平成26年度 校内研究の概要

平成26年度 校内研究の概要
1.研究主題
確かな学力の育成を目指して
~ 地域を生かした教育課程の編成と
「習得」と「活用」を意識した教育実践~
2.主題設定の理由
(1)本校の校内研究について
本校では新教育課程の実施に伴い,「習得と活用」を意識した授業実践を通して「確か
な学力」を育むことができるよう,教科の指導の工夫に重点をおいて研究を進めてきた。
これまでの研究で授業実践も積み重ねられてきたが,各教科への広がりという側面におい
ては課題が残っていた。また,西浜中の生徒の学力をいかにして高めるかは依然として大
きな課題であり,教師の本分として毎日の授業実践はもちろんであるが,「授業」そのも
のや「授業の最終到達点(目指すべき地点)」を深く考え,授業の手法や在り方を考察し
ていくことが必要だと考えた。
また,昨年度の富士山の世界遺産登録をきっかけとして”富士山学習”を富士河口湖町
においても行うようになってきた。本来この”富士山学習”は西浜中学校が置かれている
郷土の伝統や文化の一部だと考えることができる。西浜中学校の周辺の学校においても社
会科や理科の郷土学習として扱われてきたが,教育課程に明確に位置づけられ,系統的に
研究を進められてこなかった。そこで本校の特性を生かし,学力についての課題を克服し
つつ,西浜中学校が置かれた郷土の特色を位置づけた教育課程の研究を進めていきたい。
(2)「確かな学力」と「伝統や文化の学習の充実」
①「確かな学力」について
学校現場では毎日授業が行われ,その都度評価がなされている。その評価の結果を受け,
現場ではその都度,様々な研究が行われてきた。「新しい学力観」という言葉で表現をさ
れた時期もあった。新教育課程では「確かな学力」という言葉で表現している。この「確
かな学力」を育むために「習得」と「活用」を意識した授業についての研究を進めてきた。
ここで「確かな学力」についてもう一度考察してみたい。文科省では次のように考えてい
る。
「確かな学力」
知識や技能はもちろんのこと,これに加えて学ぶ意欲や自分で課題を見付け,自ら学び,
主体的に判断し,行動し,よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたもの具体的はど
のような”力”や”技能”が求められているかというと以下の三点と考えることができる。
○基礎的・基本的な知識及び技能
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○知識・技能を活用し,課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力
○主体的に学習に取り組むための学習態度・学習意欲
これらの三点をバランスよく育んでいくことが「確かな学力」を培っていくことにつな
がる。
「活用型」の授業を展開していくためにどのように考えて研究を進め,授業を創造して
いくのかを考えてみたい。「活用」とは「学んだことを十分に発揮できるように使い,実
際に役立てる」という意味で捉えることができる。「学んだことを発揮」することや「役
立てる」ためには「何のために」という”目的”が必要となる。つまり,問題解決学習や
自己表現学習(自己選択・自己決定の場面がある活動を含んだ学習)を実践していくこと
が望ましいと考える。こうした学習を行うことでこれまでのような外発的動機付けの学習
から,「習得」や「活用」の過程で得られる”達成感”や問題解決学習においての学びへ
の”主体的な欲求”から「主体的に学習に取り組むための態度や意欲」も向上すると考え
られる。そこで各教科において「習得」と「活用」を意識した問題解決型学習に取り組む
ことで本校の授業を改善していくと共に本校の生徒に「確かな学力」を保証していくこと
ができるように今年度の研究を進めていきたい。
②「伝統や文化の学習の充実」について
本校は富士五湖の河口湖と西湖の中間に位置する。また,長浜,西湖,根場の三つの地
域から生徒が通っている。これらの三つの地区はそれぞれ特有の文化が発達し,そのほか
の地域とのつながりにおいても特色が見られる。市町村統合や他の地域とのつながりが広
域化してきたこともあり,この地域の特有の文化が失われつつある。その一方で昨年,世
界文化遺産に富士山とその周辺が登録されたことにより,地域の文化や自然の価値が問わ
れ,学校現場においては”富士山教育”と呼ばれるようになってきている。しかし,富士
山はこの地域の大切な財産であるが,富士山の自然やその周辺に発達した文化や産業を含
めると”文化や伝統”として大変価値のあるものである。これらの自然や文化財を西浜中
学校の教育課程に組み込むことで本校独自の教育課程を編成し,地域に根ざした生徒の育
成をしていきたい。また,将来的には地域の方々の協力していただくことができる教育課
程とし,地域に根ざした本校独自の教育活動を展開していくことができればと考えている。
また,活用型授業の展開や問題解決型の学習を展開しようとするとする視点から考える
と地域学習には「なぜ」や「どうして」という展開を考えやすい。また,各教科で習得し
た知識や技能が実際の社会においてどのように生かされているのかをより深く理解した
り,問題を解決した結果を表現したりしやすい。
「地域素材」を取り入れることによって
①地域素材を取り入れ,「地域で学ぶ」ことにより,学習の目的に迫った教材となり,「習
得」した知識や技能を生かし,より深い思考力や判断力と豊かな表現を期待することがで
きる授業を開発することができる。
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②地域素材を発掘し,教材化をはかることで豊かな授業の実践の可能性が広がると共に地
域の伝統や文化を基にした西浜中学校独自の教育課程を編成することができる。
と言える。従って,生徒の学びを豊かなものとし,地域の良さを再認識させる意味におい
