「オワハラ」と言われないために

11月号
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最近気になる労務問題
「オワハラ」
と言われないために
当社では、就職内定を出した学生に対し、当社に確実に入社し、今後他社への就職活動をしないよ
うに求めたいのですが、最近
「オワハラ」という言葉をよく見かけます。
「オワハラ」と言われないた
めに、
どういう点に配慮すべきでしょうか。
1.「オワハラ」
とは
最近、各種メディアなどでよく耳にする「オワハラ」とは、
「就活終われハラスメント」の略で、就職活動
中の学生に内定を出した企業が、他企業への内定辞退を迫る、
内定辞退しようとした人に嫌がらせを行う
などして、内定者を囲い込もうとする行為を指すと言われています。
リクルートワークス研究所の調査によると、来春2016年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒
求人倍率は1.73倍という売り手市場であり、多くの企業に人手不足感があります。また今年は採用選考
開始が昨年までの4月1日から8月1日に繰り下げられ、大手企業の内定が例年よりも遅く出されるこ
とが多くなりました。このようなことから、内定者を確保したいという動機は例年よりも一層強く、それ
だけに「オワハラ」的な囲い込みの動きも強いように思われます。
2. 内定者を確保しようと働きかけること自体は違法といえない
「オワハラ」という言葉は、
「セクハラ」
「パワハラ」
「マタハラ」
などと語感が近いこともあって、
いかにも
違法なことのように思われがちです。
しかし、内定後の研修などによる学生の囲い込みは昔から行われてきましたし、
そもそも内定者に対し
て、自分の会社に入社して他の会社への就職活動を行わないように求めることは、
企業としてむしろ当然
の行為です。
ですから、内定者を確保しようと働きかけること自体は、
基本的に違法ではありません。
3. オワハラが違法になる場合
ただし、就職活動中の学生が内定を辞退することは基本的に自由ですので、
内定辞退の自由を奪うほど
強い働きかけをした場合や、嫌がらせといえるような働きかけをした場合は、違法性が生じ、不法行為に
基づく損害賠償が問題になることがあります。
また、
内定者の人格権を傷つけるような言動をしてはならないのは当然です。
さらに、内定期間中において研究活動を妨害するような研修を設定してはならず、
入社前研修はあくま
で任意の同意に基づいて行われるべきとする裁判例(宣伝会議事件 東京地判平17・1・28労判890号5
頁)があります。実務的には、内定期間中の研修や懇親会への参加を強制すると違法性が生じる場合があ
ると考えるべきです。
4. 具体例
それでは「オワハラ」が問題となりそうな具体例をQ&A方式で見ていきましょう。
5. まとめ
企業としては、
オワハラを恐れる必要はありません。
しかし、
やりすぎは禁物と心得るべきでしょう。
(大山圭介法律事務所 弁護士 大山圭介)