41 大磯丘陵・高麗山の森

千葉県森林インストラクター会
㊶ 大磯丘陵・高麗山の森
関東では珍しい臨海性常緑広葉樹林が残る自然林、歴史の町大磯
【概要】
JR 東海道線から見えるこんもりとした丘陵は、以前はマツ林だったが、自然の遷移で常緑樹の森
となった。モクレイシ、シマテンナンショウなどが分布し興味深い。湘南平からは相模湾、丹沢、
富士山と 360 度の大展望が広がる。大磯での史跡探訪と合わせて一日楽しめる場所である。
【森林の特徴と見所・歴史文化】
大磯丘陵は東海道線からもよく見える森で、関
東地方では珍しい臨海性の常緑広葉樹林が残る自
然林である。この森は江戸時代まではアカマツ、
クロマツの景勝地であったといい、明治以降も枯
れ木や落ち葉の採取が続いたためマツなどの陽樹
が維持され、タブノキやスダジイへの遷移は人為
的に停止されてきた。常緑広葉樹への遷移は昭和
30 年代以降森林の利用が少なくなってからで、現
在のような常緑広葉樹林になったのは比較的最近
のことだという。
ここではモクレイシが見られるが、この木は神
奈川県と伊豆、南九州などに飛び地的に分布する
謎めいた木である。カゴノキの大木も見逃せない。
草本ではヤブランの群落やシマテンナンショウが
注目される。
1300 年前、新羅に敗れた高句麗の王族若光は大
磯に上陸し高麗山山麓に住み、付近を開拓すると
ともに製鉄や機織りの技術を伝え、産業の発展に
大きく貢献した。高麗山頂の高麗寺は若光を祀っ
た寺であったが明治期の廃仏毀釈で破壊され、麓
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の高来神社だけが残った。
大磯宿は品川から 8 番目の宿場町、史跡「化粧
(けわい)坂の一里塚」には大きなエノキがある。
大磯町には明治時代照ケ先海岸に日本最初の海水
浴場が開設され、また多くの文人墨客・政財界人
の邸宅が立ち並びその数は 150 戸にも及んだ。島
崎藤村が最後の 2 年間を過ごした旧藤村宅があり、
公開されている。
鴫立庵は落柿舎(京都・嵯峨野)
、無明庵(滋賀・
膳所)とともに日本三大俳諧道場。西行法師の歌
「こころなき身にもあわれは知られけり鴫立沢の
秋の夕暮」で有名な鴫立沢に江戸時代に小田原の
祟雪が草庵を結んだのが始まり。
【コース紹介】
湘南平①は千畳敷とも呼ばれる平坦地で、展望
台からの眺めは素晴らしい。南に相模湾が開け三
浦半島、伊豆大島、房総半島まで遠望できる。眼下
には大磯・平塚の街並みが広がり、花水川、相模川
が相模湾に注いでいる。北方には丹沢の山々が連
なり、西方には富士山が間近に見える。十分楽し
みたいところだ。
ここから東へと延びる尾根伝いに
約 1.2Km、浅間山②、八俵山③と緩
やかな起伏を超えて高麗山④へ至
る。この尾根は南面北面ともかなり
急斜面であるが、南面はうっそうと
した常緑広葉樹林となっており、急
斜面に強いアラカシやスダジイが
多い。北面は落葉広葉樹が多い。高
麗山からは下りはやや急なところ
もあるがゆっくり歩けば危なくは
ない。途中で高来神社⑤への道を右
に分けて、直進すると大磯町生涯学
習館の駐車場⑥に出る。
千葉県森林インストラクター会
湘南平から富士山
シマテンナンショウ
コースで見られる主な植物等
【木本類】
タブノキ、スダジイ、ウラジロガシ、アラカシ、モ
クレイシ、ムクノキ、カゴノキ、イヌシデ、コナ
ラ、クヌギ、ミズキ、ツルマサキ、ケヤキ、ヤブツ
バキほか
湘南平から相模湾
【草本類】
シマテンナンショウ、ニリンソウ、ヤブラン、ユリワ
サビ、シラヤマギク、シロヨメナ、トリカブトほか
【一言メモ】
大磯丘陵は丹沢山と同時期の 1500 万年前の地殻で、
はるか南の海で出来た堆積物がプレートに乗って北
上し本州に付加したもの。丘陵の南側、北側は断層に
なっており断層に挟まれた地塊が隆起してできた「地
塁山地」が浅間山から高麗山へ続く尾根である。断層
モクレイシ
地形であるため南北とも急斜面になっている。高麗山
は過去 13 万年間で 120m(一年間に約 1mm)隆起し
たことがわかっており、これは日本でも有数な速さの
隆起だという。相模湾の海底はプレート境界となって
おり、フィリピン海プレートが本州の乗っている北米
プレートの下に沈み込んでおり、この力が大磯丘陵を
隆起させている。
野外講座企画のための情報
FS 指数:1A 水平距離:1.9km
登高 92m
トイレ:湘南平、生涯学習館駐車場、高来神社
昼食場所候補:湘南平、高麗山
高来神社から入り、高麗山、浅間山を経て大磯へ下
カゴノキ
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り、大磯の史跡を見学すると一日コースになる。