2016/10/07 第二回(二章末から三章)

化学Ⅱ
2016.10.7
• ⼆章⽬次
2.1.原⼦の電⼦配置
2.1.1. 原⼦の構造
2.1.2. 電⼦軌道の分類
2.1.3. 軌道への電⼦の⼊り⽅
2.2.安定な電⼦構造の成り⽴ち
2.2.1. 安定なイオンの⽣成
2.2.2. リチウム以降の原⼦の安定化
2.2.3.炭素の電⼦構造とその特殊性
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化学Ⅱ
2016.10.7
• 三章⽬次
3.1.共有結合の成り⽴ち
3.1.1. イオン結合
3.1.2. 共有結合
3.1.3. 配位結合
3.2.混成軌道と分⼦のかたち
3.2.1. sp3混成軌道
3.2.2. sp2混成軌道
3.2.3. sp混成軌道
3.2.4. σ結合とπ結合
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今回のポイント
有機化学の観点から
• 共有結合とは何かを知る
• 炭素が混成軌道をつくる理由を知る
• 炭素のsp1, sp2, sp3混成軌道と分⼦の形を知る
• σ結合とπ結合の違いについて知る
追加
• ルイス構造式の描き⽅を学ぶ
• 本講義での主な構造式の記載法の紹介
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3.1.2. 共有結合(有機化学の観点から)
閉殻構造をとりたいが、イオン化には⼤きなエネル
ギーが必要な原⼦はどうするのか?
⇒『共有結合』を形成する。
共有結合:⼆つの原⼦が電⼦を共有することで閉殻構
造をつくった状態
電⼦を共有することで、⽔素も窒素も閉殻構造を形成してか
つ電気的に中性を保てる
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ルイス構造式
ルイス構造式(価電⼦をドットで表した化学式)
CH4
CH3Cl
HCHO
HCN
CO2
有機分⼦を形成する原⼦は特殊な場合を除いて、閉殻構造
を満たしている。ルイス構造式は、この原則に構造が則っ
ているかを分かりやすく表⽰してくれる。
各原⼦の価電⼦数は、原⼦の周りに存在するドットの数を数
える。安定な分⼦では8個(⽔素は0か2個)でなければその
構造式は間違っている。
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復習:電⼦を共有する=分⼦軌道について
分⼦軌道:⼆つ以上の原⼦の電⼦軌道が重なって
形成される新しい電⼦軌道。両⽅の原⼦核を覆っ
ているため、原⼦を結び合わせることが出来る。
原⼦の電⼦軌道が⼆つ重なると、『結合性軌道』と『反結合性軌道』と
いう⼆つの電⼦軌道が⽣じる。
『結合性軌道』は元の電⼦軌道よりもエネルギー順位の低い安定な軌道。
『反結合性軌道』はエネルギー順位の⾼い不安定な軌道。
電⼦対は『結合性軌道』に⼊ることで、単独の場合よりも安定化する。
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共有結合は不対電⼦によってのみ成⽴する
不対電⼦:電⼦が⼀個のみ⼊った軌道の電⼦
不対電⼦の電⼦軌道が重なると
⇒結合性軌道に2電⼦⼊った分⼦軌道がつくられる。
エネルギーの総和が低下するため、結合により安定化。
電⼦対の電⼦軌道が重なる
⇒結合性軌道と反結合軌道に2電⼦ずつ⼊る。
エネルギーの総和には変化ないため、結合状態が保たれない。
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共有結合の形成と閉殻構造の確認
窒素原⼦
⽔素原⼦
アンモニア
H
N
H
H
酸素原⼦
⽔素原⼦
⽔
H
H
H
H
O
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問1
前のページのスライドの例に習って、窒素原⼦2
個と⽔素原⼦4個を組み合わせて、全ての原⼦が
閉殻構造をとった⼀つの分⼦を構築しなさい。
窒素原⼦
⽔素原⼦
H
N
?
H
H
N
H
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2.3.炭素の電⼦構造とその特殊性
炭素はイオン化して閉殻構造を作れない(エネルギー的に
難しい)。
つまり炭素は電⼦を共有して『共有結合』を形成しなけれ
ば閉殻構造を作れない。
しかし、共有結合に利⽤できる電⼦の条件は、不対電⼦
(電⼦が⼀個のみ⼊った軌道の電⼦)である
⇒ 炭素には閉殻構造を形成するための4つの不対電⼦は
あっただろうか?
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炭素の不対電⼦
炭素の電⼦軌道
不対電⼦が⼆個⾜りない!
炭素には不対電⼦は⼆個しかない。つまり、共有結合をそのま
ま形成しても閉殻構造は満たせない
不対電⼦が⼆個
不対電⼦が四個
2s軌道から2p軌道へと電⼦を励起(移動)させることが出来
れば4個の不対電⼦を⽣み出し4本の共有結合をつくれるよう
になる!
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3.2.
