口から食べるを支える! 認知症高齢者の 嚥下リハビリテーション;pdf

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1 べる力を引き出す
集
食
特
ことのは 代表
の食事ケア
認知症高齢者
言語聴覚士
橋本 愛
口から食べるを支える!
認知症高齢者の
嚥下リハビリテーション
近年,日本における介護・医療で「認
これらのような状況下にあっても必ず
知症ケア」に関する話題が取りざたされ
対応策はあります。摂食・嚥下機能のシ
ています。認知症のメカニズムが完全に
ステムを振り返りながら,その人に合っ
解明されていない中,ケアやリハビリ
た対応を検討していきましょう。
テーションは試行錯誤で行われ,効果が
あるものが選択され,実施されている現
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2003年国際医療福祉大学
保健学部言語聴覚障害学 科
卒 業 後,介 護 老人保 健 施 設,訪問を専門に行う
クリニック,訪問看護ステーション,国立国際医
療センターを経て,2008年に訪問リハビリテー
ションを行う「ことのは」を開設,利用者の症状・
レベルに応じた言語・嚥下リハビリテーションを
行っている。著書は『失語症訓練の考え方と実際
―新人STへのヒント―』
(共著,三輪書店)
。
摂食・嚥下機能の仕組み
状にあります。本稿では,
「摂食・嚥下
摂食・嚥下機能の仕組みは全部で5期
機能」に関して,これまで効果があった
に分けられます。これは,食物がどこに
アプローチや“こうであってほしい”サ
位置するかで分けられた分類方法です。
ポート方法について解説します。
①先行期(図1)
認知症は,一般に「アルツハイマー病」
何を,どのくらい,どのように食べる
「血管性認知症」「レビー小体型認知症」
かを判断する時期のことです。
「箸,ス
「前頭葉側頭葉変性症」の4つのタイプ
プーン,フォークの使い方が分からな
に分けられます。摂食・嚥下機能にもそ
い」
「口の中にたくさん食物が入ってい
のタイプによる個別の影響はあります
るのにもかかわらず,次から次へと口に
が,共通して言える症状として,「記憶
運んでしまう」という場面が見られる場
障害」と「注意障害」があります。
合は,この段階に問題が生じていること
「記憶障害」の症状が悪化した際は,
になります。
それが食べ物なのか・食べられない物な
②準備期(図2)
のかの区別が困難となり,食器の使い方
食物を前歯や口唇で口腔内に取り込ん
さえ分からなくなることがあります。
だ後,食物は舌により臼歯咬合面に運ば
また,「注意障害」の症状が進んでし
れ,咀嚼され食塊(咀嚼後唾液と混合さ
まうと,周囲の環境の変化に気を取ら
れた食物が一回で飲み込める状態となっ
れ,食事どころではなくなってしまい,
たもの)を作る時期です。無歯顎や咀嚼
食事に集中することができず「食べられ
力が低下している人,唾液量の減少して
ない」という状況が生じてしまいます。
いる人は食塊が作りにくい状況にあるた
臨床老年看護 vol.22 no.2
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