株式会社東海東京調査センター「日本経済予測(2015

Press Release
6-2, NIHONBASHI 3-CHOME, CHUO-KU, TOKYO 103-0027
JAPAN
平成 28 年 3 月 8 日
各 位
東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社
東京都中央区日本橋三丁目6番2号
証券コード
8616
東証・名証第一部
株式会社東海東京調査センター
「日本経済予測(2015-17 年度)」に関するお知らせ
当社の子会社である株式会社東海東京調査センターが「日本経済予測(2015-17 年度)
」を
発表いたしましたので、別紙のとおりお知らせいたします。
以
本件に関するお問い合わせは、広報・IR部
03-3517-8618 までお願いします。
上
2016 年 3 月 8 日
日本経済予測(2015-17 年度)
~グローバル経済の弱さが回復の足枷に~
【当社予想及び前提条件】
実質GDP成長率
15 年度+0.8%、16 年度+1.0%、17 年度+0.0%
チーフエコノミスト
武藤弘明
03-3517-8374
CPI コア上昇率
15 年度+0.0%、16 年度+0.3%、17 年度+1.2%
[email protected]
日銀金融政策
16 年 4 月には追加緩和(マイナス金利幅の拡大等)
★成長率の見通しを各年度とも下方修正
15 年 10-12 月期のGDP統計(2 次速報)を踏まえて、日本経
済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は 15 年度が前年比
+0.8%、16 年度を+1.0%、17 年度を+0.0%と予測した。改定前の
昨年 12 月 8 日時点の予測(15 年度+1.2%、16 年度+1.8%、17 年
度+0.3%)と比べると大きめの下方修正となる。今回の下方修正の
主な理由は①マーケットを通じたセンチメントの悪化がグローバ
ル経済の下押し圧力を想定以上に強めていること、②日本国内にお
ける賃金上昇の遅れや 16 年初めからの金融市場の調整によって消
費を取り巻く地合いが悪化したと判断されるためである。
★消費税増税延期は蓋然性の高い“リスク・シナリオ”
当初安倍首相は、
「リーマン・ショックや大震災のような重大事
態」が起きない限り、17 年 4 月からの消費税増税を予定通り実施
すると主張していたが、最近では条件を「世界経済の大幅な収縮」
へと微妙に修正(緩和)している。16 年 7 月の参院選と同時に衆
議院の解散も取り沙汰されており、この機に乗じて消費税増税の
“公約”をリセットしてしまおうとする誘引は働きやすいと思われ
る。メイン・シナリオとしては予定通りの消費税増税実施を予測の
前提とするが、
衆院解散と消費税増税延期がセットで打ち出される
展開も蓋然性の高い“リスク・シナリオ”として十分に想定されよ
う。
★物価安定目標は遠く、4 月の追加緩和が予想される
コア CPI の予測は 15 年度が前年比 0.0%、16 年度が同+0.3%、
17 年度が同+1.2%(消費税増税の影響を除く)と前回 12 月の予測
(15 年度+0.2%、16 年度+1.1%、17 年度+1.4%)から下方修正し
た。エネルギー価格の低迷持続と最近では基調部分の物価上昇率も
低下傾向にあること、賃金上昇力の弱さ等を踏まえたものである。
日銀も 16 年 4 月の展望レポートでコア CPI の物価見通しを再度下
方修正することとみられ、そのタイミングで追加緩和(マイナス金
利幅の拡大等)が実施されると予想する。
1/14
このレポートは、投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を意図とするものではありません。投資の決定は、ご自身の判断と責任でなされますようお願い申し上げます。
このレポートのご利用に関しては、末尾の開示事項の記載もご覧ください。
日本経済予測一覧表
予測
<年度予想>
FY13
項目