混成軌道と分⼦の形
4本の共有結合を形成できるようになったが…
CH4
×4H
メタンの分⼦軌道をそのまま形成すると、全て同じC-H結
合であるのに⼀つだけエネルギー順位が異なる
共有結合は電⼦がつくっているため⾮等価な結合があると互いに反発
して不安定になる
全てのC-H共有結合を等価にするため、混成軌道を形成する。
混成軌道
共有結合を形成する際に“異なるエネルギー順位の電⼦軌道を混ぜて”
形成した等価な分⼦軌道のこと
炭素ではsp3混成軌道、sp2混成軌道、sp混成軌道が存在する。
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3.2.1. sp3混成軌道とメタンの構造
sp3混成軌道
・炭素に4個の原⼦が共有結合した際の混成軌道
・s軌道が⼀つとp軌道が三つ混ざっている
・4つの等価な共有結合が形成される
・炭素を中⼼とした正四⾯体の頂点に共有結合した原
⼦が配置される。
・原⼦間の⾓度は109.5°(すべて同⼀種の原⼦と結合
している場合)
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3.2.2. sp2混成軌道とエチレンの構造
sp2混成軌道
・炭素に3個の原⼦が共有結合した際の混成軌道
・s 軌道が⼀つとp軌道が⼆つ混成している。
・三つの等価な共有結合が形成される。
・結合した原⼦は炭素を中⼼とした三⾓形の頂点に配置さ
れる(全ての原⼦が同⼀平⾯上に配置される点も重要)
・炭素の残りの p 軌道は、この平⾯に対して垂直⽅向に伸
び、π結合(⼆重結合)の形成に利⽤される。
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3.2.3. sp混成軌道とアセチレンの構造
sp混成軌道
・炭素に2個の原⼦が共有結合した際の混成軌道
・s 軌道が⼀つとp軌道が⼀つ混成している。
・2つの等価な共有結合が形成される。
・結合した原⼦は炭素を中⼼として直線状に配置される
・炭素の残りの⼆つ p 軌道は、この直線に対して90度ずつ
ずれて伸びており、π結合(⼆重結合×2 or 三重結合)の
形成に利⽤される。
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3.2.4. σ結合とπ結合
sp2, sp混成軌道では、混成軌道に利⽤されないp軌道
は⼆重結合、三重結合に利⽤される。
この余ったp軌道が形成する共有結合(⼆重結合の2
本⽬、三重結合の2,3本⽬)は、1本⽬の共有結合
とは特徴が異なり、
σ結合:1本⽬の共有結合
π結合:余ったp軌道が形成する⼆重結合の2本⽬、
三重結合の2,3本⽬の共有結合
として区別される。
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3.2.4. σ結合とπ結合
結合は⼆つの電⼦軌道が直線状に並び共有結合を形成す
る電⼦軌道の重なりが⼤きくなるため
⇒電⼦が原⼦の間にしっかりと留まり、強い結合となる
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3.2.4. σ結合とπ結合
結合は、⼆つの電⼦軌道が⽔平に並び、電⼦軌道の重なりが
⼩さくなるため
⇒ 電⼦が動き回りやすくなっており、⽐較的弱い結合となる。
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結合の種類
イオン結合
共有結合
メタン、エチレン
アセチレン
⼆酸化炭素
各イオンは最初から閉殻構造をとっ
ている。結合は電荷を中和すること
による安定化のため。
各原⼦が閉殻構造をとるため、電⼦を共
有すること形成される結合
配位結合
H
H N
H
H
H
H N H
H
ある原⼦が孤⽴電⼦対を提供することで、
別の原⼦が閉殻構造をとった結合。
ローンペア(lone pair)
⾮共有電⼦対
孤⽴電⼦対
価電⼦のうち結合に関与しない電
⼦対のこと
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問2
下記の分⼦を、構成する原⼦が
1. 直線状に配置されるもの
2. 平⾯上に配置されるもの
3. それ以外(三次元的な分⼦)
に分類しなさい。
メタン
クロロメタン
シアン化⽔素
ホルムアルデヒド
⼆酸化炭素
エチレン
アセチレン
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本講義での主な構造式の描き⽅
例:プロパン
プロパノール
H H H
H C C C H
ルイス構造式
H H H
点が多くてどの原⼦がどの電⼦を有しているのか
どの電⼦が共有されているかが分かりずらい
結合を線で⽰す
線=電⼦2個
線の繋がっている原⼦が電⼦を共有
⾮共有電⼦対は記載
本講義での主な構造式の描き⽅
1.
2.
3.
4.
5.
炭素の原⼦記号を省略し、結合のみを線で表す
線の交点には炭素原⼦が存在するものと考える
炭素と結合した⽔素は省略
線の末端は省略しない
炭素と⽔素以外の原⼦(ハロゲン、酸素、窒素、硫⻩、リ
ンなど)は元素記号で記載
6. ヘテロ原⼦(酸素、窒素など)と結合した⽔素は記載