ても地域素材を扱い,西浜中学校の教育活動の充実させるためには有効であると考える。
少人数のメリットと地域素材の教材化を通して学習効果を上げることを目的に,今年度
の研究を進めたい。
3.研究仮説
「習得」と「活用」を意識した授業を行うことでより質の高い授業を仕組み,さらに地
域教材を効果的に教育課程に組み込むことによってより,生徒の学びの質が高まり,結果
として生徒の「確かな学力」を育むことができるだろう。
4.研究の目標
(1)「習得」と「活用」を意識した授業を実践し,教師自身の「授業力」を育む。
(2)地域素材を有効に生かした,教材化とそれを生かした西浜中独自の教育課程の創造。
(3)生徒のより良い「学び」を保障していくために生徒の生活基盤作りとその改善のた
めの研究(QUを実施し,生活状況の検証と改善を施す・学級経営について)。
5.研究の内容
(1)授業作り(各教科の特性を生かしながら)
○「習得」と「活用」を意識した授業についての学習会
○「習得」と「活用」を意識した授業の研究と実践(研究授業を各教科で実施)
○「地域素材」の教材化と「地域素材」を生かした教育課程の編成
○お互いの授業を見合う(一人一実践,他校の研究会への出席)
(2)集団作りについて
○学級経営案についての検討
○学級開き等の学級においての実践発表
○学級内の生徒人間関係の分析とその対策についての研究(QUの実施・分析・対策)
6.研究方法
※職員全体で研究を行うため,研究推進委員会を置くが研究組織は設けない。
※研究推進委員は校長・教頭・教務主任・学年主任で構成する。
(1)各教科で地域素材の生かした教育課程を編成する。新たに編成した教育課程をもと
に授業案を作成し,研究授業を行う。
(2)学級集団作りについては全体で研究を深め,お互いに学び合っていくことができる
機会としていきたい。
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7.研究過程
月
4月
具 体 的 な 研 究 内 容
第1回校内研究会
・平成26年度校内研究についての検討(研究主題・仮説・研究内容など)
・社会科授業案の検討
5月
社会科授業研…反省会は主任会で行う
第2回校内研究会
・社会科授業のまとめについて
・「習得」と「活用」を意識した授業について…校長先生
※QUの実施
6月
第3回校内研究会
・理科,英語授業案の検討
・指導計画の提案(各教科)
8月
第4回校内研究会
・QUのまとめ(現状認識,今後の取り組み)
・学級経営について・西浜中学校の学区についての学習会(臨地研)
9月
・理科,英語研究授業
10 月
第5回校内研究会
・数学,国語,竹中先生の授業案の検討
・第二回QUの実施
11 月
第6回校内研究
・数学,国語研究竹中先生の授業の実施
・指導計画の再提案(実践後・実践した授業案を添えて)
12 月
・研究の反省とまとめ
・第二回QUから,今後の取り組みについて
1月
・保健体育科,数学科研究授業
2月
第7回校内研究
・本年度校内研究のまとめ
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8.研究のまとめ(アンケートをもとに)
(1)研究主題について
① 学校教育目標との関連はどうであったか。
“学力の向上”に努めていくことは学校教育目標を達成する上で欠かせないものであり,研究主
題としては適切であった。
② 生徒の実態との関連はどうであったか。
生徒の実態に即して,各教科で考え実践した。また,生徒の実態に即した授業のあり方を考える
きっかけとなった。その一方で基本的な学習習慣や基礎学力の定着の方が優先すべき課題である
という指摘もあり,このあたりは研究テーマの「習得と活用を意識した」を理解しておく必要が
あると感じた。
③ 授業改善のきっかけとなったか。
習得と活用を意識した授業を実践することや一人一実践とすることで授業について考えるきっ
かけとなった。また,活用を意識することで授業のスタイルを考えるきっかけとなった。
④ 地域教材を扱うことについてはどうであったか。
地域教材を取り上げることの重要性についての認識は一致している。地域教材を扱うことで生徒
がイメージしやすく,興味関心を持たせるために有効であるという意見が多かった。その一方で
教科によって扱いの難しさを感じる場面もあった。
(2)研究内容について…各教科での授業実践についてはどうであったか。
一人一実践に取り組んだことはとても有意義であった。特に授業規律の確保や言語力の育成,学
び合いの大切さ等については,教科を越えてその大切さを認識することができた。その一方で教
科としての専門性を高めるための話し合いに踏み込むことに限界があったという課題も浮き彫
りになった。
(3)道徳の授業についてはどうであったか。
全校道徳は道徳の授業を考えるきっかけとなった。これを機会に実践を重ねていく必要がある。
(4)QUの活用に関わる研究について
①研究を行ったことはどうであったか。
一人ひとりの生徒理解を深め,生徒への指導や学級経営を行う上で大変有意義な研究であった。
講師の先生の持つ分析力を一人ひとりの教師が身につけていくことが重要であるということが
確認できた。
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②学級経営などの実践に生かすことができたか。
学んだ成果を学級経営や個人への指導で生かすことができた。QUを実施し,その分析結果を生
かすことができるスキルを身につけることは教師としての力量を高めるため,必要であることを
再認識することができた。
(5)来年度の校内研究で要望がありましたら,記入して下さい。
今年度は習得と活用を意識した実践的な研究を行ったが,今後もアクティブラーニングなどの
指導法等について組織的な研鑽を積み,確かな学力の育成に努めたい。
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