米国MLP市場の現状と今後の見通し

2015年11月20日
投資情報室
米国経済・株式市場情報
米国MLP市場の現状と今後の見通し
 米国のMLP市場で天然ガス生産の動向は原油と同様に重要。その生産量は今後中長期的に増加していく見込み
 原油の輸送手段が鉄道輸送からパイプライン輸送へ移行していることは、原油パイプライン輸送量に対して良い影響
 中流MLPの配当は、過去の設備投資がキャッシュフローの拡大に寄与し増配基調が続くと期待
 MLPを含む中流エネルギー企業の社債利回りは安定して推移。中流MLPは社債を通じた有利な資金調達が可能
今後の天然ガス生産量は、原油価格の動向に関
わらず、中長期に亘って増加していく見込み
2014年半ば辺りから原油価格が大きく下落したため、
原油生産の動向に目が向きがちになりますが、米国の
MLP市場を見る上では、天然ガス生産の動向も原油と同
様に重要です。米国のMLP市場では、エネルギーのパイ
プライン輸送及び、集積・処理等を行う中流事業が8割
以上を占めます。中でも天然ガス事業の割合が比較的
高いため、天然ガス生産の動向はMLP市場に大きな影
響を及ぼすものと考えられます。
今後の米国の天然ガス生産量は中長期に亘って堅調
に推移していく見込みです(図1)。天然ガス価格の下落
や、石炭よりも環境負荷が低いことなどを背景に、発電の
ための燃料としての天然ガスの需要が高まっています。ま
た、石油化学産業などの製造業における安価な天然ガ
スの使用量の増大、今後の米国の液化天然ガス(LNG)
の輸出なども天然ガス需要の押し上げ要因となっていくこ
とが期待されます。
図1:米国の天然ガス生産量の見通し
60
予測値
高資源ケ ース
50
原油価格が上昇した場合
40
基準見通し
30
原油価格が下落した場合
20
10
2 0 13年
0
2005
2040
(年)
(出所)EIA Annual Energy Outlook April 2015、2005年~2040年
※高資源ケース:シェールガス、タイトオイル等の非在来型資源に関
する推定究極回収量が基準見通しに比べて高い場合
2010
2015
2020
2025
2030
2035
図2:原油パイプライン輸送量とシェア
35
今後の原油パイプライン輸送量は、安定した増加
基調を維持していくものと期待
(兆立方フィート)
30
一方、米国の原油生産量は、米エネルギー情報局
(EIA)によれば、中期的に増加することが予測され高水
準の状態が続くと考えられています。
25
米国における一大原油生産地のノースダコタ州などの
中西部からメキシコ湾岸への原油パイプライン輸送量は、
原油価格下落にも関わらず、2015年上半期も増加が続
いています。この背景としては、原油輸送の中でも、パイ
プライン輸送のシェアが拡大していることが挙げられます
(図2)。原油パイプライン輸送は、鉄道輸送よりも安全性
が高く安価で、今後も主に中西部からメキシコ湾岸にかけ
ての原油輸送パイプラインのプロジェクトの稼働によって、
さらに拡大していくことが期待されます。
15
(百万バレル、月間)
鉄道輸送シェア(右軸)
パイプライン
輸送シェア
( 右軸)
20
(%)
2015年1-6月平均
2,699万バレル
80
70
60
2014年平均
1,859万バレル
+45%
50
原油パイプライン
輸送量(左軸)
40
30
10
20
5
10
0
0
2012
2013
2014
2015 (年)
(出所)米エネルギー情報局(EIA)、ノースダコタ・パイプライン当局、
2012年2月~2015年6月
※輸送量は中西部からメキシコ湾への原油パイプライン輸送量
※シェアはノースダコタ州ウィリストン盆地からのパイプラインと鉄道に
よる 原油輸送量シェア
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、レッグ・メイソン・アセット・マネジメントの情報を基に、ニッセイア
セットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼で
きると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料の
グラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手
数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環
境の変動等を保証するものではありません。