実質GDP
FY14
実績
FY15
FY16
FY15
FY17
今回(3/8)予想
FY16
FY17
前回(12/8)予想
2.0%
-1.0%
0.8%
1.0%
0.0%
1.2%
1.8%
0.3%
2.3%
-2.9%
-0.4%
0.9%
-0.9%
0.4%
1.8%
-0.4%
8.8%
-11.7%
2.6%
3.5%
-3.8%
3.9%
4.7%
-3.8%
民間企業設備投資
3.0%
0.1%
2.4%
4.1%
0.9%
1.8%
3.7%
0.7%
在庫投資(寄与度)
-0.3%
0.6%
0.3%
-0.1%
0.0%
0.5%
0.1%
0.0%
公的固定資本形成
10.3%
-2.6%
-2.0%
-3.9%
0.5%
0.3%
-1.6%
-0.8%
-0.5%
0.6%
0.1%
-0.1%
0.4%
0.1%
0.2%
0.5%
財サ輸出
4.4%
7.8%
0.3%
2.2%
3.8%
1.8%
5.6%
5.0%
財サ輸入
6.7%
3.3%
-0.1%
3.0%
1.9%
1.4%
5.4%
2.7%
3.0%
-0.3%
-0.9%
2.0%
0.7%
-0.5%
3.0%
0.7%
完全失業率(末値)
3.6%
3.4%
3.2%
3.1%
3.0%
3.3%
3.1%
3.0%
消費者物価指数(コア)
0.8%
0.8%
0.0%
0.3%
1.2%
0.2%
1.1%
1.4%
-0.3%
2.5%
1.3%
0.6%
1.6%
1.1%
0.3%
1.7%
民間最終消費支出
民間住宅投資
純輸出
鉱工業生産指数
GDPデフレータ
<四半期予想>
2015
項目
2016
2017
7-9月
10-12月
1-3月
4-6月
7-9月
10-12月
1-3月
1.4%
-1.1%
0.8%
1.1%
1.4%
1.7%
2.9%
0.4%
-0.9%
0.3%
0.3%
0.3%
0.5%
1.0%
1.6%
-1.2%
0.6%
1.0%
2.0%
1.0%
0.7%
民間企業設備投資
0.7%
1.5%
0.8%
0.8%
0.9%
1.0%
2.0%
在庫投資(寄与度)
-0.2%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
公的固定資本形成
-2.1%
-3.4%
-1.3%
-0.8%
-0.2%
0.4%
0.3%
0.3%
0.1%
-0.1%
0.0%
0.0%
-0.1%
-0.2%
財サ輸出
2.6%
-0.8%
0.1%
0.7%
0.8%
0.8%
0.9%
財サ輸入
1.3%
-1.4%
0.7%
0.8%
1.0%
1.4%
2.3%
鉱工業生産指数
-1.2%
0.5%
-0.3%
0.8%
0.9%
1.1%
1.1%
完全失業率(末値)
3.4%
3.3%
3.2%
3.2%
3.2%
3.2%
3.1%
-0.1%
0.1%
-0.1%
0.2%
0.2%
0.7%
0.9%
1.8%
1.5%
0.6%
0.5%
0.7%
0.8%
0.6%
実質GDP(年率)
民間最終消費支出
民間住宅投資
純輸出
消費者物価指数(コア)
GDPデフレータ
(注)鉱工業生産指数の年度値は季節調整値をもとにしたもの。消費者物価指数は消費税の影響を除く。
(注)実質GDP成長率以外の需要項目は単純前期比(在庫投資と純輸出は寄与度)、GDPデフレータは前年比
(出所) 内閣府、総務省、経済産業省、予測は東海東京調査センター
2/14
1. 賃金上昇力の弱さから、個人消費の増加ペースは緩慢なものに
15 年 10-12 月期の実質GDP成長率は前期比年率▲1.1%と 1 次速報の同▲1.4%から僅かに上方修正
された。10-12 月期の法人企業統計を踏まえて、設備投資が前期比+1.5%と 1 次速報の同+1.4%から僅
かに上方修正、在庫投資の寄与度も 0.0%と 1 次速報の▲0.1%から上方修正されたこと等が影響してい
る。
依然として 10-12 月期の成長率がかなり大きなマイナスとなっているのは個人消費が前期比▲0.9%
