酪農学園大学における犬の難治性角膜上皮びらんの治療成績

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演題番号:51
演 題 名:犬壊死性髄脳炎の脳脊髄液申抗GFAP自己抗体とMRl所見
発表者氏名:O中村晃三1〉山田恵里子2)山根由久2〉前谷茂樹i)井尻篤木王)宮庄拓3〉横田博3〉
中出哲也圃
発表者所属:1)酪農大伴侶動物医療 2)酪農大動物病院 3)酪農大獣医生化学
1目的1近隼、獣医療へのMR1の導入により様々な脳脊髄疾患が明らかになってきた。その中でも壊死性髄膜脳炎
(NME)は病鵬不明の難治性の脳炎で、脳脊髄液(CSF)中にグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)に対する自己抗
体が発見されていることから自己免疫疾患ではないかと考えられている。今圃MRI検査によりNMEを疑った症例の
CS罫中抗GFAP自己抗体をEHSAで測定し、MRI所見と比較してその相関性を検討した。
【材料と方法12005隼8月から2007年8月までに酪農学園大学附属家畜病院に来院し、MR王およびCSE検査からNME
を疑ったi4頭と健常ビーグル犬10頭から採取したCSFを検体として罵いた。ELISAでは牛GFAPを抗原として抗GFAP
自己抗体を検出し、その結果をもとにMR像と比較した。
1結果】ELISAでは症例犬と健常犬で霧意な差がみられた。ELISAの吸光度と簸RIでの炎症の程度・範囲を比較する
と、高い吸光度を示した2例はMRf上、広範囲に炎症が存在する傾向にあったが、限局性の病変の1例も高い吸光度を
示した。また、これら3例においてi例は炎症が主体の病変、1例は炎症と壊死が混在する病変、1例は壊死を主体とす
る病変であり、関連性は認められなかった。一方、低い吸光度を示した症例群ではCSF採取時に炎症性変化が主体で、
壊死性の変化が生じていない傾向にあった。しかし経時的にM斑検査、CSF採取を行い、MRI上、壌死性病変へ進行
した症例では、その吸光度に変化は認められなかった。
【考察1今回の検討ではELISAとMR1上の炎症の程度に相関性はなく、MRI上の病変の範囲とも相関性は認められな
かった。これは抗GFAP抗体がNMEの原因ではなく、一つの結果である可能性を示唆している。大胆な考察が許され
るなら、抗GFAP自己抗体は、なんらかの原因で星状膠細胞が破壊されてGFAPが漏鐵し、その結果抗体が産生された
と考えられる。しかしながら、これはあくまでも仮説であり今國の結果のみではこの仮説を決定づける結果は得られてい
ない。また、NMEが免疫抑制剤とステロイドで快方に向かうのも事実であり、自己免疫疾患である可能性は否定できな
いが、今後さらに症例の収集と分析を実施し、さらなる探求を行いたいと考える。
演題番号:52
演題名:酪農学園大学における犬の難治性角膜上皮びらんの治療成績
発表者氏名:O筈見友洋1)前原誠也1)田部芳樹2)都築圭子2)泉澤康晴b
発表者所属:1)酪農大伴侶動物医療 2)酪農大動物病院
1はじめに1難治性上皮びらんは、再発性上皮びらん、ボクサー潰瘍などとも呼ばれる表在性角膜潰瘍であり、角膜上皮
基底細胞または角膜実質浅層の異常が原因といわれている。本疾患の治療方法は、角膜表層の化学的焼灼、角膜表層切除、
フィブロネクチンの点眼、コラーゲンシールドなど様々な報告がある。今圃我々は、本学附属動物病院における難治性上
皮びらんの治療成績ついて報告する。
【対象と方法】本学阻属動物病院に来院し難治性上皮びらんと診断された犬15頭19眼を対象とした。調査項目は、犬種、
初診時年齢、性別、治療方法、治癒までの期問および上皮びらんの再発とした。難治性上皮びらんの治癒の時期は細隙灯
顕微鏡検査でフルオレセイン染色陰性となった時点とした。
【結果】対象15頭19眼の犬種による内訳は、柴犬6頭8眼、ゴールデンレトリーバー4頭5眼、ウエルシュコーギー3頭
4眼、他2犬種2頭2眼であった。初診時年齢は4∼15歳(平均8.6歳)、性別は雄10頭13眼、雌5頭6眼であった。治療
方法は、滅菌綿棒による接藩不良上皮のデブライドメントのみ行ったものが5頭6眼、これに加えて24∼27ゲージ注射針
による角膜格子状切開を行ったものが生2頭13眼であった。デブライトメントのみは全頭点眼麻酔下で行い、角膜格子状切
開は8頭9眼で全身麻酔下で行った。治癒までの期間は、デブライドメントを行ったものは7∼75日(平均36.3揖)、角
膜格子状切開を併せて行ったものは10∼70日(平均32.3日)であった。上皮びらんの再発は、デブライドメントのみを行
なったもので1回が2頭2眼、2回が1頭1眼であった。一方角膜格子状切開を点眼麻酔下で行った!頭1眼でi回再発
がみられた。
1考察1過去の報告では難治性上皮びらんの好発犬種として柴犬は見当たらないが、今圓の調査では柴犬が最も多かった。
角膜格子状切開を行なった時の治癒までの期問は鼠報とほぼ同様であった。角膜格子状切開の施術の有無で治癒までの期
問に大きな差はみられなかったが、角膜格子状切開を行わなかった方が再発が多い傾向があった。難治上皮びらんの治療
は、正常な実質に上皮を接藩させることが必要であり、デブライドメントのみ、または点眼麻酔のみでの角膜格子状切開
では、正常な角膜実質の露出が不完全であったため、再び上皮と実質の接着不良が生じたものと推察された。
北獣会誌52(2008)