週次レポート 平成 27年 1月 5日 円相場はドル高とユーロ安の綱引き ギリシャ不安、米株動向、米雇用統計などが焦点 今週の為替相場は、ドル/円での根強いドル高見通しの一方、ユーロ/ 円を始めとしたクロス円主導の円高 圧力との綱引きが想定されよう。週間予想はドル/円が 117.80-121.70円、ユーロ/円が 141 .50-1 45.80円。 市場テーマがユーロ安となる中で、ギリシャの政治懸念や欧州中銀(ECB )による量的緩和強化の思惑がユー ロの重石となりやすい。12日から決算発表が本格化する米国株の動向や、原油安の行方にも神経質となりそ うだ。一方で 9日の米雇用統計には改善期待があり、ドルの下支え要因となる。 ギリシャ 10年債金利、12年以降の抵抗線を上抜け 年末年始以降は、ギリシャでの大統領選出失敗を受けたギリシャ議会選への突入(1月 2 5日投票)、ドイ ツによるギリシャのユーロ圏離脱「容認」姿勢、1月 2 2日の ECB理事会に向けた量的緩和強化の観測などか ら、ユーロ安に拍車が掛かっている。さらに年明けからは中国、英国、ユーロ圏などで 12月の製造業 PMIが 低迷し、ポンド安やユーロ安、リスク回避の円全面高を支援。同時に米ウォールストリート・ジャーナル紙 が「サウジアラビアは 1バレル= 6 0ドルで原油価格が安定するとみている」と報じたことなどから原油先 物が続落し、豪ドルや NZドル、カナダ・ドル、南アフリカ・ランドといった資源国通貨が圧迫されている。 今週は欧州通貨安と資源国通貨安から派生するクロス円主導での円高圧力に対し、根強いドル全面高を受 けたドル/円でのドルの底堅さが、どこまで調整円高の期間・値幅を抑制できるかを見極める展開となりそう だ。昨秋のような日米株高の「リスク選好相場」であれば、ユーロ安・ドル高でも対ユーロでのドル高が素 直にドル/円でのドル高・円安へと波及しやすい。しかし、現在はギリシャ懸念や原油安が「リスク回避相場」 を後押しさせている。ユーロ安・ドル高がユーロ/円でのユーロ安・円高圧力を強め、リスク回避の円高とあ いまって、ドル/円でもドル安・円高を促す短期波乱余地が残されている。 一つの鍵を握るのが米国株の動向だ。米国では 12日から決算発表が本格化するが、昨年は年明け直後から 「決算発表見合いでの割高さ」が未然警戒される形で、決算発表というイベントを前にして株安が加速され た。昨年のドル/ 円は 1月 2日の 1 05.46円前後をドル高値として、2月 4日の 10 0.76円前後まで約 1カ月間、 -4.7円前後のドル安・円高が進行した実績を有している。今年は資源安や米 F RBによる利上げ観測、ドル 高といった個別決算での悪材料もあり、昨年に続いて「年明け調整株安とリスク回避の円高」が深化する可 能性は軽視できない。 もっとも昨年の場合、記録的な寒波が米国株の調整下落を深押しさせた。今年は 9日の米雇用統計などで 米国経済の回復が再確認される可能性がある。しかも ECBによる量的緩和強化の観測自体は、米国株を始め とした世界株の下支え要因となるものだ。中国株は年明け以降も景気刺激策や規制改革への期待感などから 堅調さを維持しており、昨年 1月ほどの日米株安と円高には至らない余地が残されている。 ただし今年の場合、ギリシャ政治混乱を契機として、欧州債務金融危機の再燃が警戒され始めた。ギリシ ャの 10年物国債金利は 20 12年 6月の 30%を直近最高として低下傾向(債券価格は上昇)にあったが、昨年 9月の 5.5%をボトムに反転上昇。年明け 2日には 9 .6 8%に上昇する場面があるなど、2013年 9月以来の高 水準に切り上がってきた(債券価格は下落) 。週足テクニカルの一目均衡表では、重要な抵抗ラインである雲 の上限を上抜け突破している。実に 2 012年 6月以来の「雲の上抜け」となっており、先行き一段の金利上昇 とギリシャ発の欧州債務金融不安、ユーロ安・円高の主導によるリスク回避の円全面高には常に注意を要す る。その他の注目ポイントは以下の通り。 <雇用統計などの米国指標> 米国の経済指標は強弱混在ながら、6日の I SM非製造業景況指数や 7日の ADP雇用統計などは、資源下落 を受けた底堅さが注目される。注目は 9日の 12月雇用統計だが、同じ 12月分の ISM製造業景況指数では「雇 用」が 56.8となり、前月の 54.9から改善した。また、製造業の雇用に先行する建設支出の民間・製造業部 門は 1 1月に 2009年 6月以来の高水準を回復しており、工場などの新規建設を受けた雇用の増加が注目され そうだ。 ただし、11月の米建設支出・製造業は前月比ベースで+0.41%となり、8月の+4.78 %や 9月の+3 .32% から伸び率が鈍化してきた。そのため 12月の雇用統計では、失業率こそ改善の低下トレンドを維持させるも のの、雇用者数の前月比増減は伸び悩むリスクが残されている。 <FOMC議事録> 米国市場では 7日、12月 16-17日に開催された FO MC議事録が公表される。声明文での「相当な期間」低 金利を維持させるという文言の修正論議を含めて、改めて 2015年の年央以降の利上げ地ならしが見られると ドル全面高の流れをサポートしやすい。一方で警戒ほどタカ派(利上げ支持) スタンスでなかったり、原油安・ ドル高に伴うデフレへの懸念が散見されるとドルが下落。その場合、米国株はサポートされることで、クロ ス円主導で円安に振れる余地も完全には排除できない。 <欧州の経済指標> ユーロは先安見通しがくすぶっているが、今週の欧州経済指標は下げ止まりが注視されやすい。7日のド イツやユーロ圏の失業率、8日のドイツ製造業受注、9日のドイツ鉱工業生産などでは、ユーロ安効果や資源 下落を受けた減速一服が焦点となる。もっとも消費者物価指数(CPI )については、5日のドイツ、7日のユ ーロ圏ともに原油安など受けた根深い物価低迷とデフレ圧力が警戒されやすい。 <原油安の動向> 原油相場は年明け以降も下落の圧力が続いている。米国株市場では資源エネルギー株に打撃となっている ほか、ロシアなどの産油国の通貨経済不安が、引き続き資源国通貨安やリスク回避による円高の材料として 警戒されよう。一方で原油安に苦しむ産油国・ベネズエラでは、大統領が 1月 4日から中国と O PEC (石油輸 出国機構)諸国を訪問している。原油安への対応も協議する予定で、原油価格の歯止め策が浮上してくると、 単発的な資源国通貨高やリスク選好の円安を促す余地をはらむ。 <週足テクニカル> 円相場の週足テクニカルでは、先行して調整の外貨安(円高)が進んできた豪ドル/ 円で、基準線 9 7.30円 前後(5日東京市場時点、以下同)、40週移動平均線 9 6.50円、5 2週線 9 5.50円などでの下げ止まり攻防に 直面してきた。上下動を経ながらも、こうした節目ラインで下げ止まるか、あるいは下抜けていくかが、そ の他のクロス円やドル/円での円高・外貨安の行方を左右していく。 ユーロ/円も週足では、基準線 14 1.97円、26週線 1 4 0.77円を巡る攻防に移行している。ドル/ 円は「日柄 調整」によるレンジ横這い化となっているが、いずれ週足の転換線 117 .85円や 13週線 116. 53円、基準線 111.47円(いずれも先行き切り上がりの余地)などからの上方乖離を修正する調整ドル安の潜在余地が残さ れている。 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの情報によ って生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの内容は、 投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最 終判断はお客様ご自身でお願いします。 ---------------------------------Japan Economic Pulse Co.,Ltd. ----------------------------------
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