連動や、在庫一
元管理による販売機会の最大創出、業務効率化など、事業全
体で後方支援を得ることになる。AMS「ライトECフルフィル
メントプラン
(仮)
」の詳細は後日発表される予定
社名:AMS /設立:2007年7月/所在地:東京都渋谷区東2-16-10 ヤナセ渋谷ビル4F /業務内容:eコマースのフルフィルメントサービス、eコマース
のセレクトショップ事業/ URL:http://www.amsinc.co.jp
問い合わせ先:AMS 事業推進本部 03 - 6427-2507/企画・制作:WWDジャパン