自閉スペクトラム症患者の 自伝的記憶の語りの言語処理 荒牧英治(京大/さきがけ) 四方朱子 (京大) 宮部真衣 (京大) 臼田泰如 (京大) 浅田晃佑 (東大) 綾屋紗月 (東大) 熊谷晋一郎 (東大) 心理的障害と語りの関連研究 • 多くは質的研究→研究者の内省に頼ると ころが大きい • 近年では,定量的研究にも注目 • 特に自伝的記憶の概括化現象が注目 Overgenerality of autobiographical memory; OGM – 心理的障害を持つと具体的な日付や時間を欠 いた抽象的な記憶を語る傾向 – 仮説:忌避記憶からうけるネガティブな影響 を制御するため (感情制御仮説) Emotion Regulation Hypothesis Williams, J. M. G., Stiles, W. B. & Sharpiro, D. 1999 Cognitive mechanisms in the avoidance of painful and dangerous thoughts : elaborating the assimilation model. Cognitive Therapy and Research, 23, 285-306. 自伝的記憶テスト Autobiographical Memory Test;AMT 学校? • 自伝的記憶の特定化や概括化を測る 方法 自転車で大晦日に • 一般的な手続き – 手がかり語が提示され(「幸福な」 「悲しい」「学校」など) – 一定時間(60秒)特定の記憶を語る – 記憶に特定の時間や場所が含まれてい るかどうかをコーディング – 特定の記憶の割合を計算 橋の上で転倒した 自転車で 1時間かけて 通学していたよ • 過剰な概括化が心理的障害と関連 Williams, J. M. G., & Broadbent, K. 1986 Autobiographical memory in suicide attempters. Journal of Abnormal Psychology, 95, 144-149. 鬱病 トラウマ PTSD 摂食障害 季節性情動障害 末松弥歩, 心理的障害をかかえた人における自伝的記憶の概括化と特定化に関する研究 の動向, 生老病死の行動科学, 2009 従来の制約と 本研究のアプローチ • (1)実験室環境での語り – 自由な発話(当事者研究会での語り) • (2)人手によるコーディング – 自動測定できる尺度(NLPによる語彙指標) • (3)対象をASDに 概要 • • • • • • 背景 & 目的 材料 手法 結果 考察 おわりに • 大人の発達障害のためのピアサポート施設(東京) • 「自分の経験を言葉で語り,仲間の言葉を互いに聞くこ とで経験を共有し,新たな表現方法を発見していく」 回数 第28回 第29回 第30回 第35回 第36回 第38回 第39回 第47回 第48回 第51回 開催のテーマ 仲間と暮らす 一人の時間と空間 パートナーと暮らす スケジュール管理が苦手 さみしくて耐えられない うまく聞こえない 記憶の痛み 先延ばし 頼れる頼れない うまく眠れる起きられる 開催日 2012年09月03日 2012年09月19日 2012年10月01日 2012年12月19日 2013年01月07日 2013年02月04日 2013年02月20日 2013年06月19日 2013年07月01日 2013年08月21日 • ミーティングのスタイルは以下である – 参加者がひとりずつ順番に話し役になる – 毎回決まったテーマにそって,自分の経験や思いな どを語る.テーマは表1のとおり – 語りの時間は3分間 – 他の者は話を傾聴し,感想を述べたり助言をするこ とは行わない(「言いっぱなし」「聴きっぱなし」 の原則) • 2012年9月3日〜2013年8月21日の10回の会合に参 加した16名 • 1回の平均発言語数は約1412.8文字 • 平均4.3回参加 自閉スペクトラム症(ASD) • 日本人の100人あたり6.5人がASDであるとさ れ,高血圧や糖尿病とならぶコモンディジー ズ • 2つの特徴によって定義される発達障害 – 社会的コミュニケーションと社会的相互作用にお ける持続的な欠損 – 行動,興味,活動の限局的かつ反復的なパターン • <語り>において症状が観察されうる →心理的障害における<語り>の重要性 American Psychological Association 2013 SRS™-2と実験協力者背景 The Social Responsiveness Scale™, Second Edition • SRS-2は自閉症スペクトラムの社会的生きづらさに注目 した評価 • 5つの処遇下位項目とDSM-5に一致する下位項目2つ (うち1つは処遇下位項目と同じ)からなる A群 B群 重度 中等度,軽度,正常 (SRS2スコア76以上) (SRS2スコア76未満) 性別 男性3名,女性7名 男性4名,女性1名, その他1名 年齢 