と大きく落ち込んでいるためであり、これに関しては 1 次速報の同▲0.8%から逆に下方修正されてい
る。基本的にGDP 統計全体のイメージは 1 次速報のときと変わっていない。10-12 月期の個人消費の
大幅な減少は“暖冬効果”で説明されることが多いが、家計調査を見る限り 10-12 月期に落ち込んでい
るのは「光熱・水道」
、
「被服及び履物」といった暖冬関連の費目だけではなく、
「教育」や「教養娯楽」
といった必ずしも天候によって左右されないものも落ち込んでいる。また家計調査では 1 月は「被服及
び履物」に対する支出額が相当程度回復しているにも関わらず消費支出全体では前月比で減少しており、
足元の消費の弱さを天候要因だけで説明するのは無理があると思われる(図表 1~2)。
現在、失業率は完全雇用失業率と目されている 3.5%程度を下回っており(16 年 1 月時点で 3.2%)
、
マイナス金利政策を実施する以前から既に労働市場は十分にタイトな状態にあったといえる。問題はそ
れにもかかわらず十分な賃金上昇が達成されていないことであろう。例えば 1 月の毎月勤労統計(速報)
によると、現金給与総額(いわゆる名目賃金に相当)は前年比+0.4%と前月の同 0.0%からは持ち直し
たが、15 年度の前半は総じて同+0.7~0.9%で推移しており、最近の伸び率は明らかに頭打ち傾向だ。
基本給に相当する所定内給与についても 1 月は前年比+0.1%と前月の同+0.4%から伸び率は大きく低下
している(図表 3)
。加えて特別給与がこのところ減少していることも賃金全体の伸びを抑制している。
特別給与(賞与等)のうち賞与月である 6 月、7 月、12 月を合計した額について見てみると 15 年は前
年比▲3.0%と 3 年ぶりに減少している(図表 4)
。基本的に企業は固定費の抑制スタンスをさほど緩め
ていないと考えられる。アベノミクス開始以降、為替レートの円安シフトや企業収益の改善を背景とし
て労働市場はタイトになったが、雇用の中味は依然として非正規雇用を中心とするものであり、家計は
将来にわたって持続的に所得環境が改善していくという期待を持ち切れていないと思われる。そのよう
な状況の中で 15 年夏場以降は新興国の景気減速懸念を背景として国際金融市場もしばしば混乱してお
り、家計の消費行動は自ずと慎重化してしまっているのが現状であろう。
今後の消費を取り巻く環境についてだが、法人企業統計によると既に企業の売上高、経常利益ともに
水準は一旦ピークアウトしてしまっており(図表 5)、このことが今後ラグをもって新たな賃金の抑制要
因として影響してくると予想される。また既往株価下落の影響が今後消費者のマインドの押下げ要因と
して作用する可能性も無視できない。
「日経平均株価の前年比伸び率」と消費動向調査による「消費者
態度指数」を対比すると両者は非常に高い相関関係をもつことがわかる(図表 6)。足元においては株価
が相当下落しているにもかかわらず 1 月までの消費者態度指数は高水準を維持していたが、2 月には株
価に収斂する形で前月比▲2.4 ポイントもの大幅な下落となっており、これが今後消費行動の重石とな
る可能性も無視できないとみられる。16 年 1-3 月期以降、個人消費は再びプラス転換するものの、増加
ペース自体は緩慢なものになると予想される。
3/14
2. グローバル経済の弱さが日本の景気回復の足枷に
景気動向指数(CI 一致指数)
、あるいは鉱工業生産指数の動きをみると(図表 7)
、日本の景気は 12
年末から 14 年前半にかけては順調に回復し、14 年 4 月の消費税率引上げを契機として停滞局面入りし
ていることが見て取れる。その後 14 年半ばから 15 年初めにかけては一旦景気が回復しかかったように
も見えたが 15 年夏場以降は再び冴えない動きに転じている。景気動向指数は 15 年 12 月まで横ばい推
移となっており、16 年 1 月の鉱工業生産指数及び 2~3 月の製造工業予測指数を見る限り最近では小幅
