内視鏡型センシングと 気付きアルゴリズムによる 自動車部品検査方式 小田原賞 受賞 長嶋千恵*1/青木公也*2/塚田敏彦*1/三和田靖彦*3/輿水大和*2 豊田中央研究所*1/中京大学*2/トヨタ自動車*3 自動車用の金属円筒状部品内壁面の傷を際立たせて撮像するための光学系を開発し、撮像し た画像に人の周辺視と固視微動に着目した『傷の気付きアルゴリズム』を適用した。 本稿では、検査光学系の設計方法と、撮像された画像に対する前処理、および傷の気付きアル ゴリズムを用いた検査方法について説明を行い、評価実験の結果を示して考案した検査方式の 有効性について報告する。 1 検等は実施されているが、たとえば、撮像系にお はじめに けるレンズの汚れや傷などを製品の欠陥として認 識することがないようにする工夫も重要である。 自動車は 2〜3 万点の部品から構成されており、 筆者らは、これまでに金属平板の傷を際立たせ 安全性・品質を保証するために生産工程では厳し て撮像するための落射照明光学系 2)の開発を行い、 い検査が行われている。自動車部品は生産工程の シミュレーションと実験によりその有効性を検証 プレス、溶接、組み立て、検査を経て出荷される。 した。今回、この光学系を円筒形部品の内壁面観 部品の多くは金属製で、その表面の傷は見栄えだ 察用に改良し、内壁面の全周を撮像可能な光学系 けでなく、機能・性能に大きな影響を与える場合 を開発した。この撮像系をシリンダ方向へ掃引し があり見逃すことが許されない欠陥である。これ て撮像を行うことで、深さ方向を含めたシリンダ らの検査は目視により行われる場合もあるが、高 内壁全面の画像を撮像でき、内壁面の傷とレンズ いレベルでの集中力の持続が必要とされる重労働 の汚れとの区別も可能になる。さらに、撮像され であることや、検査結果の定量化のために、自動 た画像から安定に傷部分を抽出するために気付き 検査の実現が望まれている。特にエンジンシリン アルゴリズム 3 、4)を組み合わせた検査方法を開発 ダや油圧シリンダなど円筒形部品内壁面の傷検査 した。開発した検査方法を評価するために、既知 の自動化の要望が多い。 のサイズの傷を施したサンプルによる検出性能の これまでに、シリンダ内へ平面鏡を挿入して検査 評価実験を行った。 面に垂直な照明を行い金属面の傷を検査する装置 本稿では、傷を際立たせて撮像するための検査 1) が開発されているが、検査面に垂直に照明を行う 光学系の設計方法と、撮像された画像に対する前 ための位置決めに非常に高い精度が求められ全数 処理、および、傷の気付きアルゴリズムを用いた 検査への適用は難しい。一方、生産現場での計測・ 検査方法について説明を行い、評価実験の結果を 検査では、計測機器の汚れや破損による影響への 示して考案した検査方式の有効性について報告す 対応も重要な項目となる。定期的な計測機器の点 る。 64 ︱March 2015 eizojoho industrial
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