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〈審査確認番号H27-TB124)
米国経済・株式市場情報
図3:中流MLPの設備投資額とキャッシュフロー推移
MLPの設備投資は将来のキャッシュフローや配当成長
に寄与
米国エネルギー生産の増加を背景に、主にエネルギーの
パイプライン輸送を手掛ける中流MLPは、2013年から2015
年にかけて積極的に設備投資を実施しています。今後、建
設中のインフラ設備の稼働開始が進むにつれて、過去の設
60
50
30
20
くことが期待されます。中流MLPのキャッシュフローは、原油
10
価格ではなく輸送量に基づいているため、2015年以降も堅
2005
2015年第3四半期の決算においても、中流MLPの配当額
油価格の影響により、中流MLPの配当成長率は低下する可
18
2011
2013
2015
2017
(年)
(%)
油田サービ ス企業(ハイ・イールド債)
16
12
等)と中流(輸送等)のエネルギー・セクター間で引き続き選
8
別がされています。原油価格下落の影響から、上流エネル
6
ギー企業の社債利回りは14%を上回る水準に上昇してお
4
1 6 .16
独立系探査・生産企業
( ハイ・イールド債)
14
10
しかし、中流エネルギー企業の社債利回りは、足元で緩や
2009
図4:米国のエネルギー企業の社債利回り推移
米国の社債市場では、上流(探査・生産、油田サービス
り、資金調達における懸念要因となっています(図4)。
2007
(出所)ファクトセット、2005年~2017年
2015年~2017年は予測値。2015年6月末現在
が前年比10%以上増加した銘柄が多く確認されました。原
中流MLPの社債利回りは相対的に落ち着いた水準で
推移
2008年
世界金融危機
0
調な見通しとなっています(図3)。
下支えされ、増配基調が続くことが期待されます。
過去の設備投資が
将来の配当成長に寄与
40
備投資がMLPのキャッシュフローや配当の増加に寄与してい
能性がありますが、今後も安定したキャッシュフロー見通しに
(十億米ドル)
設備投資額
キャッシュフロー
1 4 .06
石油精製企業
( ハイ・イールド債)
中流エ ネルギー企業
( ハイ・イールド債)
6 . 72
5 . 97
5 . 16
2
2014/07
中流エ ネルギー企業(投資適格債)
2015/01
2015/07
(年/月)
(出所)バークレイズ、2014年7月1日~2015年10月30日
(注)社債利回りは期限前償還を考慮した最低利回り
かな上昇傾向にあるものの、相対的に安定して推移してい
ます。現在、中流MLPは社債を通じた資金調達が容易に可
図5:(ご参考)過去のリーマン・ショック時の動き
能な状態にあるとみられており、設備投資や資産取得等の
事業戦略を実施する余力が残されていると考えられます。
600
500
(ご参考) リーマン・ショック時、MLPの株価は調整
したが、その後、大きく上昇
400
リーマンショック時、原油価格は1バレル=145米ドルから34
200
米ドルへ約77%下落しました。減配リスクの懸念からMLPの
100
株価は調整を強いられ約50%下落しましたが、その後、持
続的な配当成長が確認されるにつれて回復していきました
(図5)。当時と現在のMLPを取り巻く環境は違うものの、減配
懸念等で大きく下落した過去のMLPの動向は今後の市場環
境をはかる上で参考になるかもしれません。
300
(米ドル/バレル)
アレリアンMLP指数(左軸)
145.29
(2008/7/3)
原油価格が
約77%下落
WTI原油先物価格(右軸)
アレリアンMLP指数
は100%超上昇
180
150
120
90
60
33.87
(2008/12/19)
30
0
0
20%
一株当たり配当成長率(四半期、過去12ヵ月累計、前年比)
2008年
2009年
2010年
10%
0%
年間成長率:10.3%
年間成長率: 1.2%
年間成長率:9.3%
-10%
2008/01
2009/01
2010/01
2011/01
2008/12
2009/12
2010/12
2007/12
(年/月)
(出所)ブルームバーグ、2007年12月31日~2010年12月31日
一株当たり配当成長率:アレリアンMLP指数
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、レッグ・メイソン・アセット・マネジメントの情報を基に、ニッセイア
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