「いま湯梨浜町が熱い」 ~東郷温泉の温泉熱利用

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〔鳥取県〕
「いま湯梨浜町が熱い」
~東郷温泉の温泉熱利用~
船田
義治(電力・ガス事業課 課長補佐)
[email protected]
TEL 082-224-5736
鳥取県中部、東郷湖の周囲に位置する羽合町・泊村・東郷町の3町村が平成16年10
月に合併し湯梨浜町は誕生しました。人口はおよそ1.7万人です。
湯梨浜という名前は、「東郷湖から湧き出る温泉、大地がはぐくむ二十世紀梨、そして
日本海に広がる白い砂浜」からイメージして名付けられました。
湯・梨・浜の中でも特に湯(温泉)は有名です。町内の東郷湖周辺には「東郷温泉」と
「はわい温泉」の2つの温泉街があります。湯梨浜町のHPによると、東郷湖に船を浮か
べて湖中からわき出る温泉を利用したという「はわい温泉」。泉質は含石膏弱食塩泉で、
リウマチ・皮膚病などに効能。湯量が豊富で良質な「東郷温泉」。どちらの温泉も源泉の
温度は高いことで知られています。
湯梨浜町は東郷温泉の源泉温度が高く湯量が豊富で地熱発電に向いていることに着目、
今年1月に東郷温泉管理組合所有の源泉を活用して温泉熱発電を開始する事業者を公募
しました。その結果、協和地建コンサルタント(株)(松江市)を採択事業者に決定、同社
は10月から中四国地域では初めて温泉熱を利用した地熱発電を開始する予定です。
この地熱発電では、温泉熱を用いて発電するバイナリー発電装置(IHI 製)を設置し、
平均出力10kW超で発電、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を用いて売電事業を
実施します。
「バイナリー発電」とは耳慣れない言葉ではないでしょうか。
バイナリー発電とは、熱源から水より沸点の低い液体を加熱・蒸発させて蒸気を作り、
旬レポ中国地域 2015 年 10 月号
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その蒸気でタービンを回す発電システムです。使用する液体は比較的低い温度で蒸発する
ので、通常の蒸気タービンでは利用できない100℃程度の熱源でも発電ができるのです。
また、温泉熱発電が行われた後の熱水の2次利用も計画されています。
(参考)IHIのHPより
湯梨浜町は、発電後の熱水を、湯梨浜町内の公共施設に配湯している東郷温泉管理組合
の温泉源の1つとして副次的に活用することを提案、経済産業省の平成27年度地熱開発
理解促進関連事業に応募し採択されました。
これまで東郷温泉では、89℃の源泉をいったん東郷温泉組合の集湯タンクに入れ温泉
の温度を55℃に調整した後に旅館や民宿に配湯していました。55℃では冬季の露天風
呂に利用できないのでその対策が求められていました。
今後発電後の熱水は、町営2施設の「国民宿舎水明荘」と「多目的温泉保養施設 ゆア
シス東郷龍鳳閣」に配管を敷設し配湯されます。熱水の温度は約74℃と高いため、冬季
の露天風呂の利用が可能となります。また、配管を延長したことにより、付近に足湯等の
設置や、温泉を活用した農産物の特産品化、観光農園の設置に向けた取り組みも検討され
ています。
<国民宿舎水明荘>
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<ゆアシス東郷龍鳳閣>
(配管敷設図)
2号源泉
4号源泉
①水明荘
発電機・集湯タンク
松崎駅
②龍鳳閣
農地
この事業は、熱源をバイナリー発電に利用した後、温泉水を配湯に2次利用することで
余すことなく活用するとともに、燃料費などの大幅な経費削減も可能となります。また、
露天風呂が通年で利用できるので観光面でも大きなプラス効果が期待されます。中国地域
では地熱利用の事例が少ないことから、モデルケースになるのではないでしょうか。
二十世紀梨は鳥取県を代表する特産品。とりわけ湯梨浜町はおいしい梨が収穫されるこ
とで有名です。また、東郷湖は日本海に通じる汽水湖。シジミ、ワカサギ、シラウオ、コ
イ、フナ、ウナギ等が豊富で、以前は網の四隅に竹を張る四ツ手網漁が行われていました。
この秋に湯梨浜町を訪ねてみてはいかがでしょうか。
<湯梨浜町HPより>
http://www.yurihama.jp/top.cgi
経済産業省 中国経済産業局 広報誌
旬レポ中国地域 2015 年 10 月号
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