基礎数学 C レポート 11 解答例 (2015/07/16) 問題 11 (5 点+5 点) an を数列, k ∈ N とする. べき級数 の収束半径が一致することを次の 2 通りの方法で示せ. ∑∞ n=0 an+k xn と ∑∞ n=0 an xn (1) 定義通り行う方法 (Theorem5.3). (2) コーシー・アダマールの定理を使う方法 (Theorem5.6). ∑∞ ∑∞ 答え f1 (x) := n=0 an+k xn , f2 (x) := n=0 an xn の収束半径をそれぞれ ρ1 , ρ2 ≥ 0 とおく. (1) i). ρ2 > 0 のとき. に対して N ∑ f1 (0), f2 (0) の収束は明らか. 任意の x0 ∈ R\{0}, N ∈ N an+k xn0 = n=0 N +k N +k k−1 1 ∑ 1 ∑ 1 ∑ n n a x = a x − an xn0 n 0 n 0 xk0 n=k xk0 n=0 xk0 n=0 である. |x0 | < ρ2 のとき 収束半径の定義から f2 (x0 ) は収束するため ∑ ∑k−1 n k k n N → ∞ のとき N n=0 an+k x0 → (1/x0 )f2 (x0 ) − (1/x0 ) n=0 an x0 すなわ ち f1 (x0 ) は収束する. 従って ρ2 ≤ ρ1 . また |x | < ρ のとき f1 (x0 ) が収束するため同様にして N → ∞ のとき ∑N 0 n 1 k ∑k−1 n n=0 an x0 → x0 f1 (x0 ) + n=0 an x0 すなわち f2 (x0 ) は収束する. 従って ρ2 ≥ ρ1 . 以上から ρ2 > 0 のとき ρ1 = ρ2 である. ρ1 > 0 と仮定すると 0 < |x0 | < ρ1 をとることができ ii). ρ2 = 0 のとき. る. このとき f1 (x0 ) は収束するため同様にして f2 (x0 ) の収束が言えるが ρ2 = 0 に矛盾する. 従って ρ1 = 0 = ρ2 . いずれの場合も ρ1 = ρ2 , すなわち f1 , f2 の収束半径は一致する. (2) コーシー・アダマールの定理より lim sup |an+k |1/n = n→∞ 1 1 , lim sup |an |1/n = ρ1 n→∞ ρ2 ∞ を得る. bk,n := supi≥n |ai+k |1/i , bn := supi≥n |ai |1/i , k, n ∈ N とおくと {bk,n }∞ n=1 , {bn }n=1 は共に単調減少列であり, 上極限の定義から limn→∞ bk,n = 1/ρ1 , lim bn = 1/ρ2 n→∞ (a) が成り立つ. i). ρ1 = 0 ⇐⇒ ρ2 = 0 を示す. ρ2 = 0 のとき. (a) より bn = ∞ for all n ∈ N が成り立つ. bn の定め方 から各 n ∈ N に対してある自然数 in ≥ n が存在し, |ain |1/in ≥ n を満た す. 特に n > k において |ain |1/(in −k) ≥ nin /(in −k) ≥ n が成り立ち, 加えて bk,n の定め方から bk,n−k ≥ |ain |1/(in −k) ≥ n が成り立つ. これが各 n > k に対して成り立つことから limn→∞ bk,n = ∞ すなわち (a) から ρ1 = 0. 同様にして ρ1 = 0 =⇒ ρ2 = 0 を示せる. ii). ρ1 = ∞ ⇐⇒ ρ2 = ∞ を示す. ρ2 = ∞ のとき. limn→∞ bn = 0 よりある N ∈ N が存在し bn < 1, n ≥ N . 特に全ての i ≥ n に対し |ai |1/i < 1 が成り立つ. 辺々を i 乗して |ai | < 1 であるから 任意の n > N ′ := max{N, K} と全ての i ≥ n に対 して |ai |1/(i−k) < |ai |1/i . 従って右辺の上限をとり |ai |1/(i−k) < bn . 再び 左辺の上限をとり bk,n−k ≤ bn , n > N ′ . limn→∞ bn = 0 であったから, limn→∞ bk,n−k = 0, すなわち ρ1 = ∞ を得る. 同様にして ρ1 = ∞ =⇒ ρ2 = ∞ も示せる. iii). 0 < ρ1 , ρ2 < ∞ のとき. ρ1 < ρ2 と仮定する. 実数の連続性から, ρ1 < ρ < ρ2 なる実数 ρ を取れ る. 1/ρ < 1/ρ1 と (a) より各 n ∈ N に対し 1/ρ < |ain +k |1/in を満たす自 然数 in ≥ n が存在する. 従って (1/ρ)1−k/(in +k) < |ain +k |1/(in +k) ≤ bn+k . n → ∞ のとき in → ∞ より 1/ρ ≤ 1/ρ2 であるがこれは ρ の取り方に矛 盾する. 従って ρ1 ≥ ρ2 . ρ1 > ρ2 と仮定する. 実数の連続性から, ρ1 > ρ > ρ2 なる実数 ρ を取れ る. 1/ρ < 1/ρ2 と (a) より各 n ∈ N に対し 1/ρ < |ain |1/in を満たす自然数 in ≥ n が存在する. n > k に対し (1/ρ)1+k/(in −k) < |ain |1/(in −k) ≤ bk,n−k . n → ∞ のとき in → ∞ より 1/ρ ≤ 1/ρ1 であるがこれは ρ の取り方に矛 盾する. 従って ρ1 ≤ ρ2 . 以上からいずれの場合も ρ1 = ρ2 , すなわち f1 , f2 の収束半径は一致する. 講評 • 「収束」は極限操作をした際に用いる言葉です. 有限和にわざわざ「収束」と 言う必要はありません. • 極限操作を自由にやっている印象を受けました. 「何となく成り立ちそう」で 証明するのではなく, 既出の定理や命題またはそれらから証明できる事柄のみ 用いて証明しましょう. • n 乗根を忘れていたりコーシーアダマールの定理の極限の取り方を勘違いして いる人が多数います. f1 はあくまで n 番目の項の係数が an+k となっている だけです. • ∞ ∑ an は収束 =⇒ lim an = 0 ですが, 逆は成り立ちません. n=0 n→∞ • |an+k /an |1/n → 1 (n → ∞) は成り立ちません. 反例 an = en . ∑∞ ∑∞ • n=0 an = ±∞ ではありません. 振動する場合もありま n=0 an が発散 =⇒ n す. 例:an = (−1) . ( )1+k/n • |an+k |1/n = |an+k |1/(n+k) が成り立つからといって ( )1+k/n ( ) 1/n lim sup |an+k | = lim sup |an+k |1/(n+k) = lim sup |an+k |1/(n+k) 2 n→∞ n→∞ とするのは議論に飛躍があります. n→∞
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