前回のまとめ • 原子の構造と電子軌道についておさらい。 • 原子は 閉殻

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前回のまとめ
原子の構造と電子軌道についておさらい。
原子は閉殻構造(オクテット則を満たした状態)が最も安
定。
閉殻構造:最外殻のs、p軌道が満たされた状態。
理論的な原子は閉殻構造ではないので(希ガス以外)、
自然界では不安定。
原子はイオン化して閉殻構造をとることが出来る。
イオン化のしやすさの指標として、電気陰性度がある。
電気陰性度は電子を引き付ける強さが数値化されてい
る。大きければアニオン(陰イオン)、小さければカチオ
ン(陽イオン)になりやすい。
イオン結合はイオンが見かけ上の電荷を中和して安定
に存在する為の、アニオンとカチオン間の静電引力によ
る結合
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化学Ⅱ 2015.10.9
• 二章目次
2.1.原子の電子配置
2.1.1. 原子の構造
2.1.2. 電子軌道の分類
2.1.3. 軌道への電子の入り方
2.2.安定な電子構造の成り立ち
2.2.1. 安定なイオンの生成
2.2.2. リチウム以降の原子の安定化
2.2.3.炭素の電子構造とその特殊性
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• 三章目次
3.1.共有結合の成り立ち
3.1.1. イオン結合
3.1.2. 共有結合
3.1.3. 配位結合
3.2.混成軌道と分子のかたち
3.2.1. sp3混成軌道
3.2.2. sp2混成軌道
3.2.3. sp混成軌道
3.2.4. σ結合とπ結合
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教科書
p. 19- 21, 31-38
今回の目標
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•
共有結合の成り立ちを知る
炭素がなぜ混成軌道をつくるのか理解する
sp1, sp2, sp3混成軌道と分子の形を理解する
σ結合とπ結合の違いについて知る。
番外
• ルイス構造の描き方を学ぶ(復習?)
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3.1.2. 共有結合
N
×
5+
- e5
-
N
+3e
×
3
N
イオン化による閉殻構造がつくりにくい原子はどうする
のか?
⇒『共有結合』を形成することで閉殻構造をつくる。
共有結合:二つの原子が電子を共有することで閉殻構
造をつくった状態
3H
+
N
H
N H
H
水素も窒素も閉殻構造を形成してかつ電気的に中性を保てる
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電子を共有するとは?=分子軌道の形成
分子軌道:二つ以上の原子の電子軌道が重なって形
成される新しい電子軌道。両方の原子核を覆っている
ため、原子を結び合わせることが出来る。
補足:原子の電子軌道の重なりにより、『結合性軌道』と『反結合性軌道』とい
う二つの電子軌道が生じる。
『結合性軌道』は元の電子軌道よりもエネルギー順位の低い安定な軌道。
『反結合性軌道』はエネルギー順位の高い不安定な軌道。
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電子対は『結合性軌道』に入ることで、単独の場合よりも安定化する。
共有結合は不対電子によってのみ成立する
不対電子:電子が一個のみ入った軌道の電子
不対電子の電子軌道が重なる
⇒結合性軌道に2電子入った分子軌道がつくられる。
エネルギーの総和が低下するため、結合により安定化。
電子対の電子軌道が重なる
⇒結合性軌道と反結合軌道に2電子ずつ入る。
エネルギーの総和には変化ないため、結合状態が保たれない。
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共有結合の例
窒素原子
水素原子
2p
1s
2s
×3
アンモニア
反結合性軌道
2p+1s×3
H
結合性軌道
2s
酸素原子
水素原子
N
H
水
2p+1s×2
2p
2s
H
1s
×2
2p
2s
反結合性軌道 H
結合性軌道
O
H
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2.3.炭素の電子構造とその特殊性
炭素はイオン化して閉殻構造を作れない(エネルギー的に無理)。
C
×
4+
- e4
-
C
+4e
×
4
C
つまり炭素は電子を共有して『共有結合』を形成しなければ閉
殻構造を作れない。
H
H C H
4H + C
H
しかし、共有結合に利用できる電子の条件は、不対電子(電
子が一個のみ入った軌道の電子)であること
⇒ 炭素には閉殻構造を形成するための4つの不対電子は
あっただろうか?
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炭素の不対電子
炭素の電子軌道
炭素には不対電子は二個しかない。つまり、共有結合をそのまま
形成してもオクテット則は満たせない
2s軌道から2p軌道へと電子を励起(移動)させることが出来れば4
個の不対電子を生み出し4本の共有結合をつくれるようになる!