平均46.1歳 (SD 8.2) 平均40.2歳 (SD 5.2) 他の疾患 ADHD陽性7名 陰性3名 ADHD陽性5名 陰性1名 概要 • • • • • 背景 & 目的 材料 手法 結果 考察 さまざま言語能力の測定法 と本研究の測定法 行為 測定項目 話す 語彙量 読む 語彙のレベル 聞く 文法の複雑さ 書く 表現の丁寧さ 本研究は 実験室環境で ない 話された テキストを 書き起こし 語彙の指標を 計算する 今回導入した4つの指標 指標 略記 説明 単位 対象 日本語学習辞書レベル JEL 語彙の難しさ 単語 語彙能力 特殊性 FPU 語彙の特殊性 単語 語彙能力 具体性 NER 固有名詞の割合 単文 語彙能力 タイプ・トークン割合 TTR 語彙の量 文章 語彙能力 ※ 本研究で開発した指標 (1) 具体性 (2)TYPE・TOKEN割合 Named Entity Ratio (NER) Type Token Ratio (TTR) • 固有名詞の割合 =固有名詞数÷全名詞数 Token(延べ)÷Type(異なり) この値が大きいほど,語彙量が 多い (3) 日本語学習語彙レベル Japanese Educational Lexicon Level (JEL) • 語彙の難易度を示す • 難易度は日本語学習辞書に収載されてい る語彙レベルを用いた example • JELが計算できたもののうち レベル LEVEL6 愛敬 LEVEL3(中級)以上の割合 LEVEL5 愛国 LEVEL4 愛犬 • JEL=|LEVEL >2| ÷ |LEVEL| LEVEL3 愛情 LEVEL2 合う LEVEL1 会う 砂川有里子, 学習辞書編集支援データベース作成について -『学習辞書科研』プロジェクトの紹 介」. 日本語教育連絡会議論文集, 2012. 24. (4) 頻度・使用者比(≒特殊性) Frequency per User Popularity (FPU) • ソーシャルメディア10万人 の発言を8ヶ月間調査 • 語の出現頻度の順位 Rfreq • 語のユーザ数の順位 Ruser • RFPU= Rfreq÷Ruser – 値が低い → 一般的 – 値が高い → 特殊な語 • FPU=|RFPU >1.4| ÷ |RFPU| Eiji Aramaki, Sachiko Maskawa, Mai Miyabe, Mizuki Morita and Sachi Yasuda: A Word in a Dictionary is used by Numerous Users, International Joint Conference on Natural Language Processing (IJCNLP2013), 2013 (2013/10/18, Nagoya, Japan). 概要 • • • • • 背景 & 目的 材料 手法 結果 考察 男性3名,女性7名 男性4名,女性1名 JELの男女差 男性の方が難しい語彙を 使う傾向 男性のみでみても,B群 が難しい語彙を使う傾向 SRS下位項目との相関係数 社会的気づき (Social Awareness; AWR) 社会的認知 (Social Cognition; COG) 社会的コミュニケーション (Social Communication; COM) 社会的動機付け (Social Motivation; MOT) 限定された興味と反復行動 (Restricted Interests and Repetitive Behavior; RRB) 社会的コミュニケーションおよび相互作用 (Social Communication and Interaction; SCI) JEL FPU -0.14 0.132 -0.622 ** -0.14 -0.295 -0.23 -0.489 * -0.483 * -0.287 0.037 -0.466 * -0.274 ASD者の語り • 重度ASD者がNER(固有名詞割合)が高 い – 解釈1:NERは語りの特定性(⇔概括化)と 無関係 – 解釈2:ASD者の語りは高い特定性をもつ • 重度ASD者が語彙の難易度が低い – 特に社会的認知と相関 – スクリーニングやフィードバックへの応用可 能性 概要 • • • • • • 背景 & 目的 材料 手法 結果 考察 おわりに 考察 • 今後の課題 • ★ 固有名詞(NE)時間表現 ASD者の語り (H27は書き起こし) (H28は音声認識) 抽象名詞の判定 語彙特殊性 語彙難易度 Thank you Role of Authors 荒牧 (総括/執筆/実装) 四方 (実験/統計/執筆) 渡部 (実験/実装) 熊谷 (統計/医学アドバイス) 他 (アドバイス) Acknowledgement 島本 議論 COI掲示 本研究遂行にあたって開示すべき 関係にある企業はありません http://mednlp.jp
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