1 ケプラーの法則と万有引力

1.1 軌道:円錐曲線
物理学補足資料
ここで,φ = 0 で r が極小となる,すなわち u が極大となる
1 ケプラーの法則と万有引力
ように α を定めると,明らかに α = 0 である.よって,軌道
r(φ) は
太陽系の惑星の運動に関するブラーエの観測結果から,ケ
プラーは所謂ケプラーの3法則を導いた.歴史的には,この
1
GM
= A cos φ + 2
r
h[
]
L
Ah2
h2
∴ r=
e=
, L=
1 + e cos φ
GM
GM
u=
法則から万有引力の法則が導かれるが,ここでは,力が万有引
力で与えられる場合に運動方程式を解いて,ケプラーの法則
を導びく.
(13)
1.1.1 楕円軌道 (e < 1)
1.1 軌道:円錐曲線
曲線 (13) を実際に描いてみると,0 < e < 1 では楕円のよ
固定された質点 M から万有引力
F (r) = −G
うにみえる.実際,離心率 e = 0.1, 0.3, 0.5, 0.7 の場合の曲線
mM
r
r3
を図 1 に示す.2 そこで,楕円であると仮定してそのパラメー
(1)
タを求めることとする.
を受けて運動する質点 m の軌道は,
r=
L
1 + e cos φ
(2)
e = 0.1
e = 0.3
e = 0.5
e = 0.7
で表される円錐曲線である.
【証明】 まず,中心力であるから角運動量が保存され平面運
動であることより,平面曲座標系での運動方程式
MG
= r̈ − rφ̇2
r2 (
)
2 d 1 2
r φ̇
0=
r dt 2
−
(3)
(4)
(4) 式より,速度モーメント r2 φ̇ は一定であるから
r2 φ̇ = 一定 = h, φ̇ =
h
r2
図 1 円錐曲線 (2) の様子:離心率 e = 0.1, 0.3, 0.5, 0.7 では楕円と
(5)
なる.
とおくと,(3) は,
MG
− 2 = r̈ − r
r
(
h
r2
)2
◆ a, b, L の関係
h2
= r̈ − 3
r
楕円を仮定し,その焦点を図 2 のように
F1 (−f, 0),F2 (f, 0) とおくと,三角形 AF1 F2 ,BF1 F2 ,HF1 F2
(6)
のそれぞれの 3 辺の長さの和が全て等しいことより,
u = r−1 と変数変換すると,
2a = 2
dr
1
(7)
= − 2 = −r2
du
u
dr
h dr
h dr du
du
(8)
ṙ = φ̇
= 2
= 2
= −h
dφ
r dφ
r du dφ
dφ
( )
( )
d du
dφ d
du
h2 d 2 u
r̈ = −h
= −h
=− 2
(9)
dt dφ
dt dφ dφ
r dφ2
d2 u
(10)
= −h2 u2 2
dφ
√
f 2 + b2 = L +
√
L2 + 4f 2
⇒ a2 = b2 + f 2 , a2 − al = f 2 ∴ b2 = aL
(14)
B(0,b)
H(f, L)
C
F1(-f,0)
O
F2(f,0) A(a,0)
よって (6) 式は,
− M Gu2 = −h2 u2
d2 u
− h2 u 3
dφ2
図 2 楕円の焦点,長径,短径
du2
GM
+u= 2
2
dφ
h
(11)
◆ 楕円曲線
′
これは,単振動の微分方程式であり一般解は (u = u−GM/h
2
ち近日点 r1 = L/(1 + e) と遠日点 r2 = L/(1 − e) が長軸の端
と変数変換してから解くと)
u = A cos(φ + α) +
GM
h2
(13) で表される曲線の,φ = 0, π の点,すなわ
点となると仮定し,長軸半径,短軸半径を a, b を,
a=
(12)
1
r1 + r2
L
=
, b2 = aL
2
1 − e2
(15)
1.2 軌道方程式:変換 u = r−1 に依らない方法
物理学補足資料
を持つ楕円の中心を原点にして座標系 (x′ , y ′ ) を考えると,
L cos φ
eL
+
1 + e cos φ 1 − e2
x′ = r cos φ − (r1 − a) =
y ′ = r sin φ =
L sin φ
1 + e cos φ
であるから,t = g(φ) = g(φ(r)) と,t について陽な関数
は求まる.図 3 には,h = 1, L = 1 と固定し,離心率を
(16)
e = 0.8, 0.6, 0.4 とした場合の,t(φ) を描いた.
