毎木調査結果の活用法

森の診断(毎木調査)を森づくりに活かす
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平成24年度里山ボランティア育成講座資料
編修:清田陽助
1 調査結果の整理
① 樹木の種類
・計測を行った樹種のうち落葉広葉樹はサクラ
サクラs.p
アラカシ、シラカシ、
サクラs.p.
s.p.、アキニレの2種類、常緑広葉樹は、アラカシ、シラカシ、
アキニレ
スダジイ、タブノキ、モチノキ、ヤマモモ、ユズリハの7種類が確認された。
スダジイ、タブノキ、モチノキ、ヤマモモ、ユズリハ
・個体数は、落葉広葉樹が10
10個体
70個体
10個体だったのに対し、常緑広葉樹が70
個体
70個体となった。
個体
常緑広葉樹が主体の樹林であるが、一部に落葉広葉樹も混在している。
② 樹木の位置(
樹木の位置(分布)
分布)
・全エリア(280㎡)に樹高2m未満の樹木は589
589本
120本
589本、樹高2m以上の樹木は120
120本生育が確認された。
・1㎡あたり、樹高2m未満の樹木は約
約2.1本/㎡
約0.4本/㎡
2.1本/㎡、樹高2m以上の樹木は約
本/㎡
0.4本/㎡生育している。
本/㎡
高木の植栽間隔は3
高木の植栽間隔は3~6mあけて植栽すべきであるとされている(川崎市
緑化指針)ことから、現在の調査地は、密植状態にあると言える。
・樹高2m以上の樹木数(589本)と、樹高2m未満の樹木数(120本)を比
較すると、2m以上の樹木が、2m未満の樹木の約4.9倍生育している。
森の階層構造が十分に発達していない。
後継樹の生育があまり確認できない。
図 森の階層構造
③ 樹木の寸法
・計測した樹木について、樹高は4~10mで平均
平均6.6
平均6.6m
6.6m、幹周は7~55㎝
で平均
平均27.9
平均2.1
平均27.9㎝
27.9㎝、葉張は0.8~5.5mで平均
平均2.1m
2.1mとなった。
・樹高6mに達しているアラカシや、スダジイにおいて、幹周7~9㎝程度
しか生長していない個体が確認された。
上に伸びる生長(伸長成長)は行われるが、幹周や葉張りといった横への
生長(肥大生長)が十分に行われていない。
図 樹木の寸法基準
・樹種別の比較すると、樹高の最小はモチノキの6.0m、最大はスダジイの7.2mとなり、約
約1.2倍
1.2倍の差と
なった。幹周の最小はモチノキの12㎝、最大はアキニレの41㎝となり約
約3.4倍
3.4倍、葉張りの最小はモチノキの
0.8m、最大はアラカシの3.6mとなり約
約4.5倍
4.5倍と樹高に比べて大きな差が生じた。
樹種によって生長速度(量)に違いがある可能性がある。
※目通り周の大きい樹種のみを残した場合、樹種に偏りが生じる可能性もある。
目標とする樹林(目標植生)の決定、樹林の管理計画へ応用する。
森の診断(毎木調査)を森づくりに活かす
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平成24年度里山ボランティア育成講座資料
編修:清田陽助
樹林の構造、樹木の特徴が明らかになった。
常緑広葉樹が主体の樹林であるが、一部に落葉広葉樹も混在している。
高木の植栽間隔は3~6mあけて植栽すべきであるとされている(川崎市緑化指針)ことから、現在の
調査地は、密植状態にあると言える。
森の階層構造が十分に発達していない。
後継樹の生育があまり確認できない。
上に伸びる生長(伸長成長)は行われるが、幹周や葉張りといった横への生長(肥大生長)が十分に行
われていない。
樹種によって生長速度(量)に違いがある可能性がある。
※目通り周の大きい樹種のみを残した場合、樹種に偏りが生じる可能性もある。
①目標とする樹林(目標植生)の決定、②樹林の管理計画へ応用する。
2 目標とする樹林(目標植生)の決定
(1)目標とする樹林のタイプ
常緑広葉樹林(密生林)
常緑広葉樹林(間伐林)
常緑と落葉の混交林
落葉広葉樹林
(2)樹林に求める機能
樹林タイプ
常緑広葉樹林
(密生林)
常緑広葉樹林
(間伐林)
常緑と落葉の
混交林
落葉広葉樹林
防風、防潮効果
◎
○
○
○
遮へい(目隠し)効果
○
△
△
△
樹林内の見通しの確保
×
○
○
○
樹林内のレクリエーション利用
×
○
○
○
省管理(間伐、下草刈り等)
◎
△
×
×
林床植物の生育
×
△
○
○
階層構造の成立
×
○
○
○
生物多様性の保全
×
△
○
○
樹林の機能例
森の診断(毎木調査)を森づくりに活かす
(3)目標植生&コンセプトのつくり方
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平成24年度里山ボランティア育成講座資料
編修:清田陽助
・・・森(植生)と○○
○○との関係を考える
○○
例)公園、事業所、住宅地に隣接
周辺環境
例)樹林地、農地・水辺地、社寺仏閣に隣接
例)地形(谷戸、尾根)、土壌環境、光環境
自然環境
例)希少植物の保全、樹林の健全性
森(植生)
例)レクリエーション、散策
利用方法
例)目隠し、防風・防潮、耐火
例)希少動物(タヌキ、キツネ、オオタカ)
動 物
例)毛虫(チャドクガ、アメリカシロヒトリ)
例)季節感(花見、新芽、紅葉、落葉)
景 観
例)近景、遠景(緑の軸線)、眺望
例)農業の伝承、里山管理の伝承
文 化
例)講習の場(里山ボランティア育成講座)
目標植生と森づくりのコンセプト
3 樹林の管理計画を立てる
(1)森の調査と樹林管理
上の管理
=密度(高木)管理
・間伐、枝打ち、補植、移植、萌芽更新など
⇒ 毎木調査 (+植生調査 +花暦調査)
下の管理
=林床(草本~中木)の管理
・下草刈り、落葉掃き、保護、育成、播種など
⇒ 植生調査 (+毎木調査
毎木調査 +花暦調査)
(2)樹林管理計画の3段階
1年後
5~10年後
50~100年後
??
森の診断
(森を診る)
年間管理スケジュール
の作成
目標植生の作成
目標植生
森づくりのコンセプト
の作成
定期的にモニタリング調査
定期的にモニタリング調査を行うことで、目標植生やコンセプトの
モニタリング調査を行うことで、目標植生やコンセプトの達成度
を行うことで、目標植生やコンセプトの達成度が分かる
達成度が分かる