練習問題 13-1 情報工学科 篠埜 功 2015 年 7 月 13 日 練習問題 区間 [−π, π] における関数 f (x) = x のフーリエ級数は ∞ ∑ 2 − (−1)k sin kx k k=1 (1) である。これを複素指数関数 {eikx |k ∈ Z} の線形結合の形に変換せよ。 解答例 1 オイラーの公式 eiθ = cos θ + i sin θ (2) より、以下の等式が成り立つ。 e−iθ = ei(−θ) = cos(−θ) + i sin(−θ) = cos θ − i sin θ (3) 等式 (2) と (3) を加えると eiθ + e−iθ = 2 cos θ が得られる。等式 (2) から (3) を引くと eiθ − e−iθ = 2i sin θ が得られる。従って以下の 2 つの等式が成り立つ。 eiθ + e−iθ cos θ = 2 eiθ − e−iθ sin θ = 2i 等式 (4) において θ に kx を代入すると sin kx = eikx − e−ikx 2i 1 (4) が得られる。これを式 (1) に代入すると ∞ ∑ eikx − e−ikx 2 − (−1)k k 2i k=1 が得られる。この式を以下のように書き換えて整理する。 ∞ ∑ ∞ ikx ∑ − e−ikx eikx − e−ikx 2 1 ke = − (−1) − (−1)k k 2i k i k=1 k=1 ∞ ∑ 1 − (−1)k (−i)(eikx − e−ikx ) k k=1 = ∞ ∑ 1 (−1)k i(eikx − e−ikx ) k k=1 } ∞ { ∑ 1 1 k ikx k −ikx (−1) ie − (−1) ie k k k=1 } { ∞ ∑ 1 1 k ikx k i(−k)x (−1) ie − (−1) ie k k k=1 { } ∞ ∑ 1 1 k ikx k i(−k)x (−1) ie + (−1) ie k −k k=1 } ∞ { ∑ 1 1 k ikx −k i(−k)x (−1) ie + (−1) ie k −k k=1 = = = = = ∞ ∑ = ck eikx k=−∞ ここで ck は以下のように定義される。 1 k k (−1) i k > 0 ck = 0 k=0 1 (−1)k i k < 0 k 補足 ∞ ∑ ck eikx の表記は以下のように定義される。 k=−∞ ∞ ∑ k=−∞ ikx ck e = lim n→∞ 2 n ∑ k=−n ck eikx 解答例 2 複素指数関数による級数を直接得る解法を示す。仮に、 f (x) = n ∑ cl eilx l=−n とおく。(この等式を満たす c−n , . . ., c0 , . . ., cn は存在しないが、仮に上記の等式 が成り立つとする。)この等式の両辺に e−ikx をかけて区間 [−π, π] で積分する。 ∫ π −ikx f (x)e ∫ π dx = −π e−ikx −π ∫ n ∑ cl eilx dx l=−n n ∑ π = −π l=−n n π ∑ cl eilx e−ikx dx ∫ = −π l=−n n ∫ π ∑ = l=−n ∫ π = ∫−π π = −π −π cl ei(l−k)x dx cl ei(l−k)x dx ck e0 dx ck dx = 2πck 従って ck は以下のように得られる。 ∫ π 1 f (x)e−ikx dx ck = 2π −π 3 k 6= 0 のとき、ck は以下のように計算される。 ∫ π 1 ck = f (x)e−ikx dx 2π −π ∫ π 1 = xe−ikx dx 2π −π {[ −ikx ]π ∫ π −ikx } e 1 e x = − dx 2π −ik −π −π −ik = = = = = 1 πe−ikπ − (−π)eikπ · 2π −ik k 1 π(−1) + π(−1)k · 2π −ik 1 2π(−1)k · 2π −ik k (−1) −ik 1 (−1)k i k k = 0 のとき、c0 は以下のように計算される。 ∫ π 1 c0 = f (x)e0 dx 2π −π ∫ π 1 xdx = 2π −π = 0 従って関数 f (x) に最も近い線形結合は n ∑ ck eikx k=−n である。ここで ck は以下のように定義される。 1 (−1)k i k 6= 0 ck = k 0 k=0 関数 f (x) のフーリエ級数は上記で得られた線形結合において n を大きくしたと きの極限であり、 n ∞ ∑ ∑ ikx lim ck e = ck eikx n→∞ k=−n k=−∞ である。これは解答例 1 で得られた級数と同じである。 4 補足 以下で、得られた級数を元の級数 (1) に戻してみる。 ∞ ∑ ikx ck e = k=−∞ = = ∞ ∑ { k=1 ∞ { ∑ k=1 ∞ { ∑ k=1 = ck eikx + c−k ei(−k)x 1 1 (−1)k ieikx + (−1)−k iei(−k)x k −k } 1 (−1)k i(cos kx + i sin kx) k ∞ { ∑ 1 k=1 } } 1 k − (−1) i(cos kx − i sin kx) k 1 (−1)k i cos kx − (−1)k sin kx k k 1 1 − (−1)k i cos kx − (−1)k sin kx k k = ∞ ∑ 2 − (−1)k sin kx k k=1 これは級数 (1) である。 5 }
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