な下落局面に転じているようにも見える。景気動向指数は文字通り日本の景気動向を包括的に示す指標
だが、その動きは概ね鉱工業生産指数の動きと連動している。その鉱工業生産が弱い動きとなっている
のは、消費税増税がネガティブに作用した 14 年度前半の動きを別にして、基本的には輸出の弱い動き
に起因すると考えられる(図表 8)
。賃金が伸び悩み消費活動も今後弱めに推移すると見込まれる中で、
日本経済が内需主導で自律的に反転回復していく展開は想定し難く、今後の景気浮揚の鍵を握るのは
“輸出”であり、その輸出の動向を左右するのは結局“グローバル経済”ということになる。
そこでグローバル経済についてはどうかということになるが、15 年8月の人民元の突然の切り下げを
契機として中国経済のハードランディング・リスクに対する警戒が世界的に高まり、その懸念は今も払
拭されたとは言い難い状況だ。中国に関しては、製造業の PMI の低下が続いており(図表 9)
、固定資
産投資や鉱工業生産といった重要指標に関しても恒常的に減速している。重化学工業(鉄鋼、非鉄、造
船、石炭、化学、自動車等)を中心とした製造業の構造的調整圧力が今もなお重石になり続けていると
考えられる。ただし各種指標を見る限り、ここに来て減速ペースが特別に早まっているようには見えな
い。製造業セクターでは減速が続いているが、PMI の動きを見ると非製造業セクターの景況感は比較的
良好に推移している。実際消費に関してはネット販売等を中心に底堅く推移しており、16 年の春節消費
も堅調に推移した模様である(中国銀聯の発表では 2 月 7 日から 13 日の消費総額は前期比 31%増で過
去最高)
。また中国政府は G20 や全人代を経て今後は財政政策を強化してくる可能性もあり、一部で懸
念されているようなハードランディングは「回避」する公算が高い。
米国経済に関しては 2 月までの雇用統計を見る限り労働市場は逼迫しており、所得環境の改善を背景
に個人消費は底堅い推移となっている。しかし 15 年 10-12 月期のGDP統計をみると設備投資、輸出、
在庫投資とそろって減少しており、ISM 製造業指数も節目となる 50 を割り込み続けている。12 月 16
日の FOMC では 9 年半ぶりに政策金利(FF レートの誘導目標)が引き上げられたが、その後のイエレ
ン議長やその他の FRB高官の発言を見る限り、更なる政策金利の引上げに関しては総じて慎重スタン
スが示されている。当初懸念されていた連続的な利上げは見送られる公算が高く、16 年中における政策
金利の引き上げは年 1 回程度の非常に緩やかなものに留まると予想される。
欧州経済に関してはこれまで既往のユーロ安の恩恵もあり、ドイツを中心として安定的な成長ペース
を維持してきたが、
1 月以降はドイツの Ifo 景況感指数や PMI が明確な形で下落に転じており
(図表 10)
、
グローバル景気の減速の影響が表れ始めている。
基本的にはどの国・地域をみても、3 ヵ月前に比べて鉱工業生産や設備投資等ハードデータが大幅に
悪化しているわけではないが、PMI や ISM 指数等のソフトデータ(景況感を示すアンケート調査)をみ
ると、これまで堅調であった欧州も含めて着実に悪化していることが見て取れる。これまでは堅調な米
欧景気の拡大がある程度新興国の景気を下支えしていくような展開を想定していたが、センチメントの
4/14
悪化がこれだけ長期化すると、逆に新興国の景気底割れ懸念が先進国における企業活動をも慎重化させ、
結果として従来想定していた以上にグローバル経済を萎縮させる展開になりやすいと思われる。16、17
年の世界経済全体の成長率(東海東京調査センターによる予想)は、各々前年比+3.0%、同+3.2%と、
IMF の 1 月の見通し(各々同+3.4%、同+3.6%)から大きく下振れると予想され、これを踏まえて日本
の 16~17 年度の輸出の予測に関してもそれぞれ前年比+2.2%、同+3.8%と昨年 12 月時点の予測(16
年度同+5.6%、17 年度同+5.0%)から下方修正している。
3.
