感染症研究の今後の在り方に関する検討会 報告書の概要

感染症研究の今後の在り方に関する検討会
報告書の概要
背景
○現在でも、世界中で三大感染症の死者は年間300万人を越え、さらにエボラ出血熱等の新興感染症が
世界的に猛威をふるい、国際社会に大きな衝撃を与えている。 また抗菌薬に耐性を持った薬剤耐性
(AMR)微生物の脅威も世界的に拡大している状況にある。
○こうした状況の中、策定された「国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本計画」(平成28年
2月 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議決定)、「薬剤耐性(AMR)アクションプラン」(平成28
年4月 同会議決定)等において、感染症研究や感染症人材育成を更に強化すべきとの指摘がなされた
ことから、感染症研究の今後の在り方を検討するため平成28年5月に本検討会を設置した。
感染症研究を取り巻く課題
○我が国にはBSL4病原体を取り扱う研究施設がなく、デメリットが大きい。国民の生命・健康の保護、国
の危機管理等の観点から、安全性の確保に最大限配慮したBSL4施設の整備が期待される。
○薬剤耐性微生物に対応した薬剤のニーズは高いものの、科学的には新規標的のシーズ枯渇、製薬企
業の抗菌薬からの撤退という事態に直面しており、産学連携により革新的な薬剤開発が期待される。
○感染症研究を推進する上で、多様なバックグランドの研究者の確保が重要であるが、とりわけ、医学部
の微生物学関連教室では人材の枯渇化が深刻化しており、人材確保を図ることが急務となっている。
新規プログラムの役割・目的
○BSL4病原体や薬剤耐性微生物等の様々な病原体の感染原理及びそれらが引き起こす免疫応答や疾
患形成機序の解明を通じて、革新的な新規感染症治療法の開発へとつながる基礎的・探索的研究の
推進を通じ、次世代育成とともに、国際的に貢献できる成果の創出を図る。
○幅広い病原体や感染症を対象とし多様性を確保するとともに、構造生物学等の他領域の研究者が参
入し、分野横断的に連携することで新たなブレークスルーを生み出すことが期待される。
感染症研究の今後の在り方に関する検討会
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感染症を克服するための研究領域等の例
○病原体-宿主因子の相互作用及び感染制御機構等の探索研究
病原体と細胞内オルガネラとの相互作用、細胞内での増殖などの感染成立過程に着目した研究、常在
菌・真菌・ウイルス叢(マイクロバイオーム)の役割などの宿主感染制御機構の解明、クオラムセンシング
転写因子の制御による病原性発現メカニズムを標的とした研究を行う。
○ AMR (薬剤耐性)に対する診断・治療法の探索研究
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)等のグラム陰性菌の外膜透過性に注目した研究やiChip
(isolation Chip)等の新規手法を利用した土壌細菌等の天然化合物の研究、ファージ治療等の代替手法
を利用した新たな概念の薬剤開発に向けた研究を行う。
○BSL4ウイルス感染症を対象とした予防・治療・診断法の探索研究
エボラウイルス等のBSL4ウイルスは、標的探索や治療法、ワクチン開発等において、その特殊性から他
のウイルスとは異なる手法を用いる必要が生じることがあることから、BSL4ウイルス感染症について独
立した領域として研究を行う。
○宿主の防御機構を回避する感染症成立の分子基盤に関する探索研究
ジカウイルスによる小頭症等、免疫系などを含む宿主の多様な感染防御機構を回避して成立する感染病
態の分子基盤の解明により新たな治療標的につなげる。
○感染症研究に係る人材育成
BSL4病原体を取り扱う若手研究者の育成のためのプログラムや、リサーチマインドを持った感染症専門
医を育成するためのプログラムを設ける。