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3.2. 混成軌道と分子の形
4本の共有結合を形成できるようになったが…
2p+1s×3
2s+1s
1s
×4H
CH4
全て同じC-H結合の中で一つだけエネルギーが低い
共有結合は電子がつくっているため非等価な結合があると互いに反発して
不安定になる
全てのC-H共有結合を等価にするため、混成軌道を形成する。
混成軌道
共有結合を形成する際に“異なるエネルギー順位の電子軌道を混ぜて”形
成した等価な分子軌道のこと
炭素ではsp3混成軌道、sp2混成軌道、sp混成軌道が存在する。
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3.2.1. sp3混成軌道とメタンの構造
sp3混成軌道
・炭素に4個の原子が共有結合した際の混成軌道
・s軌道が一つとp軌道が三つ混ざっている
・4つの等価な共有結合が形成される
・炭素を中心とした正四面体の頂点に共有結合した原子が
配置される。
・原子間の角度は109.5°(すべて同一種の原子と結合して
いる場合)
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3.2.2. sp2混成軌道とエチレンの構造
sp2混成軌道
・炭素に3個の原子が共有結合した際の混成軌道
・s 軌道が一つとp軌道が二つ混成している。
・三つの等価な共有結合が形成される。
・結合した原子は炭素を中心とした三角形の頂点に配置される
(全ての原子が同一平面上に配置される点も重要)
・炭素の残りの p 軌道は、この平面に対して垂直方向に伸び、
π結合(二重結合)の形成に利用される。
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3.2.3. sp混成軌道とアセチレンの構造
sp混成軌道
・炭素に2個の原子が共有結合した際の混成軌道
・s 軌道が一つとp軌道が一つ混成している。
・2つの等価な共有結合が形成される。
・結合した原子は炭素を中心として直線状に配置される
・炭素の残りの二つ p 軌道は、この直線に対して90度ずつずれ
て伸びており、π結合(二重結合×2 or 三重結合)の形成に利
用される。
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3.2.4. σ結合とπ結合
sp2, sp混成軌道では、混成軌道に利用されないp軌道は
二重結合、三重結合に利用される。
この余ったp軌道が形成する共有結合(二重結合の2本目、
三重結合の2,3本目)は、通常の共有結合とは特徴が異
なるため、
σ結合:1本目の共有結合
π結合:余ったp軌道が形成する二重結合の2本目、三重
結合の2,3本目の共有結合
として区別される。
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3.2.4. σ結合とπ結合
σ結合は二つの電子軌道が直線状に並び共有結合を形成する
電子軌道の重なりが大きくなるため
⇒電子が原子の間にしっかりと留まり、強い結合となる
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3.2.4. σ結合とπ結合
π結合は、二つの電子軌道が水平に並び、電子軌道の重なりが
小さくなるため
⇒ 電子が動き回りやすくなっており、比較的弱い結合となる。
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結合の種類
イオン結合
共有結合
NaCl
Na2CO3
Na2SO4
メタン、エチレン
アセチレン
二酸化炭素
各イオンは最初から閉殻構造をとってい
る。結合は電荷を中和することによる安
定化のため。
H
H C H
H
H C
C H
各原子が閉殻構造をとるため、電子を共有
すること形成される結合
配位結合
H
H N
H
H
H
H N H
O
N
H
ある原子が孤立電子対を提供することで、
別の原子が閉殻構造をとった結合。
ローンペア(lone pair)
非共有電子対
孤立電子対
価電子のうち結合に関与しない電子
対のこと
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ルイス構造式
ルイス構造式(価電子をドットで表した化学式)
有機分子を形成する原子は特殊な場合を除いて、オクテッ
ト則を満たしている。ルイス構造式は、この原則に構造が
則っているかを分かりやすく表示してくれる。
CH4
CH3Cl
H2O
H-C≡N
O=C=O
各原子の価電子数は、周りに存在するドットの数を数える。
8個でなければ構造式は間違っている
一部例外:ラジカル分子、リン酸イ
オン(PO43-)、硫酸イオン(SO42-)
O
O P
O
O
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ドットと線の組み合わせ
ルイス構造はドットが大量にあるため構造式が複雑になると分かり
づらい。
→ 結合を線で、非共有電子対をドットで記載すると見やすくなる。
・酢酸(CH3COOH)
H
H C C O H
H
O
H
H C C O H
H O
有機化学を習いたての頃は、オクテット則の原則や非共有電子対
の存在を忘れがちなので、ルイス構造式や上の描き方で分子を
書くことで、原子の周りに価電子が8つという原則を覚えましょう。
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