消費税増税延期の可能性をどう考えるか
14 年 4 月以降の消費税増税の影響により日本の景気回復が一旦頓挫したような状況となった。14 年
4-6 月期の個人消費は前期比▲5.0%と大幅に減少したが、7-9 月期以降の消費の戻りも非常に鈍く、14
年度の消費は前年比▲2.9%と大幅なマイナスとなっている。これは消費税が 5%へと引き上げられた
97 年度(▲1.0%)やリーマン・ショックが発生した 08 年度(▲2.0%)を上回るマイナス幅だ。長き
に渡ってデフレ環境下におかれた日本の消費者にとって、「増税というかたちでの物価上昇」がかなり
の痛手となっているのかもしれない。17 年 4 月に予定されている 10%への消費税率の引き上げも、相
当程度のマイナスインパクトをもたらすことは避けられないと思われる。たとえば日銀は展望レポート
において、次回の消費税率引き上げにより 17 年度のGDP成長率が▲0.7%ポイント程度押し下げられ
るとの試算を示している(16 年度は逆に+0.3%ポイント程度押し上げられる)。
ところで 17 年 4 月に予定されている消費税増税については、15 年 10 月の増税を先送りにしたとき
のような「景気弾力条項」が付記されていない。安倍首相も「リーマン・ショックや大震災のような重
大事態」が発生しない限り確実に実施すると主張しており、前回と比べると先送りのハードルはある程
度高いものとなっている。しかし最近、首相の経済ブレーンである本田内閣官房参与は「消費増税は 2
年延期して 19 年にするべきだ」と述べ、自民党の稲田朋美政調会長も「日本の経済が壊れてまで増税
するということではない」と述べる等、政府サイドからは消費税増税の先送りを示唆するような発言が
出始めている。安倍首相自身も最近では消費税増税延期の条件を「世界経済の大幅な収縮が起きている
かどうか、専門的見地から分析し判断していかなければならない(1 月 19 日参院予算委員会)」と微妙
に修正(緩和)している。16 年 7 月の参院選と同時に衆議院の解散も取り沙汰されており、この機に
乗じて消費税増税の“公約”をリセットしてしまおうする誘引は働きやすいと思われる。メイン・シナ
リオとしては予定通りの消費税増税実施を予測の前提とするが、衆院解散と消費税増税延期がセットで
打ち出される展開も蓋然性の高い“リスク・シナリオ”として十分に想定されよう。そもそも軽減税率
導入のための財源も現段階では担保されていない状況であり、安倍政権自体がどこまで財政構造改革に
コミットしているかどうかも疑わしい。仮に今回増税を延期したとしてもそれは「既に十分に準備が整
ったものをひっくり返す」というよりも、「もともとやりたくないものをやらない」といった側面が大
きいため、この点からも先送りのインセンティブが働きやすくなっている。
現段階ではあくまでもリスク・シナリオだが、仮に消費税増税が再延期されるとすれば、そのタイミ
ングは早ければ 1-3 月期のGDP統計(1 次速報)が発表された後の 5 月中旬頃にやってくる。この場
合、5 月の伊勢志摩サミットにおいて国際的に増税先送りを表明するかたちとなろう。この場合、16 年
度の予想成長率は下方修正、17 年度は上方修正し、両年度とも+0.7%程度の成長率になると考えられる。
5/14
4.
物価安定目標は遠く、4 月には追加緩和が予想される
16 年 1 月のコア CPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)は前年比 0.0%となり、前月の同+0.1%から
低下した。これまでの消費者物価指数の伸び率の低下は専らエネルギー価格の低下で説明されることが
多かったが、このところの動きをみるとむしろそれ以外の基調としての物価上昇率が頭打ちになってき
ているように見える。例えば“コア・コア”と呼ばれる食料エネルギーを除く消費者物価は前年比+0.7%
と前月の同+0.8%から伸び率が縮小した(図表 11:伸び率の縮小は 2 ヵ月連続)
。
日銀が1月 29 日に公表した展望レポートには「物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を
高めていくと考えられる」と記述されているが、一方で日銀審議委員である木内氏は 2 月 25 日の講演
で、除く食料・エネルギーや除く生鮮食品・エネルギーの前年比をみるとやや頭打ち感が見られると指
摘している。つまり日銀内でも一部には基調としての物価が着実に上昇していくという見方について懐
疑的な見方がある。実際問題として、日銀自身が消費者物価の基調としての変動をとらえるために作成
している「食品エネルギーを除く CPI」
、
「刈込み平均 CPI(変動の大きい品目のうち一定割合を機械的
に除去して算出)
」
、
「上昇・下落品目比率」も 1 月はそれぞれ前年比+1.1%(12 月は同+1.3%)
、同+0.4%
(12 月は同+0.5%)
、39.3%(12 月は 43.1%)と何れも低下しており、もはや「着実に上昇している」
とは言えない状況となりつつある。東海東京調査センターではエネルギー価格のマイナス寄与が消滅す
るのが 17 年 4 月以降、コア CPI の見通しは 16 年度が前年比+0.3%、17 年度は同+1.2%程度とともに
1 月展望レポート時点の日銀見通し(16 年度同+0.8%、17 年度同+1.9%)から相当下振れると予測して