(17)
16
であり,
e = 0.8
0.6
0.4
14
12
10
(18)
t
cos φ
cos φ + e
x′
= (1 − e2 )
+e=
a
1 + e cos φ
1 + e cos φ
( ′ )2
x
(cos φ + e)2
=
a
(1 + e cos φ)2
( ′ )2
y
L2
sin2 φ
(1 − e2 ) sin2 φ
=
=
2
b
aL (1 + e cos φ)
(1 + e cos φ)2
8
(19)
6
よって,
(
x′
a
)2
(
+
y′
b
)2
=
4
(cos φ + e)2
(1 − e2 ) sin2 φ
+
(1 + e cos φ)2
(1 + e cos φ)2
cos2 φ + 2e cos φ + e2 + sin2 φ − e2 sin2 φ
=
(1 + e cos φ)2
1 + 2e cos φ + e2 cos2 φ
=1
=
(1 + e cos φ)2
2
0
0.0π
0.2π
0.4π
0.6π
0.8π
1.0π
ψ
(20)
図 3 時間 t の角度 φ 依存性
となって,楕円軌道を描くことが確かめられる.
1.1.2 周期 T
1.2 軌道方程式:変換 u = r −1 に依らない方法
楕円の長軸径を a,短軸径を b とおくと楕円の面積は πab
式 (1) の両辺それぞれに,速度ベクトルのモーメント h =
であり,これを一定面積速度 h/2 で割れば周期 T が求まる.
r × ṙ を右から掛けて外積をとると,F (r) = mr̈ であるから,
すなわち,
√
3√
2πab
2πa 2 L
a3
T =
=
= 2π
h
h
GM
r̈ × h = −G
(21)
4π 2 3
4π 2
T2 =
a =
GM
GM
(
)
2 3
b
L
4π 2 6
=
b
GM L3
d
(ṙ × h) = r̈ × h + ṙ × ḣ = r̈ × h
dt
となる.一方,式 (26) の右辺のベクトル積は,
]
(22)
1 dr2
1 d
=
(r · r) = rṙ = r · ṙ
2 dt2
2 dt
1.1.3 角度関数 φ(t)
軌道 r(φ) は得られたが,時間 t の関数として,運動
L
= f (t)
1 + e cos φ
を用いて,
r×(r× ṙ)
rṙr − r2 r
ṙ
r
d (r)
=
= 2r − = −
(28)
3
3
r
r
r
r
dt r
よって,式 (26) は,
d
d (r)
(29)
(ṙ × h) = GM
dt
dt r
(
)
d
r
∴
ṙ × h − GM
=0
dt
r
r
∴ ṙ × h − GM = const. = eGM
(30)
r
となる.この両辺の r との内積をとって,r · (ṙ × h) =
(23)
は陽には求められない.しかしながら,(5) に (13) を代入して,
dφ
h(1 + e cos φ)2
=
dt
L2
∫
dφ
h
t=
2
L
(1 + e cos φ)2
[
]
∫
−e sin φ
dφ
1
+
=
1 − e2 1 + e cos φ
1 + e cos φ
[
1
−e sin φ
=
1 − e2 1 + e cos φ
(√
)]
1−e
φ
2
arctan
tan
+√
1+e
2
1 − e2
(27)
r × (r × r̈) = (r · ṙ)r − r2 ṙ
となり,これはケプラーの第 3 法則に他ならない.
r(φ) =
(26)
ところで,左辺は ḣ = 0 に注意しながら,
すなわち,
[
M
r×h
r3
(24)
(r × ṙ) · h = h · h = h2 に注意すると,
h2 − GM r = r · eGM
(25)
∴ r+r·e=
2
h2
=L
GM
(31)
1.2 軌道方程式:変換 u = r−1 に依らない方法
物理学補足資料
離心ベクトル e を x 軸にとって極座標系で表現すると e · r =
er cos φ であるから,
r + re cos φ = r(1 + e cos φ)) = L
L
∴ r=
1 + e cos φ
(32)
を得る.
問題 1
円錐曲線 (2) を用いて,図 1 の楕円曲線を描いてみ
なさい.
問題 2
時間 t と角度 φ の関係式 (25) において,φ = π の
場合の値を計算することにより,T 2 ∝ a3 を確かめなさい.
3