いる(図表 12)
。
日銀は 1 月 29 日の決定会合でマイナス金利の導入を決定したばかりであり、3 月 14~15 日の決定会
合において更なる追加緩和を打ち出してくるとはさすがに考えにくい。円高や株安が歯止めなく進む等、
金融市場の混乱が続いていれば連続的な緩和もありうるが、通常であれば 1 月に決定したマイナス金利
政策の効果を見極めるのにある程度の期間は必要と考えられる。中曽日銀副総裁は 3 月 3 日の会見で、
マイナス金利について「効果を見極めるうえでも、市場が消化する時間がもう少し必要だ」、
「今は政策
効果の浸透具合をしっかり見極めていく段階だ」と述べている。また黒田日銀総裁も 3 月 7 日に都内で
講演し、
「マイナス金利の効果浸透をしっかりと見極めたい」
「今すぐにさらに何かすることは考えてい
ない」等と発言している。しかしこのことは日銀が当面追加緩和を実施しないということを意味しない。
これまでの「量」
、
「質」に加えて今回の政策変更であらたに「金利」というツールを手にしたことによ
り、日銀はもはや従来の「戦力の逐次投入はしない」というレジームは事実上放棄していると考えられ
る。1 月 29 日の決定会合後の声明文(
「マイナス金利付き量的質的金融緩和」の導入)においても、
「今
後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、
『物価安定の目標』の実現のために必要な場合には、
「量」・
「質」
・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる」と記されており、参考資料(「本日
の決定のポイント」
)でも、
「今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる」と強調されている。
上述のとおりエネルギー価格のみならず、基調としての物価部分に関しても伸び率の鈍化が認められ
ることから、4 月の展望レポートにおいて日銀は再びコア CPI の見通しを下方修正してくると思われる。
ECB も 3 月の理事会では予告どおり追加緩和を実施すると見込まれるため、日銀も 4 月 27~28 日の金
融政策決定会合においてはマイナス金利幅の拡大を中心とした(場合によっては量の拡大も組み合わせ
て)
、追加緩和措置を講じてくる可能性が高いと思われる。
(以上)
6/14
(図表1)
被服及び履物、光熱水道に対する消費
(前期比 %)
10.0
被服及び履物
5.0
0.0
-5.0
-10.0
光熱・水道
いわゆる暖冬効果
-15.0
2
3
4
1
2
13
3
4
1
2
14
3
4
15
1
16
(注)季節調整済実質指数、16年1Qは1月の数字で代替
(出所)総務省「家計調査」より東海東京調査センター作成
(年・四半期)
(図表 2)
教養娯楽、教育に対する消費
(前期比 %)
15.0
教育
10.0
教養娯楽
5.0
0.0
-5.0
-10.0
-15.0
-20.0
2
3
13
4
1
2
3
4
14
1
2
3
15
(注)季節調整済実質指数、16年1Qは1月の数字で代替
(出所)総務省「家計調査」より東海東京調査センター作成
7/14
4
1
16
(年・四半期)
(図表 3)
名目賃金の推移
(前年比 %)
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
-2.5
-3.0
現金給与総額
所定内給与
1
3
5
7
12
9 11 1
3
5
7
9 11 1
13
3
5
7
9 11 1
14
(出所)厚生労働省「毎月勤労統計」より東海東京調査センター作成
3
5
7
9 11 1
15
16
(年・月)
(図表 4)
(前年比 %)
特別給与(賞与月の合計)の推移
10.0
5.0
0.0
-5.0
-10.0
-15.0
91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(注)6月、7月、12月の特別給与の合計
(年度)
(出所)厚生労働省「毎月勤労統計」より東海東京調査センター作成
8/14
(図表 5)
法人企業の経常利益と売上高の推移
13年1Q=100
13年1Q=100
107
145
140
106
売上高(右軸)
135
105
130
125
104
120
103
115
102
経常利益(左軸)
110
101
105
100
100
1
2
3
4
1
13
2
3
4
1
14
2
3
4
15
(注)ともに季節調整値
(出所)財務省「法人企業統計」より東海東京調査センター作成
(年・四半期)
(図表 6)
(%)
日経平均株価(前年比)と消費者態度指数
47
46
45
44
43
42
41
40
39
38
37
36
35
90.0
80.0
70.0
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
-10.0
-20.0
-30.0
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1
12
13
14
消費者態度指数(一般世帯、季節調整値、左軸)
日経平均株価 前年比(右軸)
(出所)内閣府、日経新聞社より東海東京調査センター作成
9/14
15
16
(年・月)
(図表 7)
景気動向指数(CI一致指数)と鉱工業生産指数
(2010年=100)
(2010年=100)
120
105.0
鉱工業生産指数(右軸)
景気動向指数(CI一致指数、左軸)
115
100.0
110
95.0
105
100
90.0
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3
12
13
14
15
16
(注)鉱工業生産指数の16年2月以降は製造工業生産予測指数の伸びで補完
(年・月)
(出所)内閣府、経済産業省より東海東京調査センター作成
(図表 8)
鉱工業生産と実質輸出の推移
(前期比 %)
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
-4.0
-5.0
実質輸出
鉱工業生産
1
2
3
12
4
1
2
3
4
1
13
2
3
14
4
1
2
3
15
4
1
16
(年・四半期)
(注)16年第1四半期の輸出は発表月の平均、鉱工業生産は予測指数より推計
(出所)経済産業省、日銀より東海東京調査センター作成
10/14
(図表 9)
中国製造業PMIの推移
52
51
50
49
48
政府発表
47
財新/MARKIT社
46
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2
14
15
16
(年・月)
(出所)データストリームより東海東海調査センター作成
(図表 10)
ユーロ圏のPMI、Ifo 企業景況感総合指数の推移
55
54
53
52
51
50
49
48
47
46
(2005年=100)
112.0
110.0
108.0
106.0
104.0
102.0
Ifo 企業景況感総合指数(右軸)
100.0
ユーロ圏PMI総合指数(左軸)
98.0
1
3
5
7
13
9
11
1
3
5
7
9
11
1
3
5
14
(出所)データストリーム、ブルムバーグより東海東京調査センター作成
11/14
7
9
11
15
1
16
(年・月)
(図表 11)
消費者物価指数の推移
(前年比 %)
2.0
生鮮食品・エネルギー除く(日銀版コアコア)
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
生鮮食品除く
(コアCPI)
食品・エネルギー除く(コアコアCPI)
-1.5
1
3
5
7
9
11
1
3
5
13
7
9
11
1
3
5
7
14
9
11
15
1
16
(年・月)
(注)消費税増税の影響を除く
(出所)総務省、日本銀行より東海東京調査センター作成
(図表 12)
コアCPIの予想と要因分解
(前年比 %)
1.5
17年度+1.2%
予測
1.0
0.5
0.0
16年度+0.3%
-0.5
-1.0
-1.5
1
3
5
7
9 11 1
15
コア・コア(食料・エネルギー除く)
3
5
7
9 11 1
16
食料
(出所)総務省より東海東京調査センター作成、予測
12/14
3
5
7
17
エネルギー
9 11 1
3
18
(年・月)
コアCPI
【 レーティングの定義 】
Outperform
今後 6 カ月間における投資成果が TOPIX に対して 15%以上上回るとアナリストが予想
Neutral
今後 6 カ月間における投資成果が TOPIX に対して±15%未満とアナリストが予想
Underperform
今後 6 カ月間における投資成果が TOPIX に対して 15%以上下回るとアナリストが予想
NR
レーティング、目標株価を付与せず
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レーティングの表記は、TOPIX に対して Outperform、Neutral、Underperform の 3 段階で区分表記しています。また、レーティ
ングが無い場合は、NR と表記しています。対象期間は、投資評価が付与された日を起点として、6 カ月程度を想定しております。
アナリストがレポートにおいて企業の目標株価に言及した場合、その目標株価はアナリストによる当該企業の業績予想に基づく
もので、期間は 6 カ月程度を想定しております。実際の株価は、当該企業の業績動向や、当該企業に関わる市場や経済環境な
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13/14
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外国株券等(外国の預託証券、投資信託等を含みます)の取引には、国内の取引所金融商品市場における外国株券等の売
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(1)外国金融商品市場等における委託取引
①国内取次ぎ手数料
国内取次ぎ手数料が約定代金に対して掛ります。
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当該諸費用は、その時々の市場状況、現地情勢等に応じて決定されますので、本書面上その金額等をあらかじめ